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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章幕間:夏休み 相応しき器に想いを込めて
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第121話 俺にも怖い物ぐらいある

「―――あ。ティア、そろそろ着いたみたいだよ。」

「……みたいだな。」


 相変わらず賢い動物達が勘付いたようで、煙草を吸っている関係から開けている窓の向こうからイルカの鳴く声。鯨の鳴く声に潮を噴く音と色々忙しない。

 魔導エンジンが運航モードになっていた事から膨張していた魔力も段々と落ち着き、今では船内のガス・電気・水道等の維持のみを行う省エネモードに切り替わっていく。

 色々と名残惜しいが別に残りは別荘で荷物をばらしてからでも良いだろう。むしろ、これから少なくとも2か月は生活するのだからそっちの方が良いのかもしれない。

 勿体ないが煙草は元々この部屋にあった灰皿で処理をして。グラスに半分程残っている酒を全て煽ったら元々荷物を一切開け出していなかったのもあり、傍に置いてあったキャリーバックを持つだけで準備は完了だ。


「良し。じゃあ行こっか。」

「酒瓶とグラスは……あのままで良いのか?」

「うん。乗組員(クルー)の皆にはもう伝えてあるから、後で取りに来てくれると思うよ。」

「そうか。」


 それにしても、ここに来るのは随分と久しぶりだ。

 ここ数年は何かと戦争や小競り合いが多く、そうでなければ何かしらの解析業務が多くて旅行に行く事が叶わなかった。まぁそれもある意味良い思い出となりうるのかもしれないが。

 甲板に出ればもう子供達はしっかりと準備を済ませて待機しており、俺達が来るのを今か今かと待っていたんだろう。


 別に先に降りてくれても良かったが。


「先生、寝て……ないな。煙草と酒の匂いがする。」

「未成年はまだどっちも駄目だ。」

「羨ましいとは思うが、やるとは言ってないだろ。」

「……先生。別に先生の自由やから好きにしたらええとは思うけど、ちょっとは体調にも気を遣った方がええと思うで?」

「それは俺に言ってるのか、ジーラに言ってるのかどっちだ?」

「両方に決まってるやん、そんなん。」

「だそうだ、ジーラ。」

「ティア、聞いてた? 両方にだって言ってたからそんな他人事みたいな態度しないの。」

「……好きにさせろ。」

「せ、せんせ。あの魔力の網みたいなのは……?」

「鮫侵入防止用魔法網と黒曜石製の海壁。」

「鮫はともかく、海壁……?」

「ティア、実は高い所も駄目でさ? 海のふか~い所が見えちゃうのも駄目なんだ。」

「……うるさいな、色々と。」

「な、何か、先生って聞けば聞く程海と相性悪いねんな。」

「最初からそう言ってるだろうに……。」

「部屋も絶対1階の、あの海壁しか見えない窓の部屋にしか泊まらないからね。」

「……駄目なんだよ、色々と。」

「別に責めてる訳じゃないよ?」

「じゃあ過剰に突っ込まないでくれ。」

「こ、ここが……師匠達の別荘の1つ。し、師匠! 師匠はこの別荘に誰かを連れてきた事ってありますの!?」


 ……?


「七漣星を除くなら陛下と……。……いや、陛下ぐらいか。」

「……! じゃあ、四大大公家の中でも私とリシェラが初めてなの!?」

「まぁ、そうなるな。」

「っ……! リシェラ、乗り込むわよ!!」

「あ、ちょ、でぃ、ディール!」

「鮫侵入防止魔法網より向こうには行くなよ。」

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