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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章幕間:夏休み 相応しき器に想いを込めて
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第130話 その眩しさ故に、その影は見えにくくなっていく

「―――。……。……せんせ。」


 ……?


「せでぃ……るず……?」

「先生、起きれるか?」

「体調悪かったりしやん……?」

「何の、話だ……?」


 半ば意識がぼんやりとしてしまってはいるが、ただだからと言って体調が悪い訳では決してない。ここの居心地が良過ぎて、酷く眠いだけで。

 個人的にはこのままゆっくりしていたい物の、それを許してくれなさそうなこいつらを落ち着かせる為にもそっと体を起こすがジーラの姿はない。流石に約束を違えるような奴ではない事は十分に分かっている為、あるとしてもお手洗いか何かで席を外しているだけだろう。


 こいつらが来たから入れ替わった……とかな。


「……何時だ。」

「10時。」

「……結構だな。起こさなかったのか?」

「先生は疲れ易いって、ディール達に聞いた。ここはゆっくり休める場所だとも。……なら、先生が休んでる間は本当に起こさないといけない時以外は原則邪魔しない。」

「その癖、ここまで来た癖に。」

「き、気になるだろ。体調が。」

「私には師匠の寝顔を見たかったようにしか思えないんだけど?」

「し、静かにしつつ、10時になるまでここでカードゲームし、してたもん。」

「り、リシェラぐらいは味方をしてくれ!?」

「ったく……。相変わらず騒がしい奴め。」


 しかし、俺達がこの島に来てからの経過時間を考えると、そろそろあいつらも俺の存在に気付いて近海にまで接近している可能性はかなり高い。別にそんな義理はないが……たまにしか顔を見せないのだからそれも仕方ないのかもしれない。

 コンコンコンッ。


『グレイブ様、お目覚めでしょうか。』

「あぁ、入ってくれて良い。」

「おはようございます、グレイブ様。宜しければお食事の前にお水をどうぞ。」

「助かる。……ジーラは?」

「お電話中です。」

「そうか。」

「皆様のご朝食をご用意しましたので、此方に置いておきます。お水も少し多めにご用意しましたので、グレイブ様のお好きな時にお召し上がりください。」

「ありがとう。」

「……時に、グレイブ様。二日酔いや頭痛などはございませんか?」

「いや、疲れてるだけだ。悪いな。」

「いえ、お気になさらず。ただただ私が過保護なだけですので……それでは、失礼致します。」


 ……さて。


「お前らも朝食摂ってないのか。」

「先生と食べたかったから。」

「欲を言ったら俺が作りたかったんやけどなぁ。」

「み、皆で食べた方が美味しいから。」

「……恥ずかしいけど、私もなるべく師匠と一緒に過ごしたいから。」

「わ、私、私も師匠とい、一緒が良い!」

「……そうか。分かった分かった、じゃあさっさと食べてしまおう。」


 本当に、随分と懐かれたものだ。……こんな殺戮者に。


 忘れられがちではあるが、俺は殺戮者。必要に応じて戦時中、非戦時中も七漣星として粛清の限りを尽くすのが職責であるのだから嫌われ怖がられる事があっても、こうして懐かれる事というのは異例にも程がある。

 俺が初めて彼らに会った、シャルによって強制的に行う事になった自己紹介でも話した通り、俺は七漣星の中でも5本指に入る程に人を殺している。そして、きっとこれからもその記録を更新し続ける事になるだろう。

 ただ、大抵の者はそれについて碌に何も知らないからこそ手を出す。

 軍人という物はそれなりに好かれる事、憧れられる事が多くある物の、その実態はただの虐殺者の集団に過ぎない。あくまで上司等からの命令によって無罪になっているだけで、その全ては事実的な話をすると戦争犯罪者である事に他ならない。

 それでも、国家を。自分達の生活を護る為には防衛する力が必要になる。


 こいつらの俺に対する好感度は……いつまで続くんだろうな。

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