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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章:一年生第一学期 魔法の深淵と神髄に触れる資格は
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第108話 全ては彼らを護り、適切な距離を保つ為に

 引っ越しも終わり、今日はようやっと外出しなくて済む事になった。

 あまり元気のなかったトルニアも。精神的に激しく披露していたセディルズもかなり安定したようで、今ではトルニアが作った料理を食べている。

 最初こそは色々と衝突のあったディールとリシェラともかなり打ち解けたようで、完全に打ち解けた訳ではないが今はそれなりに打ち解けたらしい。


「せ、せんせ。」

「何だ。」

「せんせに聞きたい事があって。」

「うん。」

「精霊って、見るのも駄目……なんですか?」

「……物に因る。中には視るだけで牙を剥く精霊も居れば、むしろ視えるのが珍しくて “遊んでほしい” と声を掛けてくる類も居る。ただまぁ精霊と俺達の時間の流れも体力の多さもかなり違うからな。俺はあれだが……お前達のようなただの人間じゃあ遊んでいる間に体力が尽きて倒れてしまうのがオチだろうな。」

「俺も最後に会ったん家出る前やから……。会えるんやったらちゃんと、話したい。」

「俺も是非、会ってみたい。何とかならないか、先生。」

「大人しく4月を待てば良いんじゃない?わざわざ師匠の手を煩わせる程の事ではないわよ。」

「う、うん。4月になって、て、適性を見てからでも良いと思うよ。」

「4月……?」

晶澪祭(せいれいさい)。毎年4月に行われる重要な祭事の1つでな。精霊を敬い、日頃の感謝を告げる祭りでもあり、新たなる年を共に祝う祭り。精霊達にも人間のように新年の概念があってだな、彼らは命を脅かす冬が終わった春を新年として定めている。その観点から、晶澪祭になると彼らの生活する世界層と俺達の生活する世界層が一気に近付いてな。“素質のある者には” 街の空を溢れ返っている程に舞い、楽し気に踊る精霊達が視える……らしい。」

「らしい?」

「俺は生まれつき視えてるからな。普段視えない奴の気持ちなんぞ分からん。」


 今だって精霊達は楽しそうに、幸せそうに踊っている。

 特につい先程、それなりに辛い想いをしたトルニアとセディルズの周りには多種多様な精霊達がまるで彼らを祝福するかのように留まっている。

 頭の上に乗ったり。肩の上に乗ったり。優しく頭を撫でていたりとするが、そのどれもに気付けていないからこその台詞がそれなのだろう。


 何とも、悲しい限りだな。


 そもそも、俺は精霊達を始めとする多くの魔法生命体が視えたからこそこうして生きている。もし仮に俺が生まれつき精霊達を視る事の出来ない子供であればあの戦争で生き残る事など叶わなかった。

 当然ながら、あの時を生き残っていなければ。俺は陛下達に会う事もなかっただろうし、こうして息をしている事もなかっただろう。


「……せんせ。」

「行きたければ好きに行ってこい。生憎、俺はそれに着いていけるかどうかの約束が出来る程、暇じゃないんでな。」

「じゃあ、お時間が合ったら……行ってくれますか?」

「時間が合ったら、な。」

「先生。その素質とやらを鍛える方法はないのか?」

「ない。これは先天性の物だ、生まれつき精霊との結びつきが強くなければ視界に納める事も叶わん。……俺みたいに生まれ変われば可能なのかもしれないが、まぁそれも所詮は可能性の話。断言出来ない状況下で試すような物でもないだろう。そもそも、当事者たる俺も自分以外で成功例を聞いた事がないぐらいだ、あまりにも危険度が高過ぎる。」

「その日無理やったら……やっぱ、諦めなあかんの?」

「国際法及び帝国法に違反したくなければな。後は……そうだな。精霊に会う前に、色々と勉強しておけ。」

「勉強?」

「あぁ。俺達でもそうだが原則、種族が違えば価値観も文化も思想も何もかもが違う。俺達にとって当たり前の事も、彼らからしてみれば想像を絶するような極悪非道な行為である可能性も捨てきれない。……どうせ時間は山程あるし、資料も呆れる程にある。色々と努力してみるんだな。」

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