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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章幕間:夏休み 相応しき器に想いを込めて
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第129話 いつか、この時を乗り越えられる日を待ち望んで

「……夜、か。」

「……ティア。僕が見てるから大丈夫だよ。」

「……悪いが、眷獣(けんじゅう)を介して外を監視してくれ。窓すら……怖い。」

「うん、分かった。」


 我ながら随分な我儘だと思う物の、それでもあっさり聞いてくれるジーラには本当に頭が上がらない。でも、どうしても怖いのだから仕方ないのも事実だ。

 諸々の事情から普段はジーラと同じ部屋で眠る事なんてないが、今回はそうとも行かない。安全の為にも、安静の為にも、安心の為にも。……この時間、海の孤島にあるこの屋敷内で1人で寝るなんてまずありえない。

 流石にジーラに抱き着いて眠るなんて幼稚な事はしない。時間的にはまだ寝る時間でもないが、だからと言って外へ遊びに行く気力なんてない。


 ……全く。何で海ってのは


 コンコンコンッ。


「っ。」

「ティア、落ち着いて。僕が出てくるからお布団にでも包まってて。」

「……あぁ。」


 大人しく自分の布団の中に包まって。ベッドに横たわれば直ぐにでもジーラが使う予定だった枕を懐へとねじ込まれ、自然とそれを抱き込むような形でそれに身を寄せる。

 正直、今は何を言われても怯える気がする。怖くて、辛くて。……思い出してしまって。

 ルシウス達にはああ言ったが、俺が海を怖がる理由は別にある。確かにあれも怖いには怖いのだが、何方かと言えば驚きの方が強かったので恐怖とは言い難い。


 よば、ないでくれ。……俺はここに居たいんだ。


 種族が変わった所為か、聞きたくない音が。聞きたくない声がいつもよりも大きく、そして強くなったように感じる。俺の気も知らないで、遠くもなければ近くもない所からずっと俺の事を呼んでいるような気がする。

 幼い頃の俺は何も知らずにこの声に応えて、死よりも恐ろしい想いをした。陛下が見つけてくれるまで、ジーラ達が手を引いてくれるまで、俺の師匠ご夫妻が助けに来てくれるまで、ただただそこで怯えて何も出来なかった。


 あの、時よりも。あの時の俺よりも確実に強くなってるはずなのに、何でまだ


「ティア。」

「じ、ジーラ。ジーラ、部屋に来たのは」

「君の生徒達。……もう休んだって伝えて追い返したから、このまま休んじゃって。大丈夫、僕はティアが目覚めるまでこの部屋から立ち去る予定はないからさ?」

「……ちゃんと、傍に居ろ。」

「うん、傍に居る。ずっと、いつまでもティアの傍に。」

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