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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章幕間:夏休み 相応しき器に想いを込めて
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第111話 どちらも大切に

「「「ただいま~!!」」」

「先生、準備は出来てるか!?」

「あぁ出来てる出来てる。まずは日の近い七夕の準備からだ、笹を飾ってくるからお前らは飾りでもそこの折り紙で作ってろ。」

「折り紙。意外と原始的って言うか、アナログなんやな。」


 分かってはいたが帰ってきてそうそうに喧しいガキ共を放置し、部屋の端に置いておいた笹を担いで廊下に出る。

 良い訳でもないが悪い訳でもない……と言うよりは、単に多少忌避されている傾向のあるディールが一方的に悪いのだろうが、本日は3人だけで帰ってきたらしい。

 しかし、何も悪い事ばかりではない。

 幼少期から俺達七漣星がしっかりと鍛えて育ててきたのもあり、ディールの剣術は実戦レベル。それもあり、魔法学以外にも様々な学科のあるシャレル魔導学校ではこのネビュレイラハウロ帝国で時々行われる、学生限定で参加する事の許された実技大会のような物がある。

 確か、記憶ではディールはそれへの出場権を持っていたはず。その練習などで忙しくしているのかもしれない。

 その実力は正しく認めているルシウス達も時々はディールに剣術を教わっているようで、仲の良さはそれなりだと思われる。

 腕自体もそれなりに上がってきているようで、俺達が剣術方面までカバーするのは後で良いだろう。少なくとも、ディールとまともに良い勝負をするか。打ち負かすぐらいの強さになるまでは放置していても良いだろう。


 大会……な。いつその手の話をあいつらから持ち出されるか分からんが……まぁ、持ち出されるまでは放置で良いだろうな。


 トルニアとセディルズの保護者ではあるが、だからと言って変に干渉するつもりはない。あいつらに必要なのは単に、安定して過ごせる家と環境。そして、まともに学園生活を行えるだけの金銭があれば十分だろう。

 後は、あいつらがどうしたいかに委ねる。意見を問われれば応えてやるし、協力を乞われれば応えてやる。寄り添うというのは……そういう事であるはずだ。


「……ルシウスは帰らなくて良いのか?」


 家が他にないトルニアとセディルズはともかく、ルシウスは両親にも環境にも恵まれていたはず。

 別にどっちかを大事にしろ、どっちを優先しろと言うつもりはないがそれでも多少は顔を出せとは思う。まぁ、それも俺が言う事ではないのだろうが。


 それこそジーラ辺りがどうこう言ってくるだろうし、何よりご両親の方からも色々言ってくるだろ。俺が気にする事じゃぁない。


「先生~!!」

「……げ。」

「げ、なんて酷いな。可愛い可愛い先生の生徒が来たぞ?」

「可愛い、ねぇ。生意気の間違いじゃないのか?」

「ぐ、ぐぬぬ……。」


 丁度良い機会……か。


「それで、ルシウス。少し気になったんだが。」

「あぁ、何だ。両親の許可なら取らなくても良いと思うぞ?」

「何の話だ。……はぁ。俺が聞いてるのは、お前がその両親に時々顔は出してるのか? お前がここで過ごす事に対し、何か言いたい事がある訳ではないがそれでも少しは顔を出せ。……お前も、親に。環境に恵まれるという事がどれだけ贅沢な物なのか、あの2人を見て。共に居て学んだだろう。」

「何だ、そういう事か。それなら問題ないぞ! 俺もそれなりに顔は出してるからな!」

「……そうか。なら良いんだ。」

「それはそうと先生、物はついでだが……両親が先生に会いたがってたぞ。」


 あー……。


「……何度でも言うぞ、ルシウス。俺は、俺達はただの非常勤教師だ。……会うなら俺じゃなくてシャルだ。あいつに話を通せ。」

「ぐぬぬ……。」

「それで? ここへ何しに?」

「飾りの準備が出来たと言いに来たんだ。次はどうするんだ?」

「そうだな……。とりあえず七夕の準備は終わりだ。後はまぁ適当に、お前達がやりたい時に風魔法や浮遊魔法でも使ってそこの笹にでも飾っておけ。」

「先生はやらないのか?」

「あぁ。」

「そういえば、あそこには短冊らしき物が見当たらなかったが……良いのか?」

「短冊は本来、前日に書いて日付の変わった深夜に飾り付けるのが正しいやり方だ。もう少し待ってからにしろ。」

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