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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章:一年生第一学期 魔法の深淵と神髄に触れる資格は
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第68話 抑止力、ねぇ?

「退出可能時間は試験開始から50分後。退出希望者は大人しく挙手をし、速やかにこの階層にある第3多目的室で静かにしている事。試験時間は1時間30分だ。試験開始の合図をしたら答案用紙と問題用紙を裏返して試験に励みなさい。何か、質問は?」


 何の変哲もない、普段から喧しいルシウス達がまるで他校の生徒のように思えてしまう程に平凡な生徒達に、平凡な教室。これがこの学校では普通なのかもしれないし、もしかするとルシウス達の方が普通なのかもしれないが、そもそもとして普通を知らない俺に普通を問う事が間違いだ。

 そもそもとして、平凡や普通を望むのはそんな生活から抜け出した事のない、面白みのない生涯を生きてきたからに。それ以外の物に興味を持たなかったからに相違ない。

 彼らの目線で言う異常や異質が当たり前の俺にとってはこうやって机に向かって勉強するより、武器を揮って敵の首を飛ばす方が当たり前。こんな、文字の練習で薄い言葉の輪郭をなぞるのと同じぐらいの普通。


 それすらも、こいつらにとっては異常になるんだよな。


 でもこれは持論だが、正直言ってこんなレールの上を走るだけの生涯を過ごした所で結局は社会にとっての歯車でしかない。オリジナルのつもりで居るだけで、決してオリジナルになる事の出来ない替えの利く大きな社会と言う機械の部品でしかない。

 結局、良くも悪くも突出しなければ何をしても “社会の歯車” と言う枠から抜け出す事は出来ない。それに気付いて、そこから脱する努力をしてようやっと純歯車から歯車もどきに変われるだけ。……その努力もしない輩に何の可能性があると言うのだろうか。

 生物兵器として、陛下の駒として。……陛下の駒として、俺は今何をしているのか。


 ……学校って言うのは、こんな道具を量産する為の場所だったとはな。


 今度、少し興味で聞いてみるのも良いのかもしれない。学校と言う物に通った事のない俺は学校の価値が分からない、だからこそその価値の分かるルシウス達に何故学校へ通っているのかを聞いてみた結果、あいつらは何て返すのだろうか。

 もしそれが面白くない物だったとしても、それでもその答えが分かれば。どれだけくだらない事でも、面白くない事でも分からない事が1つでも減ると言うのは安心が出来る。


 質問等はなし……か。全く、面白くない奴だ。


「試験、開始。」


 一斉に問題を解き始める生徒達。カンニングの気配もなく、雑談の類も、物を投げたり魔法を行使する様子も見受けられない。

 人の挙動など、わざわざ視線で追う程の物ではない。シャルの言う通り、予め出しておくように言われていた本に目を通していくも未だ違反行為を行うような気配はない。

 このままでは本を読み終えて暇をする時間が出来てしまうだろう。だからと言って何か別でやる事もなければ、仮にも生徒の模範となるべき教師の立場で醜態を晒してはディアル達に合わせる顔もない。


 ……良い機会だと思って俺もこの問題を解いてみるか?要はこいつらに見せなければ良いだけの話だ、億が一にも


 ヒュッ。


「あっ!?」

「……カンニングはご法度、幼稚園に通うガキでも知ってる共通ルールらしいな。仮にも名門校の面汚しがそんなに楽しいか? お前はそのままそこで試験が終わるまで棒立ちしていろ。しっかり踵も揃えて、手も体側にして足腰でも鍛えているが良い。」


 風魔法の応用で当該生徒の答案用紙を回収し、教員連絡用手帳に当該生徒の指名、学籍番号、答案用紙没収理由を記載して時々その生徒がしっかり罰を甘んじているか肉眼で監視しながら理科の問題への挑戦を再開した。

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