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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章:一年生第一学期 魔法の深淵と神髄に触れる資格は
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第41話 こんな俺達でも出来る事を

「失礼しま~す! 校長先生、居ますか~?」

「お忙しい所失礼します、校長先生。少しばかりお時間を頂いて宜しいでしょうか。」

「……し、失礼します。」


 恐らくではあるのだが、先生が寝不足なのはそもそもとして先生がここの正式な教員じゃないからだ。

 いやまぁ一応書類上は正式な教員ではあるのだが、前提として先生は軍人に近しい職業で、かつあの女王陛下の側近と言っても差し支えない立場で働く人だ。

 もしかすると、丁度今は忙しい時期なのかもしれない。

 もしそうであるのならこの時期だけこっちを休みにしてもらうとか、書類か課題授業などのスタイルに変更して授業をしてもらったり、やれる事は幾らでもあるはずだ。

 それにこう言った場合、先生の方から言うよりも俺達生徒の方から言った方が先生だって気楽なはずだし、校長先生達だって聞く耳を持つはずだ。

 そんな魂胆でやってきた、この学園で最も高い場所にある校長室。

 シャルロット先生にご許可を頂けたので入室してみたのは良い物の、俺達よりも先にルールゥ先生がいらっしゃっていたらしい。

 恐らく大切な話ではあろうと思うのだが、そんな中で俺達がお邪魔しても良かったのだろうか。いやまぁ良くないのであれば来ないのだろうが……。


「あぁ君達か。何か気になる事でも?」

「……ルールゥ先生と何か大切なお話をしていたのでは?」

「僕はティアの件でちょっとこの夫婦にお話があってね。丁度さっき終わった所だから気にしないで大丈夫だよ。むしろ、僕が聞いて大丈夫な話?」

「実は俺達もグレディルア先生の事で相談があって。……実は昨日、先生が授業中に炎天下の中で眠り込んでしまった際に少し、気になる事を聞きまして。」

「「「授業中に炎天下の中で眠り込む!!?」」」

「え、ま、待って!? わ、私そんな事1度も聞いてないんだけど!?」

「お、俺も初耳なんだが……その後グレディルア先生は?」

「とりあえず水分補給だけしていただいて、その後は流石に心配でしたので部屋まで送りました。」

「まぁ、その後も俺達への授業をしようとしとったんで部屋から出ない事。ソファから立ち上がらない事を条件に座学の方をお願いしました。」

「……でもせんせ、途中で寝てしまったのでそのまま毛布だけ掛けてこっそり抜け出しました。」

「本当は魔法で更に睡眠時間を長くしようかとは思ったんですけど、グレディルア先生が相手となると逆に起こしてまうんじゃかって思って……。」

「それで、校長先生。ルールゥ先生。何とか先生を休ませる方法はありませんか。……あのままじゃ先生、倒れてしまいますよ。」

「その件なんだが……実は我々も困っていてな。なぁ、ルールゥさん。」

「うん……。実はその、どっちかお休みにした方が良いって言ってるのに嫌がってるの……ティアなの。」

「えっ。」

「ど、どういう事なんです……?」

「元々僕達の部隊と言うか、組織はそもそもとして6月~9月に掛けて特に忙しいんだよ。だからこの時期は僕も含め、他のメンバーも組織の規定上掛け持ちしてる仕事の方は全部長期休暇貰ってるんだよ。勿論旋施には全部説明した上で雇用してもらって、ティア以外のメンバーは全員休暇を貰ってる。それは僕も同じ事で、だからこそ僕は最近君達の授業に付き合ってないんだけど……どうにもティアの方は頑固でね。頑なにこっちの仕事を休もうともしないし、それならと本職の方を休ませようにもそれもティアは嫌がってて。僕達から言って駄目なら陛下から~って言うのもお願いしてもらってはみたんだけど、それもどうにも駄目みたいで……。」

「俺もティアを雇用する時、ルールゥさんの言うようにある程度の事情は聞いていたのもあって俺からも話をしたんだが、こっちは非常勤だし、毎日仕事がある訳でもないし、本職の方もそういう訳じゃないから問題ないと押し切られてしまって……。」

「うん、ティアはそういう所があるんだよね~……。」

「……事実なのですか。」

「うん。確かにスケジュール的にはそうだけど、ちょっとしたタイミングでそれが裏返る事もあるから何ともって感じだね。場合によっては被る事もあるし、緊急の呼び出しで真夜中に飛び起きて、そのまま飛び出さないと駄目な事だってあるから僕としては辞めてほしいんだけどね……。」

「で、俺からも、シャルからも説得をしてみたは良いが全て撃沈してしまったのが現状だ。」


 先生の頑固者具合もかなりの物らしい。

 校長先生からも、ルールゥ先生からも、そしてシャルロット先生や女王陛下からもお話がされたのにも関わらず、それでも折れないまま現状維持を選択した先生をどうにかしようと考えた結果がこうなのだろう。

 ただ、そうなると俺達から幾ら話をした所で何かが変わる事もないのだろう。

 でもだからと言ってここで簡単に引いてしまえば先生はまた、何かしらの要因でこの前のように倒れてしまうのだろう。



 それは、どうしても嫌だ。



「校長先生、また少ししてから来ます。」

「あ、あぁ……。」

「ルールゥ先生も、また。」

「う、うん。」

「トルカ、セイズ、行こう。」

「う、うん。」

「う、うん……。」


 自分で言うとかなり悲しい事にはなるのだが、先生は俺達を完全に子供扱いしている身だ。

 俺達がどれだけ本気である事を、必死である事を伝えようともまた軽々と流されてしまうのがオチだ。

 結果、多少乱暴ではあるのだがそれなりに強引な手を使わなければ前に進めない。

 ここは色々と割り切って一歩踏み出すべきだろう。


 やる事は山積みだな。


「トルカ、セイズ、一度家に戻るぞ。今日は父上も休みだったはずだ、少しばかり我儘を言ってくる。」

「まぁ、あんたの我儘は今に始まった事じゃないからなぁ。」

「うん、トルカの言う通り。……それで?何するの、ルシェル。」

「直談判だ。野望だって大人になってから幾らでも叶えれば良い、今は先生をどうにかする。」

「りょーかい。」

「うん、分かった。」


 さぁ、先生を驚かしてやるぞ。

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