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俺が銀髪美少女に幸せにされるまで  作者: 結城ナツメ
銀髪美少女は俺の胃袋から幸せにする
35/40

結局愛が重くなるポンコツ銀髪美少女

二話分投稿。

 翌日。学校が終わり、只今私は一人で三澄さんのお家へ向かっています。

 昨晩のメッセージは、LITIというアプリからの通知でした。送ってきたお相手は、なんと三澄さんでした。

 正確には兵頭さんからでしたが、彼経由で三澄さんから、今日の放課後にもう一度家に来てほしい。という連絡があったのです。


「まさか三澄さんから連絡が来るとは思いませんでした」


 しかも昨日の今日です…。

 三澄さんは普段素っ気ない態度を取りますが、凄く優しい人です。ですから、昨日思い詰めていた私を慰めようとしているのでは?とも考えましたが、流石にそれは都合の良すぎる考えです。

 なので、本日は少しお叱りを受ける覚悟で訪問させて頂きます。恐らく、かなりのデリケートゾーンに踏み込んでしまったでしょうし…。


 本当は小鳥遊さんも来てほしかったそうですが、本日は他にご予定があったみたいで、私一人での訪問です。

 少し心細いですが、覚悟を決めようと思います…。振られてしまう覚悟を……


「はっ!いけません!ネガティブになっては…。お父さんも言っていたではないですか。ちゃんと話し合えと」


 そうです!ここで変に後ろ向きになってはいけません!

 三澄さんのことになると色々と考え過ぎる私とは、おさらばするんです!


 ……しかし、お話って何をすればよろしいんでしょうか?

 これは後ろ向きとかではなく、純粋にわからないことです。昨日のようなデリケートな問題はもちろんのこと、下手なことを聞いてはまた三澄さんを傷付けかねません。


 そのように考え事をしていると、自分でも気付かずにブツブツと独り言を呟いていました。


「ブツブツブツブツ…」

「……………?」


 やはりまずは、もう一度謝ることですよね。三澄さんは気にするなと言いますが、やはり傷付けたことには変わりないですし。

 その後は……もし三澄さんがまだ許してくれるなら、彼の為にお弁当を作りたいです。なので何が食べたいか聞いてみるのもありだと思います。


「まぁ、味覚戻ったしな。色んなもん食いたいとは思うけど」


 そうですよね。三澄さんが食感の良い物が好きと言っていたのは、味覚障害が原因だったのですから。

 でしたら、今度はハンバーグや生姜焼きもよろしいかもしれませんね。この間、お母さんがノリで買って来た高価な保温機能付きのお弁当箱がございますし、油が固まってしまうということもないです。


「ふーん。まぁ作ってくれるってのは凄いありがたいし、頼みたいくらいだったから嬉しいけどさ。……で、どこまで行くんだこれ?」

「へっ?」


 そこでようやく、私は誰かと会話していたことに気付きます。

 横を見てみると、そこには私の想い人である三澄さんがいました。


「えっと……いつから?」

「『もう一度謝ることですよね~』とかから、一緒にいたけど。回覧板を出しに外に出たら、なんか神妙な面持ちで目の前を通り過ぎてくからさ。思わず一緒に歩ったよ。ちなみに俺の家から五十メートルくらい離れたぞ?」

「~~~ッ!?」


 瞬間、恥ずかしさで顔を真っ赤に染めました。


――――――――――――――――――――――――


「お、お邪魔します…」

「邪魔されま~す」


 なんということでしょうか!いきなり醜態を晒してしまいましたっ!

 まさか考え事が口に出ていただなんて……やはり三澄さんのことになると、ポンコツ女になってしまいます!

 これが昔のお母さんそのものだなんて、血は恐ろしいですね…。※たぶん関係ない。


「悪かったな、いきなり呼び出したりなんかして。適当に座っててくれ。飲み物出すから。オレンジとコーヒー、どっちがいい?」

「お構いなくっ!水道水で大丈夫ですので!」

「そういう訳にもいかんだろ。お客様なんだから。じゃあオレンジでいいか?」

「えっと……それじゃあ、それでお願いいたします…」


 はぁ~。ダメです、完全に出鼻を挫きました!

 完全に変な女だと思われています…。


「それにしても、天津川って変だよな?」


 やっぱりぃ!

 うぅ、やはり私もお母さんと同じ変人なのでしょうか…。


「たぶん、こんな俺に変わらず接してくれる奴って、そうそういないだろうしさ。それで言ったら、兵頭と小鳥遊もか。類は友を呼ぶって、本当なんだな」

「えっ?それって、どういう…」


 三澄さんはオレンジジュースを私の前に置いて、私の前に座ります。

 彼は深呼吸一つした後、先ほどの言葉について説明しました。


「だってさ。お前も、小鳥遊も……俺から酷い言葉を浴びせられたはずだろ?しかも冗談とか、そういう類じゃなくて……ガチで言ったと思うんだよ。『誰だお前?』って…」


 三澄さんの言葉を聞いて、心臓がきゅっとなる感覚を覚えます。

 確かにあの言葉は、かなり酷いと思いました。私は銀髪のハーフです。なのにそんな私に対して、まるで初めて見るかのような反応……そしてそれは、昨日の三澄さんからも、そんな様子が伺えました。

