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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第二章:一年生第二学期 ご無沙汰、我が家
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第48話 素晴らしき魔法の歴史を背負って

「……という事で。お前らの文化祭が終わり次第、新たにネビュレイラハウロ帝国の歴史に名を刻む素晴らしき年間行事が1つ、魔嶺闘演武が開催される。陛下の恩寵により、お前らの観戦チケットも幾何か貰ってきた。……まぁ、必要なら友人にでも配ってやれ。」

「先生は?」

「せ、せんせは……僕達と一緒に来てくれますか?」

「……………………まぁ、出場しない時は傍に居てやる。」

「え、出場!?」

「し、師匠、師匠もで、出るんですか!?」

「……あぁ。」


 予想はしていたがやはりこうなったらしい。

 陛下より魔嶺闘演武に関する情報提供を頂いた翌日、急ぎガキ共にも情報提供をすれば……案の定。とはいえ、俺は少しばかり今回のイベントごとは陛下が俺の為にご用意してくださったのではないかと思う節がある。

 そうでなければ自国の国力及び戦力を無差別に……いや、平等に流布するような事はしないだろう。何しろ、タイミングが完璧過ぎる。


 大方、俺がダンジョンで暴れ足りないと口を滑らせたからだろうなぁ……。全く、時々陛下が俺達を覗き見ているのを恐ろしく感じる。


 しかし、ならばこそ陛下がわざわざ用意してくださった遊び場を喜んで堪能させていただかなければこれはあまりにも失礼に当たる。少なくとも陛下が俺の為にこの機会を要強いてくださったであろう事は疑うまでもない。更に言うならこの国の軍事力の鱗片を他国に見せつけるのも陛下の策略の1つだろう。

 正直な話、俺達七漣星が居る限りこの国が傾く事はまずありえない。しかも俺達は絶大な魔力に戦闘力に知識にと何もかも優れている為、試合の様子を見られたからと言って困る事は殆どない。


 そもそも、見て奪われるような簡略的で複雑性の欠片もないような雑魚技術は端から使っていない。そういう事は三流がする事だ。

 魔法の歴史がそれを物語っている。原初の魔法は大前提として “誰もが魔術を使える未来” を理想に描いたからこそ敢えて盗難防止を前提とした構造がされておらず、それこそ才能と理解力、再現力さえあれば誰でも魔術を扱う事が段々と出来るようになっていた。

 しかし、あの時代はあまりにも盗難防止を。……いや、“悪用されるかもしれない” という可能性を蔑ろにし過ぎた。その影響から何の分類もなかった魔法が黒魔術と白魔術に分かれ、やがてそれが術式から魔法に進化して黒魔法と白魔法となり、そしてそこから更に死の魔法、疫病の魔法、命の魔法、浄化の魔法と複雑化していった。

 その過程で過去の失敗がかなり響いたらしく、如何にして悪用を防ぐのか。悪用を仮に防げなかったとして、どうやって異端者を黙らせるのか。そのいたちごっこがひたすら続けられてきた。

 その時代を、その嫌な当たり前をこいつらもいつかは身に沁みて学習するんだろう。本当に、社会と歴史というのは学習する気力がないようにしか思えずただただ気が病む。後続には求める癖して、自分達は何も成長しないのだから吐き気がする。


 本当、難儀なもんだ。


「まぁそういう訳だ、適当に楽しみにしておくもしないも好きにしろ。」

「何を言ってるんだ、楽しみに決まってるだぞ。」

「目に焼き付けるから。」

「要らん。」

「俺らには大事なんや!」

「先生、聞いてるのか!? 先生!!」


 ……はぁ。

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