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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第二章:一年生第二学期 ご無沙汰、我が家
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第1話 帰路

 夏も終わり、季節は秋。

 猛暑も大分収まってきてくれたのもあり、元々熱に耐性があまりない俺でも普通に外を出歩けるようになってきた。多少それが理由で危惧している事もあるのだが。

 久々に帰ってきた我が家……といって良いのかどうかはまだ実感のない物の、それでもここの居場所はそれなりに良い。

 陛下が何も言わない事を良い事に、王宮に顔を出す機会が減ったり。この屋敷にずっと籠っては何らかの研究をする事も増えてきた。


 俺らしくないと言えば良いのか。それとも、俺は本来こういう考え方だったのか。


「毒されたか、甘ったれたか。」


 考えても仕方のない事を想い返しながら、船の窓から見える景色を楽しむのはそれなりに贅沢かもしれない。

 流石にこの後、荷物を下ろしたり。来たる2学期や諸々の準備があるので酒を飲む訳にもいかないが、それでも十分気晴らしにはなる。赤と黒は見慣れていても、蒼と白は見慣れていないのだから。

 幸い、酒は禁じられていても煙草は問題ない。あのガキ共が居ないのを良い事に、ソファに身を委ねながらもキラキラと輝く海面を見ているだけで十分満足だ。


「きゅいっ、きゅいっ~!」

「……こっちもこっちで元気だなぁ。」


 船と並走するイルカ達。彼らもちゃんと分かっているんだろう、このまま海の向こうへ行ってさよならになる事を。

 もしかしたらまた来年も来るかもしれない。いや、別の別荘に行くかもしれない。そうなれば彼らとはまたしばらく会わない事になる。

 流石にこのままさよならするのも可哀想かと思い、やんわりと手を振ってやれば大きくジャンプしては輪を描いたり。激しくスピンしながら跳んでは海にダイブしてと随分楽しそうだ。


「てぃ~あ。」

「ジーラか。……ってお前、何で酒なんて持ってきてるんだ。」

「だって、学校始まるまでまだ時間あるでしょ? それにさぁ、元々この旅はティアの気分転換と息抜きの為に連れてきたんだし、家に着いてもゆっくりしてもらわなきゃ。」

「断る。」

「えぇえ~!?」

「……どうせあいつらの事だ、また色々教えろと喧しいに決まってる。」

「そんなの、僕が」

「盗るな。」

「……ふふ。」

「……何。」

「ううん。あのティアに、僕達以外の大切な物が出来た事がどうしても嬉しくて。」

「ほざけ。」

「んふふ。それで、戻ったら諸々どうする気?」

「……準備。どうせ授業の準備もそうだし、俺も俺でやりたい事があるからその研究の準備もするつもりだ。」

「協力は?」

「要らん。」

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