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夜に煌めく炉は蒼銀で  作者: 夜櫻 雅織
第一章:一年生第一学期 魔法の深淵と神髄に触れる資格は
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第98話 時は金なり。知識は宝なり

「……うん。」

「あ、全部確認した?」

「確認したにはしたんだが、それに差し当たってシャルに1つ文句を言いたい。」

「え”。な、何……?」

「こういうのは現場じゃなくて前以てデータ寄越しとけよ。」

「そ、それは素直にごめんなさい。……それでど、どう? もっと授業に関する事で、ね?」


 授業に関する事……なぁ。


「正直な話、ルシウス達みたいにほぼ実力だけで高得点を出してる生徒が居るんだからこのままでも良いんじゃねぇかって切に思うんだが。」

「貴方が自分で言ってるように、この子達は独学でそれだけの成績を叩き出してくれてるのよ。平均じゃないんだから問題でしょ。」

「……お前、それを実力主義の世界で生きてる俺に言うのか。」

「そ、れはそう……だけど。それでもほら、ティアの本職環境でも慈悲はあるんじゃないの?」

「ない。」

「え。」

「ない。着いてこれないなら帝国民に戻すだけだ。弱い奴も、着いてこれない奴も、最終的には変な感情論で脳をハックされて周りを引っ張るのがオチだ。そういう奴はさっさと解雇して野に戻すのが一番良い。大体、肉壁ですら敵を使えば良いからな。わざわざ言う事の聴かん肉の塊をいつまでも傍に置いておく価値がない。」

「う、うぐぐ……。」

「で、ですがルーベル先生。それでも一番成績の良い子達を平均とするのはいささか問題なのでは……?」

「それには肯定するが、結局は俺の意見を聞くだけなんだから時間の無駄だとも思う。何より、ここは俺の学校じゃなくてお前らの学校だ。こうも部外者にあーだこーだと分かったような口を利かれて、つい最近入ったばかりの癖に教師のきょの字も知らんような奴にでかい態度取られて、偉そうな口を利かれて不快とも思わない方が個人的には気になりますが。不快にならないので?」

「はい。……虚しい事に、ルーベル先生の実力は以前の決闘で見せていただいておりますから。ルーベル先生の言葉にはそれ相応の重さが伴う物であり、無責任や無知から来る物ではない事は十分に分かっておりますから。」

「……それでも嫌だと思う奴は一定数居ると思うのですが。」

「その手の輩にはそのまま好きに思わせていれば宜しいかと。見る目もなければ学習する気もないんですよ、そういう人達は。」


 意外に結構な事を言うな、この教師。


「ルーベル先生、どうかそう仰らないでください。貴方は腕利きの魔法師でしょう? 我々のように大学を出て、教員免許を取っただけの未熟者とは格が違うじゃないですか。勿論、我々だって教員としての……なん、でしょう。多少の誇りというか、自信のような物があるにはあります。でも我々はあくまでデモンストレーションのような物。ルーベル先生のように、実践向きの教師なんてそれこそ何らかの事情で退役された方でもない限りは教科書通り、書籍通りの教師にしかなれません。魔法という非常に実践的な物を教材として扱う中で、ルーベル先生のように実践向きの方には我々教師などおままごとのような物でしょう。」

「……そうも悲観されなくとも。それでもこの帝国の未来の為、若手を鍛えるという役目を立派に果たしておられるじゃないですか。そして、その許可を陛下の名の元に保証されているからこそ手元にあるのがその教員免許。……あの元体育教員に関しては苦言以外に垂れる物などございませんが、一応この帝国においてどの国家資格も更新制。医者であろうと、薬剤師であろうと、軍人であろうと、教師であろうと定期的にその資格を更新しなければならないのですからあなた方が立派な公務員である事は十分証明出来ているかと思いますが。」


 何より、例の元体育教師の問題もあってこの学校に所属する教職員の全員、俺達隠密機動に因るがさ入れが入っている。あくまで秘密裏に行われた物の、それでも今現在この学園に所属している教職員は皆、前科もなければ身内や友人間にそのような危険人物が居ない事も把握済みだ。


 それにあの元体育教師は数年分の教員免許更新試験を軽んじていた。ちゃんと毎年更新してるあんたらと比べてやるのは可哀想で仕方ないと思うがな、流石に。


「それに、当然ながら俺にだって限界はあります。現に俺は5名の生徒にしか授業を教えておりませんし、これからに関しても原則的に増やすつもりはありません。あんまりにも多ければ本業に差し支えますし、何より俺がやりたくない。確かに実践向きであるという点に関しては肯定致しますが、仕事で使う技術は誇れても教鞭を執るのは初めてです。……ここの学校長が無理を言うから慌てて取った教員免許にどれだけの価値があるのか、俺には分かりかねます。」

「でもねティア、それもそれで結構凄い事なのよ?ちゃんと分かってる?」

「分かってない、何が。」

「教員免許なんて、気軽に取れる物じゃないって言ってるの。私なんて教員免許を取る為に数年を要したし、ディアルだってそれなりに苦労したわ。それなのに貴方、たった一晩勉強しただけで一発合格したじゃない。」

「「「「え!!? 一晩で!!?」」」」

「……………………………………………………………………。」

「何とか言いなさいよ。」

「……………… “取らなければならない” としか考えてなかったから、あまり実感がない。が、事実だけ並べれば正論故に反論のしようがなくて適切な言葉を探してる。」

「良いわよ別に、探さなくて。どうせ見つからないから。まぁでもそれぐらい簡単に取れちゃうって事は元々ティアにはそういう才能もあったって事よ。実際、生徒達にも好かれてる訳だし。」

「こいつら限定でな。」

「何を言うかと思えば。聞いたわよ、時々他の科目の授業も」

「さて早速授業学研究会……だったか? まぁ軽く始めましょうか。」

「何で逃げるのよ。」

「無駄話は嫌いなんだ。それでまぁ……語学から。」

「はい! どうぞご遠慮なく、何から何までお話しください、ルーベル主任。聞いた話によると、学年主任は我々教職員よりも遥かに年上だとか。実力の事もございます、どうか我々に気を遣わず、ルーベル主任の楽なように進めていただければ幸いです。」


 俺が進める事は確定なんだな。

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