 知らない人が家にいる。そう言いたげな目でした。


「そんでさ。昨日、天津川に突っ込まれたよな。まるで知らない人を見る目だって……今日呼び出したのは、その質問に答える為なんだ」

「……………」


 三澄さんの手が、震えています。これから彼が告白することは、恐らくご自身にとって凄く怖いものなんだと思います。

 何度も深呼吸して、水を含んで……そして、私の目を真っ直ぐ見て、口を開きました。


「俺は……一昨日までのことを、ほとんど憶えていない。天津川のこと、小鳥遊のこと……二人の存在を、忘れていたんだ…」

「……………」

「だから昨日、二人を見た時に、なんで知らない女の子が二人いるんだって思った。日記を読んだら、二人とはそれなりに親しい関係だってのはわかった。特に天津川からは、何度も弁当をご馳走になってるみたいだし…」


 ……やっぱり、三澄さんは忘れていたんですね…。

 私のこと、小鳥遊さんのこと……それはなんとなくわかっていましたし、この前ほどの苦しい感覚はありません。

 ですがそれよりも今は―――彼の苦しそうな表情を見ていることの方が、苦しいです…。


 三澄さんはもう一度だけ深呼吸をして、続けました。


「天津川も薄々気付いてると思うけど……俺は、記憶障害なんだ…」


 記憶障害……それを聞いて、特に驚きは感じませんでした。

 三澄さんの言う通り、薄々気付いてはいました。銀髪という他では見られないような特徴的な髪。小鳥遊さんだって、凄く印象に残るくらい可愛い容姿をしてらっしゃいます。

 そんな二人を忘れてしまうなんて、人に興味がないという度を越しているのは明らかでしたから。


「長い付き合いのある奴、習慣にしていること以外のことを、大体二日、三日で完全忘れちまうんだ。しかも昨日みたいに熱出して倒れた時には、数ヶ月単位で色々忘れる…。今回は二ヶ月分。いつもより少ないそうだけど、天津川たちのことを忘れるには十分過ぎる期間だったと思う…。だからその……謝って済む問題じゃないことはわかってる。それに、記憶障害だから仕方ないだなんて開き直るつもりもない。でも―――」

「三澄さん」


 私は謝罪しようとする彼の言葉に割って入ります。

 だって、もう十分ですから…。三澄さんはもう十分、苦しんだと思いますから。


「謝らないでください。三澄さんのお気持ちは、伝わって来ましたから」


 もちろん、記憶障害がどれほど辛い物で、大変なことなのかなんて、他人である私にはちゃんと理解することは出来ません。

 ですが、今の三澄さんの苦しそうな表情から、記憶障害を告白することに相当追い詰められ、そして思い悩んだというのはわかります。


 それに三澄さんの記憶障害というのは、何もかも忘れてしまうということではないようです。でしたら私が三澄さんに掛ける言葉、三澄さんにしてあげられることはあります。


「三澄さん。お腹空いてませんか?」

「は?あぁ、空いてる」

「でしたら、食事をしましょう!まずは美味しい物を食べて、それを憶えることから始めましょう!」

「?????」


 私は訳がわからないとでも言いたげな三澄さんの手を握って、微笑みながら言います。


「大丈夫です、三澄さん。何度忘れても、私がその分……いえ、それ以上に美味しい記憶を作ります。楽しい思い出を、一緒に作ります。ですから三澄さん……謝らないでください。むしろ、ありがとうございます。こんな辛いことを告白してくれて…」

「天津川……」


 私がそう言うと、三澄さんの手の震えが収まりました。

 そして、何かに疑問を持つように、自分の胸に空いてる手を置きました。


「なんだ?今の…」


 しかしそんなことには気付かず、私は首を傾げる彼を引っ張って、外に連れて行こうとします。


「ちょ、待て待て!?どこに行こうとしてる?」

「どこって、スーパーですよ。昨日、冷蔵庫の中身を拝見した時、あまり食材が入っていませんでしたから、まずはお買い物です!さぁ、行きましょう!三澄さんの思い出を、私でいっぱいにしてあげます!」

「愛が重いっ!?」


 愛だなんて、そんな……あ。そういえば結局、謝れてません!?

 ど、どうしましょう…。なんだかもう謝りづらい空気になってしまいましたし…。


「はぁ……百面相だな、お前…。笑顔になったり、顔赤くしたり、急に落ち込んだり……まぁいいや。とりあえず出掛けるような恰好じゃないし、まずは着替えさせてくれ」

「は、はい!お待ちしてます!」

「……………覗くなよ?」

「なんで私が覗くんですか!?」


 なぜそう思ったのか疑問に思いつつ、私はリビングで待つことにしました。

 も~……三澄さんはなんだか、私にとても失礼な印象を持っている節があります…。


 ―――ですがこれでやっと、恋のスタートラインに立てた気がします。

 もう一度、三澄さんの胃袋を捕まえることからスタートになりますが、必ず物にしてみせます!

ようやくシリアス終了。

ブラックコーヒーを常備して執筆しようと思います。


愛が重い女の子は、好きな人の着替えを覗くって友人が言ってました。迷信、ですよね…?


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