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俺が銀髪美少女に幸せにされるまで  作者: 結城ナツメ
銀髪美少女は俺の胃袋から幸せにする
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恋は女の子を変える

友奈視点

 夢を見ました。去年の入学式の時の夢です。

 私は登校中に、五人の怖い男の人たちに囲まれてしまっていました。


 私は日本人の父とロシア人の母から産まれたハーフで、よく周りから可愛いと褒められて育ちました。

 一人の女の子としては、そう言われるのは凄く嬉しいです。友達もいっぱい出来て、幸せの日々を送れてたと思います。


 ですが世の中、良いことばかりではないということを、この日に知ることになったのです。


「嬢ちゃん可愛いねぇ?お兄さんたちと一緒に遊ばない?」

「俺たち今ちょー暇でさぁ?遊び相手を探してたんだよね~」

「大丈夫大丈夫。何も変なことしないからさ。ちょ~っと綺麗なお城で遊ぶだけだからさ」


 いきなり声をかけてきた男の人たちは、私に卑しい目を向けながらそう言います。

 可愛い可愛いと、周りからもてはやされてきたら、自分の容姿が整っていることは自覚します。

 ですがまさか、こんなことになるなんて思いもよりませんでした。


 同じ可愛いという言葉なのに、明らかに男の人たちが私に向ける目はおかしかったです。初めて人の視線を怖いと感じました。


「ほぉら?なんも怖いことしないからさ~。あっちの通りに一緒に行こうぜ?」

「い、いや……来ないでください…」


「大丈夫大丈夫。なんもしないから。ちょっと一緒に遊んでほしいだけだって」

「嫌です!だ、誰か!?助けてください!」


 私は遠巻きにこちらを見ている人たちに、助けを求めました。

 ですが……道行く人たちは目を逸らして、見て見ぬふりをしてしまいました。


 中には同じ学校の制服を着た人たちもいたのに、巻き込まれたくないのか、誰も手を差し伸べてくれません。


「ほら、もういい加減観念して、お兄さんたちと一緒に遊ぼうって……なぁ!?」

「い、いや!離してください!」


 五人の中でも特に体格のいい人が、苛立ちから声を荒げて、私の腕を掴んで来ました。

 私は必死にもがきますが、ひ弱な私の力ではどうしようもなく、どんどん引っ張られてしまいます。


 バキッ!


 ですがその時でした。横から突然、男の人に向かって拳が飛んできたのは。


「あっ……がが…」


 男の人はその一撃で白目を向いて、倒れてしまいました。おかげで解放された私の目に、同じ学校の制服を着た一人の男の子の背中が映りました。


「テメェらよ…。なに白昼堂々、か弱い女を無理矢理ラブホに連れ込もうとしてんだ?常識がないにも程があんだろ」


 残念ながら、そこで私の夢は終わってしまいました。


 ですがこれは実際にあったこと。なので私は、あの男の子のことをよく憶えています。

 私のことを身を挺して守ってくれた……三澄乙葉さんのことを。


―――――――――――――――――――――――――――


 ちょっと嫌で、だけどとても素敵な夢から醒めた私は、朝早くから台所に立っていました。


「サクサクした食べ物といえば……やはり唐揚げですね!」


 昨日、三澄さんに聞いた好きな食べ物。

 サクサクで美味しいものと言えば、唐揚げが真っ先に思い付きました!


 三澄さんは食感が良い物の方が好きと言っていましたので、唐揚げの下にはキャベツの千切りとレタスを敷きましょう。

 あとサクサクやパリパリとは違いますが、ミニトマトも。三澄さんが食感重視という変わった趣向で食べ物を選んでるとするなら、きっとプチッとした食感も好きなはず。

 あ!パリパリで思い出しました!三澄さんはパリッとした食感のウィンナーもお好きなのではないでしょうか!ウィンナーは確か、茹でるのが一番パリッとした食感になると、前にテレビで見ました。


