表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が銀髪美少女に幸せにされるまで  作者: 結城ナツメ
銀髪美少女は俺の胃袋から幸せにする
29/40

(この七森って奴のせいで、身体が痛いのか…)

まさか昼寝したら日付が変わっていたなんて…。

「……………悪い。何も憶えてない」


 申し訳なさそうに、何も憶えてないと言う三澄。

 僕はその言葉を聞いて、さっきの三澄の顔を思い出す。リビングに入ってきた時に出てた、初めて見たかのような反応。

 彼は記憶障害を抱えていることと、その時の反応を考えるに……


「憶えてないって、どこから?」

「日記見てみないとわからん。……なんか、数ヶ月くらい先にタイムスリップした気分だしな…」


 後半は小声だったからよく聞き取れなかったけど、前半の言葉だけで察してしまう。

 少なくともさっきから罰の悪そうな顔を天津川ちゃんと小鳥遊ちゃんに向けてる時点で、二人のことを忘れてる可能性が高い。ていうか最早確定としか思えない反応だ。


 小鳥遊ちゃんはまだギリわかるけど、天津川ちゃんのことまで忘れるなんて……記憶障害を甘く見てた。

 去年の冬休み明けは、僕の顔は忘れていても存在自体は忘れていなかった様子だったから、一週間程度会わなくても大丈夫だと思ってた。

 だけど一週間どころか、五日会わないだけで二人の存在を完全に忘れてしまった。


 でもそんなことを気にしてる場合じゃない!なんとかフォローして、三澄の記憶障害のことを隠さないと。

 かなりデリケートなことだし、三澄も天津川ちゃんたちを傷付けたくないだろう。


「おいおい三澄、寝惚けてちゃってるかい?自分が倒れた理由なんて、日記見てもわかる訳ないだろ」

「あ、ああ……そうだな」


 あ。目を逸らされた。しかも凄くしおらしい反応だ。

 忘れたと言っても、天津川ちゃんと関わったことで穏やかになった性格が無くなった感じじゃなさそうだね。

 握り締めてる拳が飛んできそうで怖いけど。


「どれ、ファーストフレンドである僕ちんが、一体何があったのか一から十まで丸裸にする勢いで説明しようじゃないか!ほらほら、ソファに座ってぇ。あ!二人は気にせず、料理を作っちゃっていていいよー。僕が説明しておくから」

「え、ええ。それはわかったけど…」


 三澄の肩を押して、テレビ前のソファに誘導する。天津川ちゃんと小鳥遊ちゃんはキッチンで作業してるし、こっちはまだ『アイドル警察♪シリウス』が流れている。

 二人にまで声は届かないだろう。


 二人とも少し違和感を感じてるようだけど、三澄に二人のことを説明すれば、きっと記憶障害のことはバレずに済む。


「おい兵頭。なんかムカつくから、お前からじゃなくて葵から―――」

「天津川友奈、小鳥遊芽衣」

「「っ!」」


 僕が二人の名前を言うと、三澄とその傍にいる葵ちゃんが驚いたような顔をする。

 わざわざ小声でそんなことを言えば、僕が三澄が記憶障害であることを知ってると言ってるようなものだし、当然の反応だよね。


「あの二人の名前だよ。銀髪の子が、天津川友奈ちゃんね。……説明するから、僕の合図で日記を持って来て欲しい。日記があった方がわかりやすいだろうからね」

「……兵頭、お前もしかして……」

「シッ!下手にあのことは口に出さない方がいい。しばらく僕に合わせてくれ。二人を傷付けたくないでしょ?僕がそのことを知ってる理由は、あとでちゃんと話すからさ」

「……………」


 とりあえず僕たちが三澄家に来た理由から話していく。時々僕が大袈裟に説明して、キッチンにいる二人にも聞こえるようにする。やましいことなんて無いですよ~アピールだ。


「三澄ってば細い見た目の割に、意外と筋力あるんだもん。僕一人じゃとてもじゃないけど運べなくてさ~。女の子である小鳥遊ちゃんの手を借りる羽目になっちゃったよぉ」

「そ、そうか…。それは悪かったな」


 僕の説明を大人しく聞いてる三澄は、かなり居心地悪そうな表情をしている。その隣では、葵ちゃんが三澄の手を握って、なるべく不安を払拭させようとしている。

 やっぱり三澄は、天津川ちゃんと小鳥遊ちゃんのことを憶えていない。もう少し自然な流れで日記の話に持って行きたかったけど、もうすぐ唐揚げも作り終わるだろうし、ここら辺で二人の説明に入った方が良さそうだ。


