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俺が銀髪美少女に幸せにされるまで  作者: 結城ナツメ
銀髪美少女は俺の胃袋から幸せにする
12/40

愛着

「おっはよー!み~す~み~!」


 西島とかいう生徒会副会長のせいでいつもより遅く学校に着き、校門前でダッシュで駆け寄って来るバカが一人。

 アイツもしつこいけど、悪い奴ではない。だから挨拶くらいは返して……


「朝から学園一の美少女と登校だなんて、全く隅に置けなアクセラァッ!?」


 訂正。思いっ切り茶化そうとしてきたのでラリアットを食らわせた。

 流れで一緒になっただけで、別に好きで一緒に登校した訳じゃねぇんだよ。


「えー!?だ、大丈夫ですか兵頭さん!?」

「の、ノープロブレム……学園最強の男のツッコミは、受け慣れてるからね…」


「そういう問題ではないような…。もう!三澄さん。いくらなんでもラリアットはやり過ぎだと思います。兵頭さんに謝りましょう」

「はいはい。悪かったな兵頭」

「はいは一回ですよ?」

「……はい」


 俺の返事に天津川は満足そうな顔をする。

 やっぱり彼女は優等生のようだ。俺のやり過ぎラリアットをしっかり注意してくる。


 だけど兵頭にはこれくらいが丁度いい。じゃないと調子に乗りそうだからな。


「あはははは!尻に敷かれてやんの」

「もう一発食らいたいようだな…?」

「キャー!にーげろー!」


 おかわりをご所望のバカの発言にイラついて拳を握ると、ダッシュで校内へと逃げていった。

 やっぱりアイツとは仲良くなんてしねぇ。ウザいだけだ。


「尻に敷いてるだなんてそんなつもりは……それにそれはお付き合いしてからの話と聞きますし、どちらかというと先に好きになってしまった私の方が敷かれそうというか…」


 なんか小声でブツブツ言ってる天津川。顔だけでなく耳まで真っ赤だし、どうせ兵頭の茶化しに照れてるんだろう。

 俺はトリップしている天津川の肩を突いて、正気に戻す。加減を間違えないように、優しく。


「おい。こんなところでいつまでも立ち止まってたら、周りに迷惑かかんぞ」

「はっ!すみません。つい嬉しくなってしまって…」

「ああ、そうですかい。幸せそうで何よりですね」

「はい。幸せです」


 ニコっと可愛い笑顔で言う天津川。

 意図せず少し皮肉めいた感じで言ってしまったんだが、彼女にそれは通じないようだ。

 脳内お花畑が過ぎるぜ…。


「まぁいいや。俺は花壇の世話があるから、先に教室行っといてくれ」

「あ……」


 天津川にそう言って、花壇に向かおうとするが、彼女が何か言いたげだったので振り返った。


「どうした?」

「えっと……その、私も一緒に行っていいですか?」

「はぁ?なんで」

「三澄さんが花壇のお世話をしているところを、見たくて…。あと!私にお手伝い出来ることがあれば、なんでもします。なので……付いて行っても、よろしいでしょうか?」


 不安そうに、上目遣いで聞いてくる天津川。

 妙に保護欲のようなものを刺激するそれは、周りの男どもが見惚れるほどに可愛らしい表情だ。

 背が小さいのも相俟って、まるで小動物のよう。


「……………」

「ダメ……ですか?」


 ん?……ああ。どうやら俺は黙り込んでいたようだ。

 くそ。今にも泣きそうな顔をするんじゃねぇよ。小動物みたいで撫でたくなる。


「好きにしろ。つっても、何も面白いことはないぞ?」

「はいっ!大丈夫です。私は三澄さんの傍にいられれば、それだけで楽しいですし、嬉しいです」

「……そうかよ…」

「はい!」


 天津川はパァっと花を咲かせるように笑顔になり、なんの臆面もなく恥ずかしいことを言う。

 しかし彼女はそれを気にした様子もない。


 ……なんか背中が痒くなるな。こうもストレートだと。


――――――――――――――――――――――――


 花壇の世話でやることは、しっかり道具入れの扉に貼ってあるので問題なく行える。

 天津川には水やりをお願いして、俺は雑草取りを行った。


「長生きしてくださいねー。可愛いお花さんたち」


 花に声をかけながら、水をやってる…。

 本当に天然なんだな。


「花に声かける奴なんて初めて見た」

「お花は褒め言葉や前向きな言葉を聞くと、長生きするんですよ」

「そうなのか?それは知らなかったな」

「ふふふっ。一年以上、お花のお世話をしてきた三澄さんでも、知らないことがあるんですね」


 どうやら俺の勘違いだったらしい。天然で言ってるのではなく、根拠があって声をかけていたようだ。

 そういえば、植物も生き物って言うもんな。


「俺は別に、花が好きで世話をしている訳じゃないからな」

「えっ。そうなんですか?てっきりお花が好きなのかと……じゃあ、なんでいつも花壇のお世話を?三澄さんがやらなくても、園芸部の方がやってくださるはずですが…」

「……………別にいいだろ、理由なんて」


 しばらく手を止めて天津川からの質問にどう答えようか考えたが、何も思い浮かばなかったので適当に誤魔化した。

 母さんが好きだったからとか、言う必要はないだろう。


「ただなんとなく、園芸部の連中に花の世話がしたいって頼んだだけだ。つまりそういう気分だったんだ。だから特に理由なんてねぇ」

「……そうなんですね」


 俺の言葉に、天津川は笑顔で返事する。しかし、納得していない様子だった。

 だからなのか、天津川はさらに質問をぶつけてくる。


「ですが、少なからず愛着はあるんじゃないですか?」

「愛着ねぇ……個人的には、そこまでないな」

「……そう、なんですね…」


 俺がそう言うと、今度は俯いて、悲しそうな表情をした。

 好きな相手の嫌な一面を知ってしまった、とかだろうか。


 ……いかん。流石に否定的なことを言い過ぎたか。

 『女の子にこんな顔をさせるなんて、お兄ちゃんは最低だよ!クズ男だよ!』とイマジナリー葵に怒鳴られた気がする。


「……………でも」


 正真正銘のクズ男にだけはなりたくないので、言葉を付け足すことにした。

 だけどそれは、俺が少なからず思っていることだ。今朝、そのことを言われたばかりだから。


「一生懸命に花を育てて、それを誰かに認められるのは……素直に嬉しい。だからこれからも頑張って、こいつらを大切に育てようとは思ってる。……これって、愛着だと思うか?」


 俺がそう言うと、彼女は微笑みを浮かべた。

 どうやら正解だったようだ。


「はい。それは立派な、愛着です。三澄さんがちゃんと、お花を愛している証拠ですよ。だって……こんなにも綺麗に咲いてるんですから」

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明日もこちらの作品を投稿する予定です。

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