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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章:一年生第一学期 魔法の深淵と神髄に触れる資格は
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第72話 本音と建前が右往左往

「失礼、遅れました。」

「あ、ルーベル先生。いえ、そのようなお声掛けをさせてしまう程にお時間は経っていませんよ。」

「そう……ですか。それは良かった。」

「それより、その……どう、でした?」

「……? どう、と言うのは。」

「私が抱えている生徒達です。ルーベル先生に粗相をしなかったかと……。」


 俺に、か。この先生も変わってんな。


 普通、被害者面が大好きな例のイカれた体育教師のように俺を一方的に責めても左程不思議な物はない物の、俺から見てもまともな感性と呼べうる物を有している者も確かに居るらしい。

 いや、此方が珍しいのではなく彼方が異常なのだろう。何処の世界に顔を合わせていきなり牙を剥いてくる終わった自称人格者が平凡であると定めた場所があるだろうか。

 そう考えれば何も知らずしてあの先生と同じように判断してしまいそうになっていた俺にも非があるかもしれない。


 あぁ……。でも変わってる事に違いはないか。


 何を隠そう、俺はその異常教師を辞めさせる為に集団発狂と粛清、更には大恐慌(精神性)を引き起こした張本人である。通常であれば恐れられて然るべくであり、気を遣われる事はそうそうない。

 そう考えればこの先生はかなりの人格者か。あれだけ大事になった一件を知らないか。多少の恐怖はあれども自らの耳や目で体験した物以外は信じない(たち)なのかもしれない。


 どちらにせよ、好都合だ。


「まぁ……粗相と言えるほどの事は、特に。あぁでもこれはただの報告ですが、カンニングがありましたので1名分の答案用紙を取り上げました。必要とあればカウンセリングなり、裁判なりご自由に。」

「……。」

「……何か?」

「あ、い、いえ。やはり噂は鵜呑みに出来ない物だな、と。」

「噂、ですか。さぞ面白い噂でしょうな。」


 ある程度の予想は就くが。


「……えーっと。」

「あぁ、失礼しました。理科を担当しております、アラークと申します。」

「此方こそすみません、お気を遣わせてしまい。アラーク先生、此方の方こそアラーク先生にご迷惑等をお掛けしなかったでしょうか。何分、魔力も元気もあり余った暴君共ですので俺もそれなりに手を焼いておりまして。」

「いぃえ、ここ数年見た事がない程に優秀な生徒達でしたよ。親切な上に礼儀も正しく、よく気の回る子供達でした。」


 俺には全くそんな素振りを見せないんだがな。


 正直な話、都合が良いので自由にやらせているので羨ましいなどの感情はない。ただ単に、そういう事もやろうと思えば出来るのかと感嘆した程度の話でしかない。

 これはあくまで経験上の話であり、あくまで持論であり、あくまで偏見でしかないのだが見た目や表面が綺麗だったり当たり障りのない存在程その中身は真っ黒。むしろ中身を見せられないからこそ綺麗な物が殆どだったりする。

 ただまぁこれは俺がそういう事を暴かなければならない役職に就いている関係もあり、そういう物が重点的に見えているだけであってただ何の変哲もない日常生活を送っている彼らにとって、これこそ異常である可能性はある。


 ま、平凡よりも異常である方が良い。日常よりも非日常である方が良い。


 誰かに定められた人生など面白くも何ともない。少なくとも俺に決められた航路をただ往来するだけの船やレールの上を行ったり来たりするだけの列車が楽しそうに見えた事がないように。

 まぁ、無機物に “楽しい” を。感情を期待する方が異常なのかもしれないが、そんな当たり前を疑う事が当たり前である滑稽な感性程誇らしい物はない。


「そう……ですか。まぁしかし、前提条件としてなかなかの問題児だと聞いておりましたので多少拍子抜けした所ではあります。」

「ふ、普段どんな状況下に……。」


 殺戮と拷問の隠密機動部隊です。場合によっては洗脳やら粛清もありますね。


「あ、ルーベル先生!」

「先生、俺らしか実技試験ないって聞きました! そんなに俺らの事想ってくれてたん?」

「……嬉しいです、せんせ。」


 相変わらず頭は出来上がっているらしいな。

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