「あ!そういえばさ、三澄ってば日記書いてるんだろ?よかったら見せておくれよ~。三澄はツンデレだから、普段僕のことをどう思ってるのか知りたいんだよ~」

「あ、ああ…。まぁいいけど。見られて困るもんもないしな」

「ここ二週間くらいの日記の奴でいいよー」


 手筈通り、僕の合図で日記を取りに行く三澄。

 ……リビングの棚にしまってるんだ。


「ほらよ。でも見せんのはこれっきりだからな」

「あーい!」


 最初の一ページ目を開いて、日付を確認する。

 この日記帳は三週間前から使われている、比較的に新しい奴っぽい。


 じゃあ見るとしたら一週間後くらいの……あった!天津川ちゃんが三澄に声をかけた日!


『今日は散々な日だった。昼休みにいつも通り、兵頭の奴がまた勝手に目の前に座ってくるだけにとどまらず、銀髪のロシア人ハーフの天津川って女の子が絡んで来やがった。その時の会話はうろ覚えだが、なんか「お前はただ可愛いだけの女の子」って言ったら笑顔でその場を後にしやがった。変女だ変女。だけどそれだけでは止まらなかった。


放課後に俺と仲良くなりたいとかで、好きな食べ物と嫌いな食べ物を聞いて来た。最初は断っていたのだが、本人が真剣な表情で何度もしつこく懇願して来たのと、兵頭の「それくらい教えてやれば?」という発言。そして周りの奴らから浴びせられる嫌な視線のせいで、完全に俺が悪者の雰囲気だった。だから仕方なく教えてやった。


「サクサクやパリパリなどといった、ASMR向きの食べ物が好き」「逆にステーキなどのASMRに向かない食べ物は苦手」だと。ステーキは焼いている音は好きだが、口に入れてもいい音は鳴らないからな。


なんか「明日頑張る」とかなんとか言ってたが、気にせず天津川のことは無視して良いと思う。


訂正。葵が言うには、俺が覚えてないだけで恩返ししようとしてる可能性があるとのこと。だからもし、明日何かお礼を言ってきたり、物を渡しに来たりしたら、ありがた~~~く受け取っておく。あと俺との間に何かあったか聞いておこうと思う。じゃないとマセガキ葵がうるさそうだ。


その葵には豚キムチチャーハンを作ってやった。明日も必ず「おあがりよ」と言え。じゃないとうるさい』


 三澄……葵ちゃんのことあんま好きじゃないのかな…?日記だけだと仕方なく世話してる感が凄い。


「天津川…」


 隣の三澄も日記を読んで、ぼそりと天津川と口にする。

 歯嚙みしてる様子から、必死に天津川ちゃんのことを思い出そうとしているのがわかる。


 日記をきっかけに思い出せるかと思ったけど、駄目そうだ。去年に天津川ちゃんをナンパから助けたことを思い出せたのは、奇跡みたいなものだったかも…。


「あー。この日は天津川ちゃんに話し掛けられた日か~。懐かしいなぁ」

「……そう、だな…」


 それから日記を読み進めて行くけど、三澄が天津川ちゃんと小鳥遊ちゃんのことを思い出すことはなかった。

 しかも二人のことだけでなく、この間ひと悶着あった西島と七森ちゃんとの件も忘れている。


 いくらなんでも忘れ過ぎだろ…最近あった大きな出来事さえ憶えてないなんて。……記憶障害ってのは、こんなにもやばいもんなのか…。

 もしかして、今まではなんとなく合わせていただけで、三澄は毎日僕たちのことを忘れて……いや、僕のことは憶えてるんだし、それはないだろう。

 ……………でも、僕とファーストフレンドになったことは忘れている…。


 うがー!どうなってるんだぁ~…。


 その後、僕は三澄に天津川ちゃんと小鳥遊ちゃんのことを説明したけど、二人のことを思い出すことはなかった。

昨日は投稿出来なくて申し訳ございませんでした。次は寝過ぎないようにアラームを付けて昼寝します。

明後日まではこちらを投稿します。


あと少し、あと少しでシリアスはお亡くなりになりますので、もう少しだけお付き合いください。

それと誤字脱字報告、ありがとうございます!おかげで読みやすくなりました!


この話が面白いと思ったらブクマ登録と高評価、いいねと感想をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