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曇天の下の極彩色  作者: 雨水雄
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第18話

この装いは、ただ見てくれをよくしたいわけじゃない。

ただ、可愛くなりたいわけじゃない。

ただ、美しくなりたいわけでもない。

ただ、あなたに見つけてほしいきっかけの一つあってほしいだけ。

玄関の真ん中で立ち止まる。

扉の内側で荒い呼吸を抑えきれずにいた。

このまま鍵を開けてしまえば、外には彼女が待っているのは明白。

私と彼女を隔てるのは、いかにも簡単に開いてしまうごく普通の一枚の扉。

なんの躊躇もなく開けてしまえばいい。家の扉なんてそんな大義名分を背負っているわけでもない。

「…………幻滅されないかしら」

少しだけ暖かくなってきた外でこうして今も待たされてる彼女はどんな格好で、どんな表情で、どれだけの心拍数でそこにいるのだろうか。

少なくとも、こんなにも惨めで、非常識で、無愛想な私とは真逆なのでしょう……。

それがたまらなく申し訳なくて、ふしだらで不真面目なことしか伝わらないことが悔しくて……。

本当は嬉しい気持ちでいっぱいなことが伝わらないことが私の足を止めていた。

しかし、彼女はそれを知らない。だからもう一度呼び鈴が家の中に響く。

この、私だけが切羽詰まっている身勝手な状況を無駄に長続きさせるわけにもいかない……。

「……………」

カラカラに乾いた口で唾を呑み飲もうとする。当然、そんなことで溜飲が下がるわけもない。

それにこれ以上待たせることのほうが、今のこの姿を見られるよりも嫌われる原因につながるかもしれない。

「はぁ……もう、仕方ないわね」

私は遂に決心して、その隔絶を断ち切る。

足を一本踏み込むたびに、扉は抗うことなく彼女に近付いていく。

もうすぐそこに彼女がいる……ぺたぺたとなにかのリズムを刻むように足踏みしている音が鼓膜から緊張を与える。

「…………あ、えっ……と……」

外気と共に彼女の匂いが漂う。いつもと違う、なにか上品さと清廉さと……贅沢感が鼻腔をくすぐる。

私の声にならないなにか奇妙な呼びかけに、ようやく彼女も顔を上げる。

笑美えみと目が合う…………数瞬。

「やっほるいちゃん! 来たよ」

この瞬間までの私の憂いは杞憂に変わり、代わりに彼女の姿との雲泥の差に、情けなさと寂しさと、虚しさを覚えた。


そこからは、私の張り詰めた糸をゆっくりほぐすように、スムーズに時と動きは流れた。

私が一歩ずつ下がる度に、笑美えみは空いたスペースを埋めるように近寄ってくる。

家の玄関に体が収まると「お邪魔します」と丁寧に頭を下げる笑美えみは、私の緊迫感をさらに穏やかにしてくれた。

そういった当たり前の礼儀、それを付け焼き刃と感じさせない身に染み込んだ礼節。それらが私の知っている笑美えみそのもので、危惧も危機も危険も感じさせない物腰の柔らかさが一緒にいて間違いじゃないと教えてくれているみたいで……。

私はそのまま躊躇わずに自室へ案内していた。

「ここが私の部屋なのだけれど……」

私は扉を開けて、先に笑美えみを招き入れる。

「うんうん」

笑美えみは視線を彷徨かせてきょろきょろとしている。

そんな笑美えみの後ろ姿を見ていると、ますます自分の醜態が不憫に思えてくる……。

「あの……えっと、その私今日はちょっといつもと違うと言うか……」

「え、うん……」

「なんて言えば分からないのだけれど……その、今のこの姿を見られているのも恥ずかしいのよ」

そこで改めて笑美えみが私を見てくる。凝視してくる。

視点がぴくともせず、私から焦点が一切離れない……。

あの、ついさっき恥ずかしいと言ったばかりなのだけれど……私はつい視線を下げて視界がフローリングを這いつくばる。

「…………るいちゃんってさ」

笑美えみの目元も眼力も相変わらず私に固定されている。

「普段は軽いメイクしかしてないじゃん?」

「っ!……え、ええ……そうね」

本来ならば、校則ではそれすら許された行為ではないのでしょう……。私自身、もし直接指導を受けたなら、そのときは素直にそれを誤ちと認め善処に努めるつもり。

でも、それまでは……少しでも彼女のそばにいられるように。

彼女みたいに、ほんの気持ち程度でも見てくれをよくしていたいと思ってしまうの。

化粧自体は、ほんの前から母から少しずつ教わっていたというのもあって、知識はあった。

だから、私にとって自分自身を変えられる手段としてまず手に取りやすかったのがこれだった。

それが今、彼女の口から言及されたことが、私は内心すごく嬉しかったりした。

その分、現在の私がそのマスクを被っていないことがなによりも恥辱だった。

「だったら私にとってはすごく都合がいいんだけど……一ついい?」

「ええ、私でよければだけれど……」

「あのね、私にるいちゃんの顔をメイクさせてくれない?」

「ええ…………え?」

どうもおはようございます雨水雄です。

W杯……めちゃめちゃ面白いですよね!

あの白熱した試合を何度観ても飽きることはないです。

ただ、時間が厳しいかな……睡眠時間やばいかな……とか不安要素も兼ね備えてるのが今回のW杯でしたが、いざ試合が始まってしまえば見入ってしまう雨水です。そして試合後の興奮状態が続いたまま翌日? 当日を迎えるのでなんとかその日を乗り切ってしまう雨水です。

そして明日? いや今日ですかね……そのW杯もいよいよ最終戦になりますので、これが終われば雨水はたぶんしばらく目を覚まさないかもしれません……。

今年の終わりを告げる鐘も、もうすぐそこです。

みなさん、最近寒くなってきましたので、体調だけは気を付けて、万全の状態で新年を迎えられることを願っております。

あと、雨水と同志の方は、今日が終わったらちゃんと寝ような!

さて今週もここまで読んでくださりありがとうございます。

では来週もよければここで。

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