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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章:一年生第一学期 魔法の深淵と神髄に触れる資格は
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第8話 フラッシュバックは憑いてくる

 遠くで響く雷鳴が、大地の脈動のように唸る。魔法で操られたそれは、敵陣へと容赦なく降り注ぎ、多くの命を散らしていく。轟く雷の音は容赦がなく、あらゆる物を拒絶するように粉砕していく。

 ぼんやりとした意識の中、頭から腰にかけて冷たい雨がざーざーと降り注いでいるのが感じられる。本来であれば冷たくて不快なはずのその感覚も、今ではもう何も感じない。寒さも、面倒さも、不愉快さも、何もかも何処かに


「グレイブ・ブラッディル=ルティアッ!!」

「い、るぐ……?」

「……大丈夫か。随分と長い間ボーっとしてたぞ。」

「…………ぁ。……ぁ、れ。敵、は……?」

「半数、以上……ティア、が倒した、よ。」


 顔を上げると、視界に否応なく入り込んでくる光景。かつてゾンビだったはずのものが、今や肉塊となり、臓腑を撒き散らして転がっている。雷雨によって地面はさらに汚され、混ざり合う血と泥でその色は見分けがつかない。


 ゾンビ。……ゾンビ。


 早く殺さなければと、1体でも撃ち漏れがあれば困ると体を起こそうとするもそれはどうやらギルガ達にとって気に入らない事のようで、軽々と抱き上げられたかと思うとそのままいつの間にやら直ぐ傍に止めていたらしい装甲車の中へと運び込まれ、座席へと降ろされる。

 何故か酷く意識が朦朧として、時々引き起こす魔力消費が激しくて眩暈を起こした時のような、そんな感じだ。だが、そこまで魔力を消費した覚えはない。それでも彼らの表情は明らかに心配そうだった。

 風魔法の類で髪や服を乾かされ、長く雨に打たれ続けていたのかそれを懸念するように毛布で包まれ、安心させるように。落ち着かせるようにぽん、ぽんと添えられる手の温かさと安定した規則的なテンポが心地の良い睡魔を誘う。


「……帰ったら陛下に相談しよう。お茶会もして、風呂に入って温まって、気持ちが落ち着いたら休もう。……色々あって流石のティアも疲れたんだ。」

「大方、今日は結構な大雨だからな。……自然と昔を思い出して、無意識に体が理解する事を拒んでるんだ。もう無理をするな、ティア。……とりあえず今は休むんだ。」

「大丈夫……大丈夫、だか、ら。傍に居る、よ。」

「ほら、傍に居てやるから休め。……大丈夫だから。」


 視界が、滲むように揺らいでいく。泡沫のように、すべてがぼやけて、そして溶けていった。


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