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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第二章:一年生第二学期 ご無沙汰、我が家
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第44話 ダンジョンというのは宝の宝庫だったらしい

 不思議な事に、ダンジョンというのは階層によって場所の雰囲気が大きく変わるらしい。これも、随分とおかしな話だ。

 つい先程までは果ての見えない草原だったのに対し、10階層程降りると今度は洞窟が拡がっていた。幾度となく枝分かれの激しいこの場所はさぞ迷子が量産されては最悪の場合、そのまま力尽きてこのダンジョンの養分にでもなった事だろう。


 あぁいや、少なくともこのダンジョンは人間を喰わないんだったか。


 気になるのは、それがこのダンジョンに限定した物なのか。それとも全てのダンジョンに共通する物なのかは謎だが、場所によっては人間をも栄養として吸収するダンジョンが存在するのだろうか。そう考え出すと、少しばかり他のダンジョンも覗いてみたくはなる。まぁ必然的にこいつらも連れて行かなければならなくなる訳だが。

 それにしても多少はこのダンジョンも人を楽しませる事が出来るのか、ただの殺風景な岩肌ではなく色んな鉱石などが無数に含まれている岩壁が拡がっている。中には綺麗に発光している物もあるのでガキ共が探索している間に採掘するのも楽しいかもしれない。

 実際、錬金術でもそうだが鉱石系の資源は大抵ダンジョンから採掘される。それぐらい、地上の鉱石は状態が悪かったり、量が少なかったり、純度が低かったりと問題が多い。まぁダンジョン内から得られる鉱石も量は少ないだろうがそれ以外に関しては色々と利点がかなり大きい。


「……掘削でもするか。」

「掘削? あぁ~……ここの鉱石を?」

「あぁ。面倒だから魔法で、にはなるが。ジーラ、お前はそのままイルグとガキ達の面倒を頼む。」

「はぁ~い。」


 戦闘とまではいかんが、これはこれで楽しめるだろ。


 雷撃系の魔法を構築し、それを思いっきり岩肌に投げ付ければ案の定。岩肌が大きな音と共に掘削され、破壊された岩肌と比例するように数多の鉱石が自然からの拘束より解放されてからんからんと地面を転がる。不思議な事に、ここの宝石はどれもこれも強度がかなりの物なようで、本来であれば直ぐに壊れていそうなのに壊れる事なくからからと地面に転がる。

 その割に純度もかなり良いようで、ダンジョン製というだけで馬鹿みたいに額が跳ね上がるのはこういう事かと納得はした。これまで、何かと怪しくて買うのを控えていたが……ここまで高品質で高純度な物であればあの金額も妥当だろう。

 しかも面白い事に、ここはダンジョンの中。地上であれば十中八九落盤しているであろう乱暴な掘方をしたとしても何も問題はない。まるで別の場所に大黒柱のような何かがあるのか、それぐらいの強度は確かに存在する。


「……何か、そのまま掘り尽くしそうな勢いだな。」

「先生、それ……俺らにも出来るん?」

「ん? あぁお前らか。この程度の魔法ならお前らでも可能だと思うが。……生憎、俺は掘削作業で忙しい。勝手に見て」

「なら先生、掘削作業は俺達に任せてくれ。」

「……ん?」

「せやな。元々先生は何かと俺らの為にむちゃさせてもうてるし、たまにはゆっくりしてほしいねん。」

「……勘違いしてる所悪いが、別に俺は疲れている訳ではない。と言うより、そもそもとして魔力というのは定期的に動かさないと体調を崩す。…………お前らとは魔力の総量が違い過ぎるんだ、お前らと違って簡単な魔法を使った程度で “魔力を動かした” に該当しないんだ。」

「まぁ師匠、私達の前ですらその力の片鱗すら見せてくれないもの。」

「し、師匠の……さ、才能、はよ、よく見て……ます、けど。」


 見せようと思って見せてる訳じゃないんだがな。


 才能、と言われてもこれは俺にとって当たり前の物。よく観察してその情報を得て、よく考えてそれを再現し、よく工夫してそれを改変する。魔法の歴史で当たり前のように繰り返されていたそれをやっているだけ。俺がおかしいのではなく、世界がおかしいのだから。

 努力とはそういう物で、工夫とはそういう物だ。そしてそういう手の物は勝手に滲み出る物で、分からせようとしている時点で人としてかなり程度が知れている。その段階でもう既に実力なんてないような物だというのに。


「……まぁ、こんな掘削程度で満足も出来ないがな。」

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