第15話
この期に及んで優劣を線引きを画する方法がさ。
相手を蹴落とすことなんてさ……。
その足はずっとその場で止まったままで、その手はなにも動かないままで。
どうやってなにを誰か示すつもりなんだろうか。
いじめというのは、どこからやってきて、なにが由来で、どうしてここまで広がったのか。
どうして同じ人であることを忘れることができるのか。
私には到底理解ができないのよ……。
もちろん、話さない人はいる。話したくない人だっている。
それは、性格の問題であったり環境の問題、単なるに苦手意識による勝手な逃避でもあったりする。
でも、攻撃的な思考や、一方通行な殺意が湧いたりなんてそんな傍若無人に成り下がる気も一切起きない。
だから、なぜなのかいつも不思議に思う。
こんなにも人があふれている世界で、せっかく閉じ込められた教室の中。
私たちはその中ですら人を選別して関係を築く中で。
敵対心のあるものには傷をつけるということを。
もし、それがあなたの幸せだというのなら…………。
あなたは人になることを向いてないのよ、と言いたい。
私がその部屋の前で聞いたのは、雑音よりも荊棘な言葉たちと、そのせいで騒音よりも大きな哀哭がどこかで鳴っているようなそんな目も伏せたくなる異口同音だった。
それぞれが、それぞれの言葉で、同一人物を罵って、蔑んで、嘲笑って、それを愉悦に感じている。
まるで、私と生きている世界が違う、そんな境界線を強く意識した。
…………私はなにか違和感があってその教室の前でもう少しだけ耳を澄ませた。
「だから、明日から宇野山を消すってことで」
「でも、どうやって先生にバレずにやるの?」
「いや、先生もグルにしちゃえばいいじゃん」
「……え、誰がやるの?」
「別に私でもいいよ? まだあいつ若そうだしハズレではないっしょ」
「まぁ、確かに……めっちゃいやってことはないかな」
「ほんと、担任が若い男ってのはチョロいか」
「じゃ、そゆことで!」
彼女たちの穢れた会話がそこで途切れた。同時に足音が揃って私の方は向かって来ていたことに。
私は気付くのが遅かった……。
ガラララ……と錆びついた重い扉が乱雑に開かれる。
「…………あ? 誰?」
「あっ…………」
対象の人物と目を合わせるには、私の首の角度は少し辛い。
そのせいもあって、余計に威厳と威圧が私の喉を締め付ける。声が出ない……。
おそらく、これが恐怖だったんでしょう……。
「ねぇ、あんたさ、今の私たちの会話聞いてた?」
「…………いえ」
聞いたと言えばなにをされるか分からない。
いや分かっている。私だっていじめの標的にされる。でもその中身が分からなく、私はたまらず目を逸らした。
「今の間はなに? 聞いてたってことでいい?」
「もうこれは確信じゃない?」
私が変に返事を焦らしたのが仇になった。
「い、いや! 私は……私は知らないわ……」
本当なら知りたくもなかった。こんなこと……。
でも、知ってしまったから。どうにかしなければとなにかと立ち向かう別の私もどこにいた。
…………本当なら、こんなこととは一切の時間も共有なんてしたくなかった。触れたくもないし、関わりたくもない。
ずっと目を逸らして、ないもの扱いして、私は私の大切なものだけのために生きていたかった。
…………でも、なぜ私の大切なものがこうして無慈悲にも奪われようとしているのか。
私が信じた彼女はなにもこんな下劣な輩にいじめられることなんてしてないし、私のそばでころころと笑っていてくれた。
でも、 …………だからなのね。
あのひどく歪んでいて、明らかに芽を生やしていた違和感の正体は……これなのね。
強がりも、諦めも、惰性も、見栄も、全部が全部ごちゃ混ぜになって出来上がった、彼女なりの精一杯の笑みがあれだったのね。
だったら、境界線が拭えるはずもないわ……。
私はもう一度、目の前の敵に目を向ける。畏怖は払拭できるはずもなく、視線だけが彼女たちを捉える。
本当はずっと無視していたい。
本当はなにもなかったかのように見過ごしたい。
でも、私は立ち向かわなければ、生きている意味がない。
生きていて、幸せに報われない。
そのせいで恐怖を覚えているのよ。
どうもおはようございます雨水雄です。
今日もこの時間はすっかり暗い景色の中みたいで……。
どうも体感がまだ微睡みの中だと錯覚してるのかと思いきや、外に出てみるとそのくせめちゃめちゃ寒いとか……この時期の朝は未だに過激で刺激的で慣れないというか嫌というか苦手というか……。
やっぱり冬は夕暮れが好きな雨水ですが。
それでも静かさの中に少しだけ生活音が流れるこの時間が気に入っているので、とりあえずこのリズムは当分続けていくと思います。いずれは夏だけ朝活して冬は夜行性とかになるのかなぁ……そんな器用になれるのかなぁ……。
今年ももうすぐ終わると思いますが、みんなでラストスパート気を抜かずこつこつやっていきましょうね!
さて今週もここまで読んでくださりありがとうございます。
では来週もよければここで。




