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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章:一年生第一学期 魔法の深淵と神髄に触れる資格は
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第87話 形のない恐怖に囚われて

「とりあえずこんな物……か。」


 そろそろ日付も変わりそうな頃。思いの他、短時間で終わったのもあって、もしかすると今日は想定しているよりも早く眠れるかもしれない。何かと疲れる事が多い日々だ、睡眠は少しでも多い方が良い。

 コンコンコンッ。


「開いてる。」

「……先生。」


 ……そんな事だろうと思った。


 我ながら随分と意地悪だと思うぐらいには内容が内容だ、何だかんだ言って今日の試験で明るみになったように、元々この3人のメンタルは強い方ではないのだろう。

 何度か俺の部屋の前に来たり、何処かへ行ったりしているのは分かっていたが……ここまでとは。

 ルシウスを筆頭に、室内へ入ってきた3人の表情は暗い。多少の個性のような物もあり、正確に暗い顔をしているのはルシウスだけ。その後に続いたトルニアの表情は一応は落ち着いたようだがそれなりに疲弊していたり。セディルズに至ってはまだ涙が収まっておらず、トルニアにくっ付いて泣いている所を見ると、恐らく悪夢か何かで飛び起きたんだろう。


 全く、お前達は。


「わ、悪い、先生。仕事中……だったか?」

「あぁ、今終わった所だ。ほら、どうせ寝れないんだろ。そこのソファ座って待ってろ。」

「せ、先生、何処に……?」

「ちょっとな。良い物用意してやるから、ここで大人しく待ってろ。数十分で戻るから。」

「……せんせ。」

「ちゃんと戻ってくる。……待っててくれ。」

「……うん。」


 相当怖い夢を見たらしい。それを何処まで軽減してやれるかは分からないが、まぁやるだけやってみるとしよう。

 ギルガ達の過保護で育った俺だが、勉強に関しては何かと。色々と許してくれる癖に、料理などの家庭的な事は一切教えてくれず、何なら体験すらした事がないくらいには禁止されていた。何なら厨房にすらも入った事はない。

 それでも、俺は聞き分けの良い部類ではない。

 こっそり厨房へ侵入してはコック達にお菓子を貰ったり、ある程度大きくなってからは何度か料理を教えてもらえるように頼んだがギルガ達に言い聞かせられている所為でさせてもらえず。何度かの交渉の末にレシピだけ譲り受けた経験ですらもある。


 まぁ、料理は出来ないんだがな。


 彼らの言う事には、折角自分達が居るのだから自分達の料理を食べてほしいとか。いつ嫁に行くのかも分からない人に料理なんて教えられないと言われ、嫁に行く前提なら良いだろうと突っ込んで嫁に行かせたくないから教えないと、随分と阿呆な会話をしたのもかなり懐かしい。

 その為、生憎と俺は料理の仕方なんて知らない。少なくとも、俺は。

 でも俺とは違い、イメージと知識さえあれば幾らでも不可能を可能にしてしまう魔法を極めている俺にしてみれば、料理なんて自力でする方がナンセンスだ。


「さて……と。俺程の魔導士になれば、料理なんぞわざわざ手を動かすまでもない。」

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