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曇天の下の極彩色  作者: 雨水雄
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第11話

どうしても……。

大事にしたいと思うほど見放されるのが怖くて。

だからいつもあなたの指向を待ってしまう。

この、知っていたいよりも知りたいと思う気持ちを、なによりも知ってほしくて。

彼女のその笑みを見たとき。

まるで私たちの間に境界線があるような歪な別世界を感じた。

どう見ても笑っているその顔は、本当に私を見ているのかも分からないほど澄んでいた。

諦観や達観しているほど大人びて見えるようで、もはやなにもかもを投げ出したような無力感さえ見えるような気がした。

どちらにせよ、彼女はどこか自分を投げ捨てては俯瞰した景色を傍観しているようで、私はなんだかほっと安堵を覚えた。

彼女の口から告げられた共犯と言う単語一つが、あぁ確かに……と境界線を薄めていく。

私と彼女は違う世界を生きてきた。それぞれが辟易と怠惰と慧眼を繰り返し、結局こんな風に世の中の隅っこで必然とも言える偶然のタイミングで巡り合う。

だから、 私とあなたの苦しみや辛さは違うけれど、その憎悪も憤怒も失望は分かるわ、と……。

ただ、その共有点を見出したところで私と彼女の境界線が完全に消えることはなぜが難しいような悪寒もあった……。




「私、宇野山笑美うのやまえみ。あなたは?」

「…………佐奈川涙さながわるいよ」

「へぇ、るいちゃんって言うんだ! 漢字は? やっぱ瑠璃色の瑠に衣とか?」

「違うわ。涙と書いてるいよ」

「え、そうなんだ!? なんかそういう人初めてかも!」

「確かに同じ名前でもあまり見ないのかもしれないわね。あなたは恵むに美しいとか絵に美しいとかなのかしら?」

「いんや違うよ? 私は笑うに美しいだよ」

「笑う…………」

「そうなの! だから私は笑ってあなたは涙! なんだか運命感じない!? 感じるよね! いやぁ、なんか私嬉しいなぁ……!」

「なによそれ……」

屋上に一番近い階段の上で私たちは並んで体育座りをしている。

そこで初めて交わす言葉の数々はどれも新鮮で斬新で、私にとってはとても心が弾むような時間だった。

彼女が紡ぐ言葉は私にとってはくだらないことばっかだったし、それを理解するのも億劫になるほどだったけれど、それでもその満面の笑みを見ていると、もうなにもかもどうでもよくなった。

私と過ごす時間を楽しんでくれている実感が、なによりも私の内側を温めてくれた。

うるさいようでささやかな美声。それでいて時折隠し切れていないあの潜んだ寂声。

溶け合うような境界線も、どこかは堅固に動きはしない感触があった。だから次第にこの境界線もだんだんぐにゃぐにゃと形を歪めていくような……。

そんな煮え切らない感触があった。

そして、いくつかの他愛ない会話を繰り返したのた、彼女は本題に入ったかのような、芯のある声色を吹かせてきた。

「ねぇ、るいちゃんはさ……なんでここにきたの?」

「そうね。なんだかもう……あの教室に私の居場所なんてない気がしたかしらね」

「んじゃ私と一緒だ」

「あなたもそうなの?」

彼女のような陽気で明るい女の子なんてすぐにクラスに馴染めるでしょうに……。

特別苦手な授業でもあるのかしら……私は勝手な想像をする。

「あ、その顔は信じてないでしょ」

図星をつかれて少し肩が跳ねる。どうやら私の表情は分かりやすかったみたい……。

「だって、あなたみたいな子は一人ぼっちになりそうもないから……なにか嫌いな授業でもあるの?」

「いんや? そういうのじゃないよ……ただ、るいちゃんは勘違いをしているだけ」

「勘違い……?」

彼女は苦笑いを浮かべる。

ひどくぎこちない笑み。さきほどまでとは打って変わって今まで笑うことを忘れていたかのような硬くて苦しい微笑みだった。

「だって私、一人ぼっちだからさ」

「…………そ、そう」

「うん、だから私はここがお気に入りなの」

「なら、私と一緒ね」

「ははは…………一緒、だね……一緒か」

彼女は私にぎりぎり聞こえるくらい弱くて砕けてしまいそうなカラカラな声をだす。

しばらく黙って……いやそれは刹那だったかもしれない。

彼女は、独り言のようになにか歌っていた。


「 この大空に翼を広げ……飛んで、行きたいよう…………」


リズムもメロディーもまるで噛み合っていない、ただの願望かもしれない。

でも彼女は、空の見えない天井を仰ぎながら、それを口にした。

私はただ、それを黙って聞いていただけだった。

「……よし、じゃあ私行かなきゃ」

「行くって、どこに……?」

「もう休み時間だからさ、そろそろ戻ろうかなって」

「あ、そ……そうね」

いっそのこと、このまま最後までここで過ごしていたいと思ってしまっていた私がいた。

この名残惜しさが、二人だけの時間の価値を物語っていて、私にとって教室に戻るかどうかを比べるなんて、する必要もないほどだった。

それでも、彼女は止まらない。立ち上がって、私に背を向ける。

彼女の背中を初めて見た私は。


彼女の髪が誰とも違う色彩をしていることにようやく気付いた。

今の今までなにを見ていたのか、今では不思議に思うほど目を奪われる髪色だった。

漆黒の中に灰色が散らばり、混在する束が揺れる。

彼女が振り返った証拠だった。


るいちゃん、今日、このときに会えてよかった」


彼女はありがとうと笑ってその場を後にした。

そのときの笑顔は、なにか怯えているようで。

彼女の戻る先にはなにが待っているの……?

どうもおはようございます雨水雄です。

…………秋はどこに行ったんでしょうか? 失踪ですか?え?しばらく帰ってこない?それ去年も聞いたような気がするですが……。

と少し文句を言いたいくらい本当に寒いです。まじでいきなり不意を突かれると寿命縮むんで勘弁してほしいですね。来年はちゃんと帰ってきてほしいものです。

それよりもみなさん体調は大丈夫ですか? 冬こそインフルエンザが到来してくるので注意ですね。まぁなにしようがかかるときはかかるので、強く生きましょうね!

雨水は最近映画をいっぱい観てきました。「私に天使が舞い降りた」とか「君愛」とか「僕愛」とか観てきました!なんかエネルギーたくさんもらって元気もやる気も蓄えてきたのでみなさんにも届くようにしておきます。えいりゃ!

さて、毎度毎度こんなくだらない内容で申し訳ないのですが、本作に関して今週もここまで読んでくださった方、誠にありがとうございます。

では来週もよければここで。

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