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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第二章:一年生第二学期 ご無沙汰、我が家
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第29話 見えない物を見ようとして

「……今日の授業は雑談とする。」

「……先生、体調悪いんやったら無理せんでええねんで?」

「先生。先生が気付いてるかどうか怪しいんだが、今の先生はまるで死人みたいだ。」

「し、師匠……? 何かあったの?」

「…………良いから、気にしなくて。……はぁ。そんな事よりも。今日はまぁ、お前らが見て分かるように今日の俺は色々と心境的に荒れてるもんでな。今使ってもどうせ上手く魔法が使えんからお前らの想像力を鍛える事にする。」


 別にやらなくても良さそうだけど。……まぁ、ちょっと遊ぶぐらいは良いか。


 魔法はイメージから生まれた。こうなったら良いな、ああなったら良いな、ここでこれがあれば。ここでこうなってくれれば。……そんな数多の願望が具体的な形を成した物が魔法だ。

 それ故、魔法という物は具体的なイメージを頭の中に描きながらもそれに形を与えると言う高難易度な事を行い続ける必要がある。その為に、より高難易な魔法を使おうと思えば思う程にそれ相応の集中力が必要になってくる。

 しかし、難しくない話。戦場で集中する、というのはかなり難しい話でもある訳だ。こいつらが一体どの道へ進むのかは知らないが……今から出来る事は増やしておいた方が良い。


 出来ればこいつらが戦争に出るような事がないように願ってるんだがな。


「時にお前ら、都市伝説に興味は?」

「と、都市伝説……? まぁ、それなりにだが。」

「死期が近付いたら出てくる、自分と全く同じ化け物……とか? 会ったら殺されるとかって。」

「ドッペルゲンガー、の事?」

「そうそう、それそれ。」

「怖い結末もあれば、哀しい結末もあるけど……それがどうかしたの?」

「お前らはこの体が現実だと捉えるか?」

「現実……?」

「どう、いう事だ?」


 まだ難しいか。


「なら、水槽の脳はどうだ?」

「し、知ってる! 僕達が生きてるこの世界は培養槽の中に居る脳が見ている夢で、本当の俺達は脳みそだけの存在で肉体が存在しないって。」

「あ~それか。確か、より優れた脳だけが肉体を得るとかどうとかって奴じゃなかったか。」

「そうだ。なら、お前達に問う。この現実はその水槽の脳による物だとして。ドッペルゲンガーはその“優れた脳”を持っている存在の元へ現れる、支配者の使徒か何かだとしよう。」

「……随分とぶっ飛んだ話だな。」


 ぶっ飛んだ、か。


「ならお前達はまだまだ想像力が足りてないな。」

「え……?」

「あー……そういう事?」

「どういう事なん、ディール。」

「師匠が言ってたじゃない、作れない魔法はないって。魔法は人の心を読むって。魔法に形を与えるのはいつだって私達の知識。……なら、想像した物を“そういう物だ”と、“そういう知識だ”って認識したら……それはもう魔法に形を与える材料でしょ?」


 流石ディール。脳筋故に頭が柔らかいな。


 口にしてしまえばかなり怒られるのだろうが、まぁそんな事はどうでも良い。問題は、彼らがディールのその言葉で何を得るかだ。

 幸いにもきっかけさえ与えてやれば後は自分達で勝手に頑張ってくれるのがこいつらだ。後は良い感じに突いてやれば良い。


「そう、魔法は知識で構築されている。そして、その知識というのはいつだって好奇心や興味から結果を想像し、試し、最終的な結果を正しい知識とする。お前達は雑談で想像力と発想力を鍛えて、そこから実際に魔法を作ってみろ。……どうせお前らの事だ、適当にやらせても出来るだろ。」


 ギルガ達にありとあらゆる知識を与えられ、どうしても既存の知識で解決出来ない問題には自分なりの解釈を加えて魔法を行使してきた。そうする事で自分なりの魔法を獲得し、誰よりも早く。誰よりも繊細な魔法を組めるようになった。

 魔法式が複雑であればある程に、多ければ多いだけその魔法のセキュリティも完成度も跳ね上がる。むしろ、そこまで出来てようやっと一流の玄関口とすらも思っている。


 だから、固定概念はなるべく壊さなければならないんだ。思考のパターン化など、愚の骨頂過ぎる。


「……。」


 あぁ、くそ。


「……悪いが今日はそのまま、各自自習しててくれ。時計は必ず見るように。」


 頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。

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