 それにそれに、天ぷらだってサクサクしてて美味しいですもんね?……あぁ~……どうしましょう?今日()唐揚げにするつもりですが、いざこうやって台所に立つと色々と食べていただきたい物が思いついてしまいます…。


「……なぁにニヤニヤしてんだ?友奈」

「はっ!?」


 つい三澄さんが私の手料理を食べている姿を想像していたら、横から声をかけられました。

 そこにいたのは、寝起きでボサボサの髪をくしで整えながら、寝ぼけまなこでこちらを見つめていたお父さんでした。


「お、おはようございます、お父さん…。ニヤニヤだなんて、そんな顔してましたか?」

「ああ。まるでジーナが俺の弁当を作ってる時みたいな顔してたぞ。……あ。髪濡らしてなかった…」


 ジーナというのはお母さんの名前です。お母さんは私が料理を出来るようになってからは、朝とお弁当は私に任せて、お昼まで眠るようになりました。

 主な理由は深夜アニメをタイムリーで見てるからですね…。そうだと言うのに変わらぬ美貌を保てるお母さんには素直に尊敬します。


「う~……もしそうなら、血は争えないということですよね?」

「ふぁ~……なるほど、そういうことね。ようやく去年助けてくれたっていう初恋の男の子に近付けたのか」

「……はい」


 欠伸をしながら聞いてくるお父さんに、正直に答えます。


 そう。私が三澄さんと仲良くなりたいのは、去年の入学式の日に悪質なナンパから助けてくれた初恋の相手だからです。

 まるでお母さんが持っている少女漫画やラノベのヒーローのようでした。しかもツンデレな性格をしているので、そのまま物語の世界から飛び出して来たかのような人です。

 最初は『私を助けてくれたヒーローのような人』という認識でしたが、彼が朝早くに登校して花壇の手入れや水やりをしていたり、重い物を運んでいる女の子を手伝ったりする姿を見ていたら……いつの間にか、好きになっちゃってました…。


 最初は好きという感情が理解できず、お母さんとお父さんに相談した時は、お母さんはお腹を抱えながら笑って、お父さんはお母さんに「親子だね~…」とジト目を向けながらしみじみと呟いてました。


「それで、朝っぱらから気合い入れて弁当を作ってるのか?」

「はい…」

「その少年の胃袋を掴もうって魂胆か?」

「はい…」

「……あはは。ジーナといい友奈といい、やることは一緒なんだな」


 お父さんの問い詰めに、顔を赤くしながら答えていると、お父さんは思い出すように笑いながらそう言いました。


「お母さんも、お父さんの胃袋から捕まえたんですか?」

「つかまえっ……まぁ、そうなんだろうな。なんかナンパから助けてやったら妙に懐かれて、それでしばらく一緒に遊んでる内に、いつの間にか手料理を食べさせられてて……あれ?もしかして俺、ずっとアイツの掌の上だった?」


 なるほど。お母さんもお父さんの胃袋から捕まえていたんですね。しかも私と同じような形で、お父さんに恋したみたいです。

 確かにこれは「親子だね~…」とお父さんも言う訳です。


 ここまで似たような境遇ならば、きっと私も三澄さんのことを捕まえることだって出来るはずです!

 声をかけようと思っても、ずっと尻込みしていた私とはおさらばです!さようなら、昨日の私。おはようございます、新しい私…。


「絶対に、三澄さんを捕まえてみせます!」

「あぁ~……あまり積極的になりすぎるなよ?飯が美味いって理由だけで結婚した俺が珍しいんだから。たぶん」

「待っててください三澄さん!必ず貴方に美味しいお弁当をお届けします!」

「聞いちゃいねぇ…。好きにやらせとくか」


 その後、お父さんに男の子が好きそうな食べ物を聞きながら、お弁当作りに勤しみました。

どこの馬の骨とも知らん奴に娘はやらん!なんて気持ちは一切ない父親です。


面白い、これからの展開に期待しているという方は、ブクマ登録と高評価、いいねと感想をよろしくお願いいたします。

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