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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章:一年生第一学期 魔法の深淵と神髄に触れる資格は
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第52話 それでもやっぱり教師と生徒

 大雨の中、俺が大怪我をして帰ってきた日から約1週間が経った。

 確かに雨の影響で予想以上に流血した事は事実だが、幸いにも傷口が深いだけで広くなかった事からそこまで大事には至らなかった。まぁ次の日朝起きればジーラが居て連絡しなかった事を怒られたが。

 まぁでもとにかく今は大丈夫だ。過保護なクソガキ共や煉掟達、果てにはジーラに特殊な結界を張られて庭にすらも出られなくされる事があったが、まぁ大丈夫。……うん。

 朝起きた時と風呂上がりに1度ずつ包帯が替えられ、食事は何があろうと絶対に全員で。しかも、食事が終わったら即時≪深淵からの呼び声≫や≪其れは永久の安らぎだった≫の魔の手によって2、3時間寝かしつけられると言う半ば監禁状態の日々だった。



 特に面倒だったのはそんな生活の2日目から4日目の間。



 直ぐに体を温めたり、食事を取ったり、寝かされたりしてしっかりと処置がなされたが問題はそこではない。体力を想定以上に消耗し、何なら魔力消費もかなり激しかった事からリバウンドに遭ったのだ。

 幸いにもベッドの上に固定された生活を送らせられていたので体を床に打ち付ける事はなかったが、面白い程に体は動かず、意識も朦朧としていた。

 後で聞けばかなりの高熱だったらしく、肩で息はするし。時折魘されて譫言を言ってはジーラ達が呼び出されるような事態にもなったらしい。

 でもまぁ彼らは学生、俺も一応教師。……ではあるが契約獣達が居る関係から煉掟がずっと傍に居たり、事もあろうか碌に実力もない癖に自分達の契約獣をここへ放置して学校へ行ったりと本当に馬鹿な真似をしてくれた。


 陛下には “我が身を犠牲にする程の可愛い子供達で良かったわね” なんて言われてしまうし……。大体、たかが一般人が軍関係者に対してやる事じゃないだろうが。


 だが忘れてはならない。俺の周りに居る過保護はこいつらや陛下達だけに留まらない。

 元々俺に非常勤教師の任を押し付けやがったディアルも例外ではなく、何方かと言うとシャルの方が特に酷かった。折角体調が回復したと言うのにしばらくは家出書類作業でもしていろと、その分の金は払うからそのまま良い子に大人しくしてろとでかい口を叩きやがる程だ。

 普通であれば「親の顔を見てみたい」と言うのが普通なのだろうが、生憎と俺はそうやって何でもかんでも親に起因させようとする頭の足りない固定概念が大嫌いだ。

 親が屑だろうと、親が死にぞこないだろうと、親が犯罪者であろうと個人は個人。親が終わってるからと言って子供まで終わっていると決定づける奴の頭こそ腐ってる。

 そももそも、平均して子供が親元に居るのは二十歳か三十歳手前ぐらいまでだ。それを過ぎれば独り暮らしをする。

 ならその間に色々と学ぶ者も居るだろうし、その間に価値観が変わる者も居る。

 なのにたかが20年しか一緒に居なかった親と刺激たっぷりで壁もなければ手加減のない世界を楽しんでいる子供の価値観が必ず一緒など、想像力が死に過ぎていて欠伸が出る。


 留守番しながら書類か~……。何か俺が大怪我した時の戦争時を思い出すな。確か、ギルガ達がちょっとでもベッドから離れようとした俺を怒りに来たんだっけか……?


「……せんせ。」

「何だ。」

「もう、体……良いの?」

「大丈夫だ。と言うか、これ以上過保護にするな。流石にそろそろストレスで死ぬ。」

「あ、じゃあ帰りにハーブティとか買ってこようか?」

「そういう話じゃない。」

「なら先生の興味を惹きそうな本でも買ってこようか。」

「ガキか俺は。……ったく。ほら、早くお前らは学校に行っちまえ。お前らが邪魔で仕事が出来ん。」

「確か、校長先生が渡してきた書類……だったか? 先生、見せてくれ。」

「それで見せると思ってるのか阿呆め。大人しく学校へ行け。」

「危険な情報がないか確かめてやる。」

「ある訳ないだろ、お前らより付き合い長いんだから。」


 仮にも学校の資料だぞ? お前らが教員ならともなく、生徒に見せる訳ないだろうが。

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