冬の町と春のまじょ
冬童話2022応募作品
一年中、さむいさむい冬の町にはふたつきにいちど、ほうきぼしがながれてくる。
そして年にいちど、春のまじょがやってくる。
「あー、ホントにさむくていやだわ、こんなとこにわざわざこなきゃいけないなんて」
春のまじょはせいたかのっぽでまっくろけなふくをきてるおねいさんです。
白いおはだをあんまりみせないように、ながーいスカートに手がかくれるほどのばしたそでのふくをきてる春のまじょはとってもさむそうにふるえています。
「まったく、ほうきがまた、こおっちまったよ」
春のまじょはそうぼやいて、じまんのほうきがカチコチになってしょんぼりしてます。
そんなところにポチャムがやってくる。
「あー、春のまじょさんこんにちは!!」
ポチャムが元気にあいさつをする。雪ん子のしまいと雪だるまのきょうだいもいっしょにいます。
「あーポチャムかい、あたしといるとまたいじめられるよ、なんかへんな仲間がふえたみたいだね」
「うん、おともだちのミーヤにサーヤ、雪だるまの雪ジロウと雪サブローだよ」
「ん、タロウはいないのかい」
「雪タロウは僕が作った雪だるまが雪タロウだよ」
「なら、そこの雪だるまのなまえもポチャムがつけたのかい」
そう聞かれたポチャムはそうだよ、とじまんげにむねをはります。
「あいかわらず、おかしな子だよ」
そう言いながら、春のまじょはうれしそうです。
春のまじょが町のなかを歩いていると、町の人はこわがって外へ出てきません。
まじょにさからったり、まじょをおこらせるとカエルにかえられてしまうとおもっているからです。
まじょはそんな町のひとたちにあきれながら、広場までやってきます。
ふたつきにいちど、ほうきぼしがながれてくる。
春のまじょはほうきぼしがふらせるながれぼし。
そのながれぼしがくだけてふる、とくべつな雪をまっています。
春のまじょは広場いっぱいに花のたねをひろげます。
空をみあげてキラキラとふってきた雪をみながらまじょは歌いはじめました。
春の町のめぐみのため
冬の町の雪をかりよう
たねたちにめぶきのちからを
ほしの雪にさずけてもらおう
さあ目をさまして
キレイな花をさかせてごらん
冬の町にいろをかえして
春の町のめぐみちょうだい
歌がおわると広場にちらばった花のたねがいっせいにのびていきます。キレイな花を咲かせて、冬の町のせいれいさまの雪ふる広場がお花畑にはやがわり、キラキラと光のように雪がまい、とてもキレイ。
ミーヤとサーヤが花のかんむりをつくって、みんなにプレゼントしてくれるみたい。
「ことしもありがとよ、これで春の町のたねがみんな、目をさましてくれる」
「うん、来年もまた来てね。こんなにキレイなのになんで町の人はこわがってるんだろうね」
「しかたないのさ、よくわからないものはこわいからちかよらないし、すぐにおいだそうとするんだ、だからここは冬の町なんだよ」
ポチャムはいつかこの町が春も夏も秋もある町になったらいいなと思いました。
でもね、やっぱり冬がいい、だって雪だるまがとけちゃうもんね。
おしまい
お読みいただきありがとうございますm(_ _)m