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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章:一年生第一学期 魔法の深淵と神髄に触れる資格は
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第48話 寝起きは狡いって!

 先生何処かな。ルシェルとセイズにはリクエスト聞いたから今度は先生のも聞きたいんだけど……。


 とはいえ、当然ながら作る料理。食べる料理は一緒だったりするのだが、人によってはトッピングなどが異なる場合があったりとか、変なこだわりがあったりする。

 まぁその筆頭がルシェルで、かなりの低頻度で我儘を言ってくれるセイズにも一応聞きつつ。……個人的には全く以てそういう事に興味がなさそうで不安な先生にもリクエストを聞く為、こうして探し回っている。



 しかし、こういう時に限って先生が見つからない。



 部屋は当然の事、時々先生がゆったりとしている中庭。一番大きなソファを陣取って昼寝をしている事の多いリビングだったり、もしかしたら出掛けているのかと玄関にも顔を出したが先生の靴がちゃんとあるのを確認した。

 なら、確実に。絶対にこの屋敷内の何処かに居るはずだと言うのに、それでも先生は見つからない。

 いやまぁ先生程の魔法師なら俺達を騙したり、振り回す事なんて寝起きでも出来るのだろうが、それでも授業中の「学習上必要な意地悪」はあれど、必要性も欠片もなく、ただ単に先生の気分転換や暇潰しなどが目的で悪戯された事なんてない。


 後は……


「……あれ、開いてる。」


 以前、先生の夢を覗いて興味があった特殊な図書館。あの図書館を俺達だけで再現しようと難しい本を読み漁り、それでも情報が足りなければ近場の本屋でそれに関する本などを買ってきて何とか再現に成功した、例の何ともファンタジーな図書館。

 そこの扉が何故か、開いている。

 無論、この屋敷の警備は普段俺らが通っている学校にだって(おと)らない。

 と言うか、劣らないように色々と準備や調整をした上、ルシェルのお父様が色々と手を回してくれたのだから侵入者なんて早々ありえない。

 しかし、もし侵入者が居たら?

 正直言って、俺達が必死に頑張って作ったこの場所に入るなど、やってはいけないが万死ぐらいの気分だ。

 ここは先生と俺達しか入っていけない場所で、そして何より近い内にここは先生だけの場所になる。

 そういう目的で、その為だけに俺達が力を合わせて作ったから。

 恐る恐る扉を開き、しばらくの間耳を澄ませてみても反応はない。

 仕方ないので足音を消しながらも内部へと潜入し、本棚を上手く利用しながら歩いていくがやっぱり反応はない。


 なら、ルシェルかセイズの何方かが閉め忘れたか?いやいや、あの2人も何だかんだ言って先生に対する信頼度が異常だ。まさかこの程度の凡ミスをしてこの図書館を怪我させるなんて事は


「……あぁ、ここに居たんだ。お疲れ様です、先生。」


 図書館のまぁまぁ奥に存在する談話スペース。そこのテーブルに上体を預けて眠ってしまっているらしい。

 いつもの先生であれば俺がちょっとでも近付けば目覚めるはずだと言うのに、それぐらいされてもおかしくないはずなのにピクリともしない。

 試しに耳を澄ませてみれば安定した呼吸音もする為、今しばらくは先生が満足するまで休ませておいた方が良いだろう。


 先生、いっつも頑張ってるもんな。……たまにはそうやってちゃんと休んで。


 こんな事もあろうかと。

 近場のソファの座席部分をぱかりと開け、中に仕舞い込んであった毛布を取り出す。

 元々俺達だってルシェルの家に居た際、何度も図書館で寝落ちしてはルシェルのご両親のお世話になった。「勉強熱心なのは良いが、健康にも熱心に居るように」と小さな小言を貰って。

 でも、今回は俺の番だ。

 そっと手に持った毛布で先生の広い背中を包み込むように、帳を落とすように掛けて


「とる、にあ……?」

「せ、先生!? ご、ごめんなさい、起こすつもりは」

「ルシウスから……きい、た。ここ……ありがと、な……」


 やっぱり大層お疲れだったんだろう。先生は直ぐ、意識を落としてしまった。

 でも俺にはそれよりも、あの先生に。それも酷く寝惚けた先生に頭を撫でてもらえた事がどうしても嬉しくて、思わず頬まで赤くなってしまって。

 結局、その表情筋がしばらく元に戻る事はなかった。

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