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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第二章:一年生第二学期 ご無沙汰、我が家
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第8話 当たり前を学ぶには当たり前を捨てる事から

 少し早い気がしないでもないが……まぁ、普通に考えてこいつらの成長が早いからな。意外にも問題にはならんかもしれん。


 元々は今日も今日とてあの馬鹿みたいに広い教室に対し、呆れるぐらいに少ない生徒共に座学をする予定ではあったが急遽。中庭へ移動してもらった。

 勿論さっきの報告書によって変更したのもあるのだが、意外にも突っ込まれなかった。こいつらの事だ、俺が教えれば何でも良い説は確かにある。それもそれでどうなんだと思うが。


「それで、先生。今回はどんな授業内容なんだ!?」

「座学とは言うてはったけど……わざわざ中庭に来たって事は教室やと出来ひん事って事やんな。な、何するん?」

「始める前に確認だ。お前ら、幻魔法はどれくらい使える。」

「げ、幻魔法……? やった事すらないが。」

「お、俺も……。幻魔法って何の役に立つん?ってレベル。」

「……幻魔法はに、苦手。よく1年生じゃあ入っちゃいけない書庫に行く為に迷彩代わりに使ってたけど、音出しちゃ駄目だし。本取ってる所とかも見られちゃ駄目だから結構使い勝手は悪い……気が、する。」

「う~ん、私もあんまり興味すら持たなかったかも。」

「わ、わた、私はか、風魔法と掛け合わせてお、音もつ、作ったりとか、光魔法と掛け合わせて少ない魔力消費で広範囲にし、蜃気楼を作って弟達にま、魔法の凄さとか、そ、外の事、し、知ってもらおうと……。」

「え、そんな事出来るん!?」

「……あんまり戦闘向きじゃない気がするんだが。」

「珍しく意見が合ったわね、ルシウス。私もそう思うわ。」

「は、範囲を大きく出来るって事は小さくしたりとか、音を消す事も……?」

「……既に色々と突っ込みたいんだが。戦闘馬鹿2人はまだ良いとして、トルニアもまぁ良いだろう。リシェルの弟想いの所はまぁ普通に素晴らしい。……問題はお前だ、セディルズ。何をさらっと校則違反してんだ。ディアルに言いつけるぞ。」

「せんせなら部分的に肯定してくれると思って。」


 こいつ。


「まぁ確かに知識に対して規制を掛ける際には学年よりも実力で判断すべきではあるだろう。そもそもとして知識も力の1つ。規制の1つとして学年で区切りを就けるのもありではあるかもしれないがそれに依存すると生徒達の学習速度や学習度合い、そして勉学に対する興味を削いでしまう可能性がある事から成績による判断基準を設けるようディアルに打診してやるぐらいはしてやっても良い。」

「ほ、本当!?」

「その代わり、成績が重要になる。つまり、俺以外の授業もって事だ。」

「うん、頑張る。」


 それで頑張るってのもどうかと思うがな。


 とにかく、これで生徒達の幻魔法に対する認識は分かった。それにしても酷い内容だなとは思うが。

 ただ世界的に見ても幻魔法の活用例はかなり少ない。それもこれも、戦争が多かったり。後は巨竜壁の外へ出ると殆ど何も管理されておらず、舗装したとしても直ぐに駄目になる事から完全に放置されている自然は危険な事も多ければ異常な身体能力及び探知能力を持つ生物が多い。

 その観点からあまり回復魔法以外の支援魔法は必要とされておらず、幻魔法なんてのは特に研究も進められていない。


 俺は結構好きだけどな、幻魔法。


「お前らは魔法に形はあると思うか?」

「か、形?」

「あぁ。」

「う~ん……。俺はないと思う。」

「俺もないとは思うが、それに形を与える事も出来ると思う。」

「ルシウスの答えが一番正しいな。魔法というのは本来無形であり、それに魔法を行使する側が頭の中に思い描いたイメージ。又は魔法式。それまたその両方によって影響される。つまり、魔法の殆どは無形魔法という事になる訳だ。」

「言われてみれば……確かに。」

「でも、せんせ。それがどうして中庭での授業に……?」

「そんなの今からお前らに幻魔法を極めてもらうからに決まってるだろ。」


 幻魔法は役に立たない。それは、自分達が未熟である事に対する言い訳に過ぎない。

 意外にも役に立たないように思えて幻魔法というのは幾通りもの用途がある。

 例えば、自分に幻魔法を掛けて仲間だと認識させる。特に潜入などをする上ではかなり役立つ物で、高度な幻魔法を扱えるようになればスキャニングですらも誤魔化す事が可能となる。

 野生生物が闊歩するような場所でもこの魔法はかなり役に立つ。見た目を彼らに似せたり、その他にもやりようによっては何事も好転させられる。ただ、問題はそれを思い付くだけのまともな頭があるかどうかだけだが。


「ただ、まずはお前達に幻魔法がどれだけ素晴らしい物なのかを理解してもらう事から始めないとな。」

「な、にをさせる気だ?」

「幻魔法を使わずに幻魔法に見せろ。」

「「「「「え。」」」」」

「そうすりゃあ幾らお前らでも幻魔法の素晴らしさが分かるだろ、せいぜい苦労しろ。」

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