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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章:一年生第一学期 魔法の深淵と神髄に触れる資格は
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第61話 身の丈に合った学習を

「ん、ん”ん”〜……。さて、寝るか。」

「いや、今起きたばっかじゃん。」

「そうだそうだー! 暇なら昨日の超魔法が何なのか教えろー!!」

「そ、それは僕も知りたい!」

「だーめ。今日はだらだらして過ごすって決めたんだ、折角の休暇なんだからゆっくり休まないと損だろ。」

「休暇じゃなくて謹慎じゃん。」

「ま、まぁあれだけ派手に集団発狂起こしたらなぁ……。」

「せんせ、やっぱりかっこよかった。」

「俺としてはお前らがあの幻影魔法で発狂しなかった事に驚いてるんだけどな。」

「……? 先生は先生だから俺達に危害なんて加えないだろ?」

「うん。やから綺麗だな〜って見てたけど。」

「せんせの魔力、急に跳ね上がって……びっくりした。」


 あれだけやって謹慎で済ますあいつもあいつだけどな。


 先日起きた、教師同士の決闘と言う名の虐めから一晩が過ぎた。

 当然敗北したあの教師は退職した後、本来であれば警察に処理を任せる所をイルグ達が対応し、それぞれが権限を保有する軍隊を動かしてまでの大規模なガサ入れが行われた。

 俺としてはあまりにも過剰だとは思っていたのだが、その調査の後に発見された諸々を見てしまってはそんな事も言えなくなった。

 別に国家転覆や処刑になる程の犯罪の痕跡は発見されなかった物の、小さな犯罪であれば当たり前のように犯していたらしい。今はしょっぴかれて裁判に掛けられてる事だろう。


 まぁどうでも良いけど、あんな奴。


 そんな事より問題はこいつらだ。何となく大丈夫だろうと思っていたこいつらは案の定テンションが上がっており、昨日の夕方からあの構造を教えろだどうだと喧しい。

 無論、あれだけ大口叩いておいて教えられないと言う訳ではないのだが、あれは結構力技が過ぎる上にまだ数個程度の魔法属性しか扱えないこいつらには教えた所で使えもしない魔法。何ならあの場で即席で作った関係もあり、教える程の事なんて何もないに等しい。

 ただ、それでも試すのがこいつらだ。

 もしそうなればそれだけの火力に耐えられる結界も必要になるし、何よりこいつらが馬鹿やった時の為にストッパーが必要になる。それが面倒か面倒じゃないかなんて勘繰(かんぐ)る程難しい事ではない。

 結果として、俺はディアルから体育祭の棄権と2、3日の休暇を言い渡された。本来ならもっと重くして良いのだろうが、後からシャルに言われた話を(かんが)みるとこれで良かったんだろう、結局は。


 “色々と危ない事してるみたいだから、そういう意味でも全部明かしてほしくって” ……か。俺を利用するたぁ良い度胸してるわ、あいつ。


 まぁでもだからこそディアルの妻が務まっているんだろう。自由奔放なあいつを黙らせられる、同じく自由奔放な妻が。

 それにしても後ろで騒がしいこいつらがちょっとうざくなってきた。

 どうしても遊んでほしい子供のように、彼らに背を向けてベッドの上で横になっている俺の肩を揺らしたり。ぐったりと圧し掛かったりと自由気ままが過ぎる。


 自由なのはこいつらもかぁ……。


「先生~!!」

「―……。―……。」

「寝息立てるふりしてんじゃねぇ!!」

「いやぁ~……だって面倒だし。」

「そもそも、そもそもだけど、俺達が出来るような魔法なんです?あれは。」

「いいや、無理。」

「何!?」

「あー……。だから、か。」

「せんせ、どれくらいになったら僕達もあれ、出来るようになる?」

「お前らがどれだけ美化してるのか知らんが、あれはそもそもとして俺流の力業。魔力保有量も低ければ扱える魔法属性も少ないお前らには数十年先の話だ。」

「先生、魔力保有量を跳ね上げる方法と扱える魔法属性を増やす方法を教えてくれ。」

「前者は魔力が枯れるまで毎日使い続けて器を大きくしろ。後者は習うより慣れろ。」

「ぐっ。」

「魔力が枯れるまで毎日使い続ける……? でも先生、それだと命に関わるんじゃ……?」

「そーだそーだ! 魔力は使い過ぎると命に関わるってシャルロット先生の授業で習ったぞ!」

「 “使い過ぎたら”、な。空腹感を覚えるぐらいの疲弊感が丁度良い目安だ。」

「後者は……そういう本を読むって事?」

「そうだが別にお前ら、本なんて買う必要ないだろ。」

「先生が居るからか?」

「……お前らは何の学校に通ってんだよ。学校の教科書ぐらい、少しは有効活用しようとしろ。」


 ……ったく。


「……じゃあ、寝るから。」

「え、本当に寝る気なのか!?」

「先生~! 授業やって~!」

「断る。」

「……せんせ、少しだけで良いから。」

「却下。」

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