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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第二章:一年生第二学期 ご無沙汰、我が家
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第7話 得手を自ら伸ばして不得手を他で埋める

「東ではハリケーン。西では大火災。北では地震。南では津波……か。タイミングが良かったというか、何というか。」


 イルグからここ最近、世界中で異変が起きていると聞いて俺も久々に暗部を動かしてみた。

 俺が彼らに命令を下す事はかなり珍しく、発狂レベルでテンションの上がった彼らは正直かなり怖かった。まぁ、それだけ俺が彼らを頼っていなかった証左でもあるので多少の反省は必要だろう。

 今は、そんな事よりも情報だ。

 元々イルグの抱える暗部は戦況特化。何方かと言えば斥候として敵地に先陣を切り、見える範囲から得られる全ての情報を掻っ攫う事に特化している。

 その観点からイルグから渡される情報というのはその大半が “表面上の情報(あからさまな情報)” である事が多い。しっかりと調べずとも、行動から。言動から。空気感から。その場の事の動き方から予想出来る、戦況と呼ぶに相応しい情報が揃う。

 我らが七漣星リーダーと副リーダーという規格外を除けば影星がそれぞれ保有している暗部にはそれを管理する影星の性格、特徴、得意分野によってそれに準じて特化する。

 大きな戦争ではそれら全ての情報が出揃ってから出方を決め、これまで幾度となく繰り返されてきた戦争の全てに勝利を収めてきた。逆に、こういったまだ戦争が始まる前の段階だったり終戦後、何らかのきな臭い案件だったり、まだ形がはっきりしていない存在と相対する時には大体2種類の影星直轄暗部の情報さえ得られれば大体の全貌が見えてくる。



 それぐらい、七漣星の暗部は重要視されている。



 それは他国からの視点でもそうで、七漣星直轄暗部のどれか1つにでも目を就けられた時にはもう既に2つ、3つの手は自分達の足を掴んでずっと観察しているという噂を立てられる程。それぐらいに彼らは優秀だ。

 イルグの所の暗部から得られた情報と掛け合わせてより大雑把な形を鮮明にする為、俺の抱える暗部にも調査を命じればよっぽど命令に飢えていたんだろう。たった3日で奴らは結果を出した。

 結論として、これらの異常な自然災害は “偶然ではない” 事が明らかになった。

 そもそもおかしな話、何か問題があれば俺よりも潜入に長けた暗部を保有しているジーラに話を流す方が得られる情報は多い。それなのに、あいつは俺に話を持ち掛けてきた。


「そして物の見事に釣れた。」


 今現在世界中で巻き起こっている大規模かつ異常な自然災害には多かれ少なかれ魔力が含まれている事が分かった。それも、自然エネルギーとは全く別の魔力が。

 自然から発生するエネルギー。此方も魔力である事には違いないのだが龍脈から湧き出てくる魔力を一切薄めずにそのまま放出しているような物で、場所によってはマイナスイオンなんて呼ばれる程に特殊な物だったりする。

 効果自体はそこまで悪くはないマイナスイオン。但し、量=毒とはよく言うように、どれだけ便利な物でも致死量を超えれば牙を剥く。

 薄めずに使う硫酸とも呼べる自然エネルギーはあまりにも暴力的かつ強大過ぎるが故に特殊な個体、又は特殊な生命体のみしか利用出来ないとされている。何なら俺達から見ても明らかに超常的な存在である燐獣達の中でもまともに自然エネルギーを薄めずに使える者は少ないと聞く。

 ルシウス達が普段利用している魔法は祝詞や魔法式その物が濾過装置や浄化装置のような役割をしており、大気中から集めた自然エネルギーを自分でも利用出来るように上手く調整して魔法を使う。それが、魔法の大まかな原理。

 それに反し、今回イルグからの入れ知恵で調査した異常な自然災害にはただでさえ硫酸並みの猛毒を超酸にまで跳ね上げた非常に不自然な物。


 古来より今現在に至るまで、魔法式を複雑に絡める事で強力にする方法はあってもそのままグレードアップするような技術は存在していない。……少なくとも、俺と師匠の知る限りでは。


 そもそもの話、仮に俺達が知らないだけだったとしてもこれだけの自然災害に見せかけた災害を起こせる程の力だ。隠すつもりでも隠す事なんて出来ず、今回が初めてなんてのはもっとおかしい。

 俺が人間のように数年しか生きていないのであればともかく、少なくも20世紀近くは生きている。その間に俺がこれに近しい事象を記憶していない。

 そうでなくても、先に俺と同じ見解を出していた師匠に至っては俺の倍以上生きている。もし師匠がこの事例に近しい物を知っているのであれば先の俺の定説をおどけながらも可能性を匂わせるはず。


「ならやっぱり今回が初めて……か。」


 後で報告書に纏めて全員に共有しとくか。後は各々動いてくれるだろ。

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