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俺が銀髪美少女に幸せにされるまで  作者: 結城ナツメ
銀髪美少女は俺の胃袋から幸せにする
32/40

三澄の反応

今夜もう一つ投稿します。

 葵が落ち着いたところで、俺は天津川と小鳥遊に味覚障害であることを説明した。

 もちろん二人とも凄い驚いていたし、最初は信じてくれる様子はなかった。天津川の料理を初めて食べた時も、涙を流したらしいからな。

 味も感じずにどうやって美味い不味いを決めているのかなんて、本人にしかわからないだろうし、仕方のないことだ。


 だけど兵頭と葵が一緒になって説明してくれたおかげで、納得まではしてもらえずとも、なんとか信じてもらえることが出来た。

 兵頭がファミレスで俺と葵の会話を盗み聞きしていた件は気にしないでおいてやろう。偶然耳に入ってしまっただけらしいし。


「うーん。確かに三澄君って、お昼に菓子パンを食べてる時は凄い億劫そうだったもんね。好みも食感重視とか、ちょっと意味がわからなかったし」

「そうなんだよぉ。僕もいまいち理解してあげられないけど、きっと味を感じられない三澄にしかわからない感覚なんだよ。いつも不味そうっていうか、味気なさそうに食べてたし」

「でも、天津川さんの料理の味だけは感じる、と?」

「少なくともあの時は味を感じたというより、食感がちょうど三澄の口にあったってことだと思うよ。天津川ちゃんは憶えてる?三澄が美味いって言葉が言えてなかったの」


「……あ。確かに、美味しいってすぐに言ってくれませんでした…。兵頭さんが教えることで、ようやく美味しいという感覚を思い出したみたいな…」


 兵頭がさらに説明を加えることで、ようやく納得し始める。

 コイツ、バカだと思っていたけど、結構頭が回るんだな。俺が味覚障害だと証明する様子や出来事をつらつら述べていきやがる。

 なんかストーカーみたいでキモイ…。


「それで、どういう訳か今の三澄君は、味を感じることが出来ると……どういうこと?味覚障害って、簡単に治るものなの?」


 そこだけよくわからないと、俺に質問してくる小鳥遊。

 それは俺でもよくわからない。味覚障害が何をきっかけに治るのかなんて、こっちも知りたいことだ。


「……そうだな…」


 ただ当の本人である俺が、知らんって言うだけで終わる訳にはいかない。唐揚げを口に運んで考え込む。

 ……わからんけど、ある程度の予想は出来る。


「長いこと味覚障害だったから、治し方があるかどうかなんて憶えてない。でもなんとなくだけど、純粋に天津川の料理の味が気になったからだと思う」

「私の、ですか?」

「ああ。俺は今まで、飯を美味いなんて感じることが出来なかったから。せめて食感だけでも良い物をって思って、菓子パンを食っていた。そんで天津川の料理は、今まで食ってきたどの飯よりも食感が俺好みで、つい味が気になっていたんだと思う。」

「そ、そんなに気になってたんですか?」

「たぶんだけどな。でもそれしか思い当たる節がない」


 それっぽいことを述べて、納得してもらう。

 天津川は俺の言葉が嬉しくなったのか、少しだけ笑顔になる。

 彼女は今知ったことだが、自分の料理が想い人の味覚障害を治したとなれば、嬉しくもなるか。知らんけど。


「そうなんですね…。それで、三澄さんと葵さんがそういう反応になるのはわかりました。ですが、その……もう一つだけ気になることがあるのですが、よろしいですか?」


 しかし天津川はさらに気になることがあるらしく、不安そうな顔で聞いてくる。

 なにやら凄く聞きづらそうな様子だ。


「別にいいけど、どうしたんだ?」

「えっと…。凄く馬鹿らしくて、くだらない質問だと思うのですが……先ほど三澄さんがリビングに入ってきた時、私と小鳥遊さんのことをまるで知らない人を見るような目に感じたのですが、流石に気のせい……ですよね?」


 天津川の言葉に、心臓がドクンと跳ねた。

 一瞬、ほんの一瞬だけ自分の表情が崩れた気がしたが、なんとか平静を装ってその質問に答えようとする。

 だがそんな意思とは反対に、口が開こうとしなかった。自分で思うよりも動揺しているのか、指先が少し震えてるのを感じる。


「す、すみません!変なことを聞いてしまって!……この前三澄さんに話しかけた時と同じ反応だったので、つい気になってしまったんです…」

「あ、あ~!同じクラスなのに銀髪の天津川ちゃんのことを知らなかったってやつ?あれは酷かったよねぇ!僕も酷いと思う!で、それと三澄が二人を見た反応が同じだと?」


 俺の代わりに兵頭が答えて、天津川はこくんと頷く。


「な、なるほどねー!確かに気になるなぁ?でも人の顔を憶えるのが苦手な三澄のことなんだし、謹慎中のせいで一瞬だけ忘れてたとかそんなんだよ、きっと!」

「兵頭君、声凄い上ずってるんだけど……もしかしてまだ何か隠してることでもあるの?」

「し、知らないよぉ。僕が知ってるのは、三澄が味覚障害だってことだけで……」

「ジーーー」

「……………きゅるんっ!」

「可愛く誤魔化そうとするな!?てかキモイ!」


 兵頭はなんとかフォローしようとするが、どんどん小鳥遊に追い込まれていく。片目を閉じて舌先を出した状態で凄い冷汗かいてる。

 ……どうするか。俺が二人のことを忘れていたなんて言って、また傷付けることだけは避けたい。

 かといって、いないはずの連中がいて驚いていただけと言っても信じてもらえそうにない。


「お、お兄ちゃんは……」


 悩んでいると、さっきからずっと静かにしていた葵が口を開いた。


「お兄ちゃんは、その……人の顔を長期間憶えておくのが、凄い苦手なんです!お願いします……そういうことに、しておいてください…」

「「「……………」」」


 肩を震わせて言う葵の姿に、皆が沈黙する。

 その沈黙を破ったのは、やはりというべきか、兵頭だった。


「そ、そうだね!せっかく楽しい夕食の時間なんだしさ。それにこんなに美味い飯を前にして、いつまでもぐだぐだ喋ってる訳にはいかないっしょ!食べよ食べよ!」

「そう……ね。三澄君は人の顔が憶えるのが苦手だって、前々から言ってることだし、今さらしょうがないよね!」

「そうそう!あー唐揚げうめぇー!」


「……三澄さん。申し訳ございませんでした…。少し深入りしすぎてしまって…」

「いや、いいよ。その……これから天津川たちと付き合っていく上で、言わねぇとダメなことは、その内話す」

「はい…。すみませんでした」

「だからいいって。天津川がそうやって疑問に思うのは……まぁ、仕方ねぇよ」


 葵のおかげで、変な空気が残りつつも、楽しい食事が再開される。

 だけど……これで良かったんだろうか…。


 その後に食べた唐揚げの味は、なんだか薄く感じた。

うーん。兵頭のギャグが足りない。


この話が面白いと思ったらブクマ登録と高評価、いいねと感想をよろしくお願いいたします。


今度こそ今夜にはもう一話投稿したい…。

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[気になる点] 味覚障害はまだ一時的でしかないということですか?
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