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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章:一年生第一学期 魔法の深淵と神髄に触れる資格は
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第92話 まぁ懐かしい限りだ

「せんせ。」

「何だ、今度は。」

「配点ってどうなってるんですか? ……他の授業に比べて満点の数値が低いような。」

「まぁそうだろうな。俺の授業は満点220点だし。」

「何、満点で220!?」

「え……。他の授業とか500点満点やのに。何、先生虐められてんの?」

「副教科なんてそんなもんだろうが。」

「この学校のどの授業よりもタメになってるんだが。」

「そうそう、この学校のどの授業よりも価値あるって。」

「せんせ、授業上手いのに。」

「そこ、偏見で喋るな。ったく……。それはそうとお前ら、四大大公家って知ってるか?」

「確か……このネビュレイラハウロ帝国にある、帝国建国当時から女王陛下に献身的な4つの大公家の事だよ……な? え、違うか?」

「それで合ってる。他には。」

「農業、医療、研究に深く関わるウィータ大公家。葬儀、暗殺、軍部に深く関わるサナトス大公家。商業、建築、観光に深く関わるヘメレ大公家。金融、薬学、防犯に深く関わるニュクス大公家の4つの総称……やなかったっけ?」

「……確か、全員この学校の生徒だったよね。」

「え、そうなのか?」

「え、初めて知った。」

「…………クラス発表の時に名簿張り出されてたと思うけど。」

「なら話が早い。おい、入ってこい。」


 ルシウス達が居る所為か、それとも最初は大人しくする方針にしたのか。随分と明るい髪色の小娘が2人入ってくる。

 元々四大大公家がこの学校に在籍していると知っていたセディルズはまぁいつも通りとして、知らなかったらしい2人組は驚いているらしい。


 まぁ俺もまさかこんなにも早く自分が見る学生が増えるとは思ってなかったがな。同時に、顔見知りとは思わなかったが。


「面倒だから自分で自己紹介してくれ。」

「もう、先生! もうちょっとやる気出してくれても良いんじゃない!?」

「あ~煙草吸いたくなってきたなぁ~。ちょっくらベランダ出てくるか~。」

「待って待って、流石にそれは待って。」

「は、初めまして、み、皆さん。四大大公家が1つ、ウィータ家のウィータ・プシュケー=リアナで、です。ほ、本日から私達もこ、この教室で先生のじゅ、授業を受ける事になりました。宜しく……お願いし、します。」

「ちょっとリアナ! ここはびしっとやらないと!」

「む、無理だって……。そ、それよりディレラ。ディレラもあ、挨拶しないと。ほら。」

「……それもそうね。ご機嫌よう、皆々様。私は四大大公家が1つ、ヘメレ家のヘメレ・ベーラヤノーチ=ディレラよ。お見知りおきを。……という建前はこれぐらいにして。貴方達、私達の師匠に何色目使ってんのよ!! 貴方達みたいな未熟者が恋心を抱くのは百億年早いんだからっ!!」


 またこいつは。


 相変わらず何年経っても強気な性格の子供が生まれやすいヘメレ家は今回もその例に外れず、何なら俺達隠密機動に関する事で直ぐ熱くなる所も変わらない。こういうのは放置するに限る。


「し、師匠!?」

「え、ちょ、待って待って、せ、先生!? どういう事なん、説明して!?」

「せ、せんせ!?」

「私を差し置いて師匠に助けを求めるなんて良い度胸ね、中庭に出なさい! 私に勝てるまで、絶対に師匠の傍に近付かせないんだから!」

「……せ、先生。あれ……どうしよ。」

「放置で良いんじゃないか。いつもの事だろ。」

「そう……だね。それもそっか。」


 まぁでも他にも伝える事はあるからな。


「さて、じゃれるのはそれくらいにするか、後にしてくれ。お前らに伝えなければならん事が幾つかある。」

「全然後になんか―――いでっ!?」

「黙りなさい、未熟者。師匠が静かにしろと言ったら静かにするの! 師匠の傍に立とうと志す癖に、随分生意気な態度ね?」

「っ……! ……ぐっ。」

「さっき当人達が話してくれたように、2学期からこの2人も俺の授業に参加する事になる。四大大公家と俺達隠密機動はそれなりに関わりが深くてな。仮にも共に陛下に献身し、身を捧げ、血肉を以て国家の礎となる身分だ。昔から俺がこの2人の教育を中学に上がるまでは担当していたんだが……今回、本人達の強い志願。その他にもご両親からの懇願と陛下からの推薦もあってこのクラスに仲間入りする事になった。それに伴って、彼女達もあの屋敷に住む事になった。」

「「え!?」」「え。」

「静かにしてくれる? 師匠の声が聴こえないじゃない。」

「わ、私も静かにしてほしい、か、かなぁ……。」


 意外にも素直に聞き入れるらしい。いや、あまりの正論に負けてしまったのかもしれないがまぁ俺が気にする所ではない。


 大事な通達である事は確かだからな。


「嫌なら嫌と言ってくれても良いぞ。」

「……いや、あの屋敷は俺が先生に贈った物だ。先生がどう使おうが先生の自由だ。」

「そうか。ならその通りにしよう、二言はないな?」

「ない。」

「では話を進める。突然で悪いが俺は明日から一週間と3日、休職する。」

「「「「「え!?」」」」」


 これには驚くのかお前らも。


「少し、隠密機動関連で外せない仕事があってな。それで1週間と3日程休む。」

「もっと休まなくて良いのか……?」

「あぁ、問題ない。1週間は勤務時間だが残りの3日間はただ王城で過ごすだけだ、普通に休んでる。……まぁそのタイミングを利用して健康診断やら何やらもあるんでな、悪いがしばらくお前達の相手をする事は出来ない。その間、お前達には俺が用意しておいた課題をこなしてもらう。まぁ大体半年で片付けられる程度の課題だ、暇はしないだろう。」

「は、半年……。」

「……そんなに先生の休暇が長くなるかもしれん、って事?」

「いいや? 別にその課題はお前らが異常な程の速度で片付けてしまった場合の事を考え、過剰すぎる量を用意したに過ぎない。俺が休んでいる間はそれをしてもらわんと困るが、俺が戻ってきてからはやるもやらんもお前らの自由だ、好きにしろ。但し、その間忙しいのは俺に限らず、ジーラ達も同じだ。」

「じゃあ……せんせ、しばらくは一切連絡を取れないって、事?」

「そうなる。まぁ必ず帰ってはくる、それまで良い子にしてろ。」

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