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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第二章:一年生第二学期 ご無沙汰、我が家
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第45話 こういう時ぐらいしか浴びれないのだから

 結局採掘はガキ共に盗られた。まぁ、何方にせよこの程度の行動で十分に「良い運動だった」と言える程に丁度良い量の魔力を消費出来る訳ではない。これならいっその事……。


 ……そうか。それで良いのか。


「ジーラ、イルグ。こことこいつらは任せる。」

「うん、分かった。」

「良いけど……どうすんだ?」

「一周してくる。」

「あ、やっぱり遊びたかったんだ?」

「おう、行ってこい。こいつらは俺らに任せとけ。」

「あぁ。」


 じゃあ、色々と遊ばせてもらおうか。


 考えてみれば簡単な話だ。傍に居るのがイルグとジーラならよっぽどの事があっても問題はないだろうし、もっと早くあいつらにガキ共を押し付けて1人で探索してりゃあ良かったんだ。律儀に教師の真似事なんて続けて、考えてみれば何もかもが馬鹿な話だった訳だ。

 今考えてみれば、こうやって1人で歩くのも随分と久しぶりな気がしないでもない。いや、久しぶりで間違いない。

 見れば見る程に不思議なこの階層は岩だらけで、でも所々鉱石が混ざっていて。どういう原理なのか、この階層は各自で光源を用意しなくても明るさに問題はないらしい。これもまた不思議でしかない。

 可能であれば本当に数世紀程ここに閉じこもって何もかもを調べてみたいのだが……それもあのガキ共が死ぬまでは無理だろう。それか、あまり俺は嬉しくないのだが本当に七漣星に加盟した場合にはそれも叶うだろう。……悲しい事に、早ければ数年。遅ければ数百年必要なのだから残酷だ。

 よく聞く話、こういう時の大抵は子供の成長は早いだどうだと言うのだろうが生憎と俺はそう思わない。むしろ子供はそう簡単に成長しない方が良い。その方が、子供故の弱さを利用してとことん困らせてやれば良い。どうせ、大人になったら他の大人達に傷付けられるのだから子供のうちに散々苦しめてやれば良い。


「……流石にここの奴らは平和的ではないらしいな。」


 何気なく歩く通路の先、多少の暗闇の中から金色の瞳を持つ深緑色の綺麗な大蛇が顔を出す。予想通りの捕食者らしく、ちろちろと舌を出して臨戦態勢だ。願ってもない。

 あの程度なら魔法で蹴散らしてしまっても良いが……あの程度だからこそ、少しぐらい遊んでも良いだろう。後でジーラ達に呆れられるかもしれないがたまにはこれぐらい許してもらわなければ困る。

 大気中の魔力を一気に凝縮させ、作り出したのはレイピア。非常に密度の高いレイピアは常に魔力特有の淡く蒼白い光を放ちながらまだまだ魔力を吸収している所を見ると、俺はまだこの手の事の熟練度が足りていないらしい。それも、今だけだが。


「 ――― たまにはこういうのも良いだろうよ。」


 よく話に聞く魔法で作られた剣というのは大抵、一度構築したらその後は何も気にせず普通の剣のように振り回す事が許されているらしい。しかし、実際の魔法で作られた剣というのはそこまで便利ではない。

 一度魔法で、魔法だけで構築されている剣を作り出した場合、常にその魔力を調整しなければならない。そうでなければ剣の形状が変わってしまったり、強度が変わってしまったり、軟度が変わってしまったり、場合によっては剣の形を忘れて空気中に魔力が霧散するような事もある。

 それ故、魔法だけで構築されている剣というのは剣であるという事を維持するだけでもかなりの集中力と魔力。そして何より、魔力の制御力と周囲の魔力量の把握と熟練度が必要になる。それも碌に出来ないのに魔法だけで構築されていた剣で戦闘をしようなどと思い上がった事は考えない方が良い。自ら死地へ向かうような物である。

 仮にもあの大蛇も魔物。魔力に反応したらしい。まぁそれも仕方ないだろう、ここまで圧縮され、一か所に留まり続けている魔力の塊というのはあまりにも美味だろう。そりゃあ目の前にご馳走を並べられたら飛びついてくるに決まってる。

 全速力で正面から突っ込んでくる大蛇。それに合わせてレイピアを揮うも、そこまで馬鹿ではなかったらしい。

 大きく身を引いて避けたり、その蛇体を利用して俺を捕まえようとしたり。――― だが、向こうから寄ってきてくれるならそれはそれでありがたい。


「しゃああああああああああああああ!!?」

「おら、どうした。もっと赤く染まりに来い。」


 更に蜷局を小さくしようとした所で胴体の一部を綺麗に掻っ捌く。お陰で噴水の如く血飛沫が噴き上がり、必然的に噴き出したそれが全身に吹きかかって戦場の如く真っ赤に染まる。

 その血の匂いが、段々と体温の抜けていく血が、より強くなった殺意に心臓が疼く。自然と笑みが零れ、一度レイピアを持ち替えてその身に深く突き刺して地面へ縫い付け ――― 斜め上から俺を喰わんとしていた大蛇の口に複製したレイピアを突き刺す。

 悲鳴を挙げながらも逃げようとする大蛇を逃がさないように、魔法で作り出した巨大な手で大蛇の頭を抑えつけて更にレイピアへと押し付けて喰い込ませていく。その大量の血を、俺に浴びせながら。

 そこで、レイピアの性質を変化させて最初こそは貫いていたレイピアの切っ先を変形させ、大蛇の血管に倣ってその身を侵食し、侵略し、――― 爆ぜる。

 お陰で辺り一面血の海だ。あの程度の大蛇でもこれだけの血液量を有しているのだからこの地下に居るであろう化け物共はどれぐらいの大きさの血だまりを作ってくれるのか、今からでも


「ティア。」

「……ジーラか。」

「子供達は置いてきたよ。まぁ……あれだけ大きな悲鳴にも近い声が聴こえたら心配するだろうからね。それはそうと……ちょっとは楽しめた? いつになく血塗れみたいだけど。」

「まぁ、それなりに。一興だ、このまま」

「殺して回るのも良いけど、ちょっと来てほしくて。あ、血はちゃんと落としてね。」

「……?」


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