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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章幕間:夏休み 相応しき器に想いを込めて
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第114話 慣れてしまえばそれも日常

「それで? 先生、色んな宝石があるけど……どうするん?」

「言っただろう、鎮魂の(レクイエム・)夜想曲(ノクターン)の為、天然石を買いに行くと。ここから好きに1種類宝石を選んで、それぞれ2個レジに持っていけ。」


 何でもかんでも横道に逸れてしまう彼らを何とか元路線に戻したは良いが、当然ながら脱線してしまっていた所為で何も本題の用意が進んでいない。

 元より暑さに慣れていないのもあるが、何より俺はあんまり夏その物が好きじゃない。俺が故郷を失うずっと前から、常々。


 夏は何かと良くない事が起こる。……さっさと生活空間の中に引っ込んでしまいたい。


「それで? 夜煌華はどうするの?」

「黒曜石。」

「今回は夜煌石とかも用意してあるわよ?」

「…………夜煌石で。」

「承りました。」

「久しぶりに入荷して良かったわね、師匠。」

「まぁ……そうだな。それで、お前は選んだのか。」

「えぇ勿論! ルビーを選んだの。どう? 似合う?」

「あぁ、お前の魔力の性質上も。性格上もよく似合う。」

「師匠から見ても私ってそんなに情熱的?」

「夏の太陽みたいにな。」

「ちなみに! リシェラはエメラルド選んでたわよ。」

「あぁよく似合う。」


 ディールとリシェラに関しては全く以て何も心配していない。いや、心配する必要すらないと言う方が正しい。

 それはまだこの子らが二桁にもいかないうちから見てきているというのも勿論あるだろうが、四大大公家の跡取りとして生まれたのもあって毎年更新される最新のカリキュラムを見事にこなしているこの子達に対してわざわざ意識改革や。それに伴う思考訓練等を行う必要がないからというのも昔からイメージに対して口うるさく言っていたぐらいだ。今更話題に出す必要すらもない。


 あいつらも懸念してはいたが……今の所は心配なさそうだな。


 確かに授業を持ち始めたとはいえど、それでもまだ1学期。教える事は多くあるし、懸念する事も警戒する事もそれなりにあると考えていたあの3人組も今回はまともだったらしい。

 遠目で見ている限り、ルシウスはオニキスを。トルニアはチリア輝石を。セディルズはガーデン水晶を選んでは持ってきてくれている。

 初めてなのもあって多少時間がかかるのではと懸念したが……早く済んで何よりだ。


「じゃあ全部で第Ⅰ級回復ポーション6本で良いわよ。」

「ん。」

「……えぇ、確かに。これからも御贔屓に。」

「心配せずとも天然石はよっぽどの事情がない限りここ以外で買わん。」

「あら嬉しい。」

「金……じゃないのか?」

「人に因るわね。ただ、夜煌華の場合はポーションで手打ちしてるのよ。」

「ここは老舗だって言っただろ。それだけ長い歴史を持つ店の大半は常連客に限り、物々交換とかで取引する事もあるのさ。まぁ、俺の場合はそういう意味じゃないんだろうけど。」

「私も聞いた話でしかないけど、うちの家系の二代目当主が夜煌華のポーションで命を救われたらしくって。それ以来、高純度。高性能。即効性がある夜煌華のポーションを数個保管しておきたいっていうのは勿論だけど、それ以上に市場へ流すのもうちの役目なの。」

「いつかは教えるが、俺は魔法以外にも錬金術が得意なんでな。……ただ、民間に俺が作った錬金術に因る生成品は色々と事情があって直接卸せない。だからこいつを介して色んな法律に引っ掛からないよう上手く補佐してもらった上で。数量限定で流してもらってるんだよ。」

「その様子だと皆も知ってるだろうけど、夜煌華は大変忙しいお役職だからねぇ。私を介してやり取りする一番の理由は大量生産が難しいというか……それをしてる暇がないからというか。」

「安定して作れる訳じゃないからな……。俺も少しはこれでも作成頻度や量をあげてはいるが、限界はある。それに、俺が作るポーションは特に効力が強過ぎるから販売先にも気を配らなければならない。」

「その適任が私って訳!」

「……何か危ない仕事してると思ってたけど、ちゃんとそういう理由があったんか。」

「それより危険な仕事をしてる俺に、こんなの危険なうちに入らないっての。」

「でも凄いわよね~。適当に作っても第Ⅲ級ポーションを作れるなんてとんでもない事よ?」

「……適当。」

「それが凄いって言ってるの。」

「……り、しぇら。」

「ど、どうしたの?」

「その……悪い。まだ薬学は習ってないんだ。その第Ⅰ級ポーション、第Ⅲ級ポーションって言うのは?」

「ぽ、ポーションに限らず、ど、どれにも等級があって、基本的には第Ⅰ級品質から第Ⅹ級品質まであるの。す、数字が小さければ小さい程にこ、高価で学生は大体第Ⅷ級品質が大体。ふ、普通の先生とかでも第Ⅵ級品質。け、研究者と、とか、その手の専門職の人でもだ、第Ⅳ級品質がげ、限界……なの。」

「え、そうなのか!?」

「じゃ、じゃあマジで先生って何者級って事……?」

「変な単語を軽々しく作るな。」

「第Ⅲ級品質は聖職者。第Ⅱ級品質は長命のドラゴンとかエルフ、それこそ魔女とかじゃないと作れない代物ね。第Ⅰ級品質なんて、妖精や精霊が作ってるような物よ。」

「悪いがそういうのをあっさり作れてしまう俺としては、な~んのありがたみもなければ自覚もねぇよ。俺にはこれが当たり前なんでな。」

「でしょうねぇ~。そんな事、聞かなくても分かってるわよ。ほんっと、天才っていうのは羨ましいわね。」

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