第123話 喧嘩を売る相手はちゃんと選んだ方が良いぞ?
「諸君、我々は今回の作戦拠点へ無事到着した。上陸せよー!!」
「いぇ〜ぇ〜い!!」
「し、島なんて初めて……!」
流石にと、一度動物達に別れを告げて荷物を先に置いてくる事で話が纏まった。
どうせ俺がこの島に来た時点で、遥か彼方。遥か海の底。はたまた別世界の海洋魔法生命体ですらも俺の事を感知したであろう事は分かり切っている。その内、どいつもこいつも俺を驚かしてくれるだろう。
どうやって感知してんのか、本当に謎だけど。
「グレイブ様、ルールゥ様。我々は本土へ戻りますが何かございましたらご遠慮なくいつ如何なる時であろうとご連絡下さいませ。」
「あぁ。諸君、ご苦労だった。」
「うん。ありがとう。今回は子供達も居たから、いつもと慣れなくてそれぞれ大変だっただろうにありがとうね。」
「いえ、お陰でとても良い物を見る事が出来ました。」
「……?」
「良い物って……動物達の事?」
「いえ。僭越ながら、グレイブ様はいつも他の七漣星の方々の陰に隠れて静かにされており、とてもではございませんがそっとしておいてほしいと言った雰囲気を纏っておられました。ですので今回、子供と乗船されると聞いた際には御気分を害してしまうのではと懸念しておりました。」
「元々ティア、子供嫌いだもんね。なのに今回はティアが言い出した訳だし。」
「俺じゃなくてイルグだ。……そもそも、俺ら七漣星の中で子供好きなんて2、3人くらいだろうが。」
「ですのでグレイブ様が彼らと会話をなされるお姿を見て、非常に安心致しました。……他の七漣星の方々が常日頃から仰られております通り、グレイブ様はよくご無理をされる所がありますので。」
「……。」
「じゃあ、また何もなければ2か月後に。」
「……気を付けてな。」
「はい。グレイブ様、ルールゥ様。良きご休暇を。」
様式美として船が水平線に呑まれてしまうまで敬礼をしてから、桟橋の中腹。鮫侵入防止用魔法網のギリギリ内部へと踏み入れる。
流石のルシウス達も島の内部の方へと進んだようで、内側のビーチで遊んでいるらしい。
ったく……。
「お前ら、遊ぶのは荷物を置いてからにしろ。」
「はぁ~い。リシェラ、行こ。」
「う、うん!」
「おい、そこの坊主共。お前らもさっさと荷物置いてこい。」
「俺達の時だけ酷くないか!?」
「お待ちしておりました、皆々様。」
先に到着していたのであろう、陛下が用意してくれた使用人。ただ陛下も色々奮発してくれたというか、多少無理をしてくださったのだろう。いや、もしかすると彼自身もその多忙な日常を何とか切り開いてくれたのだろう。
屋敷の奥からやってきたのは、彼の種族特有の細長い耳がよく目立つ白銀の短髪に。黄緑の優しい森の奥地の色の瞳を携えた男。何も知らなければかなり高齢の執事だと思う事だろう。
「セバルズか。しばらく世話になる。」
「ごめんね、忙しいのに。」
「何を仰られますか、グレイブ様。ルールゥ様。これでも俺は非常に楽しくしていたんですよ? ……っと。これは失礼を。学生の皆々様、初めまして。俺はこの島で皆様のお世話を仰せつかっております、セバルズと申します。本日は使用人代表として、ご挨拶に参りました。」
「親愛なる帝国の守り人にご挨拶申し上げます。全ては敬愛なる女王陛下のご慈悲とご慧眼に心からの感謝を以て。四大大公家が1つ、ヘイレ・ベーラヤノーチ=ディレラです。」
「し、親愛なる帝国の守り人にご挨拶申し上げます。全ては敬愛なる女王陛下のご慈悲とご慧眼に心からの感謝を以て。四大大公家が1つ、ウィータ・プシュケー=リアナです。」
「ルシェル・シルジェ=グランゲールです。」
「え、えっと……。」
あぁ、そうか。
「トルカ・シュレートンとセイズ・グラレダだ。」
「了解致しました。ヘイレ様。ウィータ様。グランゲール様。シュレートン様。グラレダ様ですね。本日より宜しくお願い致します。」
「……あの、セバルズさんはエルフの方、なんですか?」
「はい。王家の使用人達の統括を任されて早250年以上は経つ老骨でございます。」
「「「に、250年!!?」」」
〔り、リシェラ。エルフで250歳ってど、どれぐらいなの!?〕
〔え、えっと、えっと……!〕
……はぁ。
「セバルズ、あまりこいつらをからかわんでやってくれ。」
「ふふ、失礼致しました、皆様。何分、この島にまだ成年になられておらないお客様がいらっしゃるのは随分と久しぶりになるもので。」
「……? 俺らの他にも、まだ未成年の内にこの島に来た人が居はるんですか?」
「えぇ。そこにいらっしゃるグレイブ様。基、グレイブ嬢にございます。」
「……セバルズ。」
「えぇ、存じております。もうグレイブ嬢とはお呼び出来ない程に大人になっておられますから。」
……。
「言ったらお前の本当の年齢をばらす。」
「「「「「え!?」」」」」
「そ、それは……困りますな。大変失礼致しました、グレイブ様。では皆様、お気を取り直してお部屋のご案内をさせていただきますのでどうか此方へどうぞ。」