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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第二章:一年生第二学期 ご無沙汰、我が家
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第52話 微力ながらお前達を護る為に

「せ、先生。次は何処行くん?」

「適当。……約束のお化け屋敷の担当時間までまだ余裕があるからな。もう少し校内を回る。」

「じゃ、じゃあ先生! 俺にエスコートさせてや! い、一応先生よりも学校内に関しては俺の方が詳しいし、全うな理由やろ?」

「何、抜け駆けすんな! 先生、俺に是非その光栄を。俺の方がしっかりエスコート出来るから!」

「横から入ってくんな!」


 ……。


「……セディルズは珍しく大人しいんだな。」

「……せんせ、そういうの嫌だって知ってるから。だから……我慢。」


 目先の欲に意識を取られて事を急いてしまったり、相手の気持ちを考えずに動く者というのはいつだって一定数居る。そして、そういう奴は大抵痛い目に遭って結局は二兎追う者は一兎も得ずの通りになる。

 ただ、世の中そういう奴が多過ぎてセディルズのような利口な者がその波に呑まれて陰ってしまう事も。そんな利口な者に巡り合う前に時の流れに攫われて会う時にはもう記録しか残っていない時だってある。

 きっと、セディルズはそういう類だろう。残り2名に関しては、それこそ自分の道に周りを引き込むタイプだ。悔しい話だが、軍人としてはルシウスとトルニアの方が好ましく。そして参謀としてはセディルズの方が好ましい。


 出来ればこいつらからは戦争を遠ざけたいんだが……それも、俺がこいつらの傍に居る限りはかなり難しい話か。かといって今更俺がこいつらを邪険にするのもかなり難しいだろうしなぁ……。


 俺も随分と甘ったれたものだ。本来であれば自らを叱責しなければならないはずなのに、これに満足している自分が居るのだから何とも言えない。

 静かに、そっとこちらを見て様子を伺っているセディルズの頭に手を置き、優しく。でも髪を乱すように撫でてやる。こんな風に人を撫でたのも随分と久しぶりだ。


「……?」

「色々諸事情あってエスコートを任せる訳にはいかんが、これぐらいは許されても良いだろうよ。自分の欲を恥ずかしげもなく言えるのも大事だろうが、それ以上に相手の気持ちを考えられる方が重宝されるだろうからな。」

「……は、恥ずかしいです、せんせ。」


 視界の端で2名程何とも言えない顔をしている気がするが知らん。あれはあのまま反省し、その反省を次に活かせるようそれなりに出来の良い頭を思う存分回せば良い。


 あんまりこいつらに嘘は吐きたくないんだがなぁ……。


 厳密に言えば、別にこいつらが俺の手を取ってエスコートする事はそこまで問題ではない。あるとすれば、この文化祭がこの帝国限定のイベントではない事だ。

 ネビュレイラハウロ帝国シャレル魔導学校。その肩書きはこいつらが思っている以上に重たい物で、そして俺はネビュレイラハウロ帝国「七漣星」の一翼。その肩書きも、決して軽い物ではない。

 俺も後から知った話ではあるが、このシャレル魔導学校のイベントには他国からの観光客が来るそうで、こんな普通の文化祭ですら専用の許可証があれば他国の観光客ですらも楽しむ事が出来て。そして交流する事が出来る。

 その為、なるべく可能な限り問題を避ける為に陛下は俺専用の。強いてはこいつら専用の校舎を造った時ですらなるべく校門から遠い位置に建造し。専用の結界ですらも張った。


 この時期だけは、あまりこいつらと仲が良過ぎる行動はある程度避けなければならない。


 より正確性を求めるのであればこいつらにそれを直接伝えれば良い話ではある。でも、その分こいつらは折角の文化祭を純粋な気持ちで楽しめなくなってしまう。だから、今は回数を重ねる事で段々と分かってもらえる事に期待しなければならないこの立場を多少恨まねばならない。


 ……本当に、嘘は吐きたくないんだが。


「それはそうとセディルズ、少し頼まれてくれないか。」

「う、うん。何……?」

「俺の代わりに、ディールとリシェラに謝っておいてくれ。」

「え? わ、分かった……。」

「謝る……? 先生、何かあったのか?」

「陛下から招集命令だ。……王城へ向かう。お前達はこのまま文化祭を楽しめ、俺が屋敷へ帰ってきたら色々話を聞かせてくれ。その為にも、存分に楽しむんだ。」

「……ほんまに帰ってきてくれるんやんな。」

「あぁ、約束だ。必ず帰る。」

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