第26話
思えばこのときすでにたかが外れてしまったが故に。
私は理性という知性を少しずつ失っていったんだろう……。
夏休みに入ると、必然的に学校へ足を運ぶ必要はなくなる。
部活動や課題、またはそこを集合場所にしない限り、学校に役目は何一つない。
それは私にとっては好都合ではある。別に好んで学校へ毎日来ているわけでもないのだから……。
ただ、今年の今この瞬間に私の中に残るこの虚しさは。
「複雑なものね……」
いつもの昼休み。いつもの屋上前で私はこの心境に思わずひとりごとを口にする。
「ん? なにが複雑なの?」
「!?」
しかしそれは即座にふたりごとに変わり……。
私は驚きを貼り付けた目で声の方角へ目を向ける。
「お嬢、もしかして嫌なことでもあった……?」
私が最もよく知るその声の持ち主は、次第にその目の色に憂いを帯びていく。
「あ、いえ……特に大したことでもないわ」
「本当に? 本当になにも隠してない……?」
なにかにとても敏感になっている彼女は、ぐいっと距離を詰めて私の顔を覗き込んでくる。
私が今一番苦手な距離感で、一番効果的な声色で、一番してほしくない表情で彼女が攻めてくる。
「ほ、本当になんでもないわ……」
実際、彼女の懸念は完全に杞憂に終わるものだとして。
私はつい顔を逸らしながらも、きっぱりと否定する。ただ、その行動は仇となってしまうことに瞬時に気付き、視線だけをちらりと彼女に向ける。
…………今にも泣きそうになっていた。
「あ、ちょっと笑美。そんな顔しないで……。本当になにもないの。本当にないのよ……。ちゃんと説明するから、少しだけ離れてもらえるかしら」
彼女がここまで過敏になるのも僅かばかりだけれど理解はできる。だって最近でこそ私たちの距離はさらに縮まり、それが周知される範囲であることは明白なのだから。
それに伴いお互いに背負うリスクも同じになっていく。今現在被害を受けている彼女にとって、同様のそれが私に降りかかることはなによりも最悪の展開だということ。
だからこの現状は分かる。私なりに、彼女のそのやさしさを真っ新なぬくもりとして至福の贈り物をいただいている。
ただ、私が引き剥がそうと右手でその肩を少し押し返すと、離れるものの、次にはその手の袖をきゅっと摘んでくることで妥協を表してくるのは……。
この子、実はすごく甘えたがりだったりするのかしら。
「じゃ、話して」
彼女は俯きながら、まだ話を聞くまでは心配しているからと手は決して力を緩めてはくれなかった。
「分かったわ。笑美」
それから私は口を開いて、話を続けた。
これは私を含め、周りからすれば本当想像以上に小さな悩みを……。
「明日の終業式が終わると夏休みが始まるじゃない」
「うん」
「学校に来なくていいというのは正直嬉しいと思うし、去年までならそれだけだったのだけれど」
「うん……うん」
「ただ、今年はその……会えなくなってしまうのが……」
「誰と?」
「え、笑美と……」
「寂しんだ?」
「そこまで言わせないで頂戴……」
ここまで話すと、ようやく笑美は袖から手を離し。
今度は袖から生えてある私の手を指を絡めて握ってくる。
そして顔を上げて私と目を合わせる。なんとも表情がころころと変わる忙しい子なこと……。
「お嬢、私も寂しい! だからいっぱい会いたい! たくさん思い出作りたい!」
笑美は体を乗り出し、私に顔を近づける。
とても無邪気で無鉄砲で、最高にかわいい顔で。
「ねぇ、涙お嬢!!」
「なに?」
「私、今度はお泊まりしたい!」
その提案は、私にそもそも拒否権はなく。
あらかじめ用意された決定事項ですらあった。
どうもおはようございます雨水雄です。
まだまだ寒い日続きますね……勘弁してほしいでっせ本当。雨水はこの頃に生まれたまぁ冬生まれと云われる人類の一人ですが、寒さにはめっぽう弱いので、生まれた時の環境による耐性や特性、そういった補正は嘘なんだなとつくづく思います。というか雨水はもっと体脂肪増やせって話なんですけどね……。
あ、そういえばなんですが。YouTube始めましたと言って一つだけ動画上げましたけどあのあとからどうしようどうしようと嘆いています……とほほ。実は周りの方の協力もあってイラストなどを描いてもらってるんですが、まだ揃ってなかったりして素材が足りねーって感じなんですよね。それなら動画投稿遅らせてゆっくり始めていけばいいか……とも考えたんですが!やっぱ誕生日にやっておきたいじゃん!が率先してあの日に決行しちゃったって感じです。あとそんなことここで言うなって感じですよね、すみません……。
とまぁ、そんなこんなもありますが、またこれからも雨水の新しい一面を表せる舞台も増やせるかなとも思いますのでもしよろしければご愛顧下さいませ。
さて、今週もここまで読んで下さりありがとうございます。
では来週もよければここで。




