表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章幕間:夏休み 相応しき器に想いを込めて
135/192

第132話 今しか出来ない体験を

「ほら、俺の話よりもこいつらに構ってやってくれ。」

「こいつら……? あ、小さい……人間が居る。ティア、子供……? 結婚、した……?」

『パートナー……誰?』

「そんな言葉を覚える前にもっと覚えなければならない言葉もあったはずだというのに……。そもそも、勝手に結婚した前提で話を進めるな。」

「じゃあ、誰かから預かってるの? ティアが?」

「……まぁ、そんなとこだ。」

「ティア、今学校の先生やってるって。」

「先生。あの、ティアが……?」

「何か問題が?」

「ううん。人間の世界で溶け込めてるの……分かって、安心。」

「どういう心配をしてるんだお前らは……。」

「……先生とは、長いのか?」

「ええ、この子が部隊に入った時から知ってるよ。あの頃はこの島の周りの海を一緒に散歩もしたよ。」

「え、じゃあその時は何か怖い生き物とか居なかったんですか?」

「ん~……今程多くはなかった、かな?」


 そう、今程多くなかった。

 一応この島はネビュレイラハウロ帝国が保有している領土、領海にはなっているが少し前はかなり治安が良かった。生態系に対して治安という言葉が正しいかどうかは不明だが。

 しかし、ある意味俺達がこの島を保有してからはこの島の近くの海域が他国との戦場になる事が多くなってしまい、船から落ちた人間だったり何だったりと捕食しに色んな危険生物達が寄ってくるようになってしまった。

 時折はこいつらが掃除してくれているのである一定レベルで抑えられてはいるが、所詮は抑えられているだけに過ぎない。……彼らにも寿命がある、いつまでもこのままとはいかない。


 もっと強い精霊に来てもらうか……はたまた、俺達がここから引くか。まぁでも後者は意味がないだろうなぁ……。


 そもそも、他国がこの海域を狙うのは俺が居る影響でこうやって集まってきてくれている精霊達の力を利用したいから。そして面白い事に、奴らは彼らがここに集まる理由をこの海域その物にあると考えている。

 本当は俺がここに居るからという単純な理由だというのに、そんなとんでもない勘違いで何もかもを無駄にしようとしている。


 本当に、面倒な事ばかりだ。


「……ティア。」

「何だ。どさくさに紛れて俺の足を抱き込むな。」

「一緒に、海の中……散歩、しよ……?」


 ……。


「……幾ら誘われても怖い物は怖い。」

「絶対……護るから。」

「そういう問題じゃない。……嫌なんだ。どうしても海の中を散歩したいならこいつらと行け。」

「あ。さっすがティア。相変わらず好かれてるね。」

「ジーラ、良い所に。このままこいつらと一緒に海の中を散歩してきてくれないか。」

「あぁ~……。そういう。皆、ごめんね。申し訳ないんだけど、ティアの代わりに僕じゃ駄目?」

「う~ん……。じゃあ良いよ、行こっか。」

「私、ここに居る。……ティアと、一緒。」

「良い、お前も」

「嫌。」


 くるり、と巻き付く海藻のような海月らしい触腕。触腕同士を上手く絡めているようで、何をしてもそう簡単に外れる様子はない。まぁ、逃がしてくれる気はないのだろう。


「はぁ……。まぁこいつらはここでしか会えない奴らだからな。せいぜい構ってもらえ。」


 仕方なくひんやりとしたそれに包まれつつ、頬をそっと撫でてくるそれを少し握るような形で目を閉じる。せめて、眠っている間に海へ引き摺り込まれないようにだけを望んで。


 ったく……。


「じゃあ後はもう楽しんでこい。俺はここでゆっくりしてる。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