閑話:傍観者
ここは『魔の森』の2階建のログハウス。
俺 シュンは、黒のビーニー帽にイヤーカフと変装し、いつもの恰好でベンチに座り、エール片手にタバコを吸っている。 俺は紙の束の資料をパラパラめくりながら読んでいる。 隣にはリンが座り、俺の目の前には、195CMの長身痩躯で焦げ茶色の髪の短髪、瞳も焦げ茶だがちょっと頼りない雰囲気で、容姿は整っている男が座っており、「アークさんのエールはうまいっす!」と嬉しそうに言っている。
俺が資料を読みながら「えーと」というと、リンが「コリーだ。 カールの後任の名前」といわれ、「コリー、お前の報告書よみずれー。 カールは、わかりやすかったのによ」
俺はハリセンを出して、コリーの頭を叩いておく。 カールが隠居してしまい、もうかなりの高齢ってことで俺は人間社会の調査を魔王に頼んで、新たな担当者を送りこんでおいた。 カールの報告書は簡潔で分かりやすかったのによ。 こいつの報告書ときたらダラダラ書いてあり、纏まっていないのでついつい叩いてしまった。
俺に叩かれて、頭を摩っているコリー。
「シュン殿、痛いっす。 俺だって俺なりっすよ、人間社会10年もいて頑張って調べたんすよ。
カールさんぐらいっすよ、あそこまで人間社会に馴染むの。」と拗ねながらもエールを飲んでいる。
「シュン殿が直接行けがいいじゃないっすか!」と愚痴っている。
確かに、このコリーが言っているように、カールは人間社会に溶け込むのが上手だし、調査も要点を抑えていくから明確だった。 うーん、魔族でもあそこまでの人材はいないのか。。など考えていた。
んで、このコリーの愚痴を聞いて、俺はタバコをふかした。
「めんどくせぇーんだよ。 人間の多い所きれーだし。 だから、お前に調べさせてんじゃねーか!」
また、俺は、コリーを軽くハリセンで叩く。 面倒だし、人間社会に行くのは疲れるから、こっちはわざわざ魔王に依頼したのに、こいつときたら。。
「んな! シュン殿は人間じゃないっすか!」と立ち上がって訴えるコリーに、「元人間だ」とリンが突っ込むと、大人しくなり座るコリーだった。
うん、俺たちはもう元人間だ。。 この前もう6,000年ぐらい生きてるっていわれたしな。 など考えながらも、俺は、報告書を読み終えた。
「人間も馬鹿だね。 誰も魔物の氾濫の原因を調べてねーとはな。。 うーん、面倒だかから、放置っすっかなー」
俺は、エールを飲んで、報告書と今の状態について、ボソッと独り言をいった。
「シュン、秩序は乱れないのか?」
「うーん、人間次第じゃねー。 時空の乱れもほとんどねぇーし、なんか、いいかなって思っちまってよ」
俺は、面倒でなんかやる気がなかった。。
「そうなんっすか。 そういや、報告書に書いてある全帝って奴、学生らしくって、学園のダンジョン研修で初級はケルベロスには負けた見たいっすが、久しぶりの初級最下層への挑戦っすね。
中級も60階層まで行ったらしくて、虫エリアでパーティが女ばっかりで断念したらしいっす。
その後、上級は、50階層までいったっていうのを聞きました。」
「おい。 人間まだダンジョンクリアしてねーのかよ」
「という事は、結局非公式でクリアしたのは、リオンとレイだけ。」
と俺とリンは、コリーの追加報告に突っ込んでいた。
「っていう事はだ、今の人間のレベルじゃ、人間全滅か?」とボソっとい「別にいいのか? もし、魔大陸いってもあいつらなら大丈夫だし、やっぱいいのか? とりあえず神獣達にはここに避難させときゃいいし」と俺は独り言をいう。
そんな事をぶつぶつ言っていたら、あいつからの念話。 珍しい連絡の仕方だなって思っていたら、コリーがいるからか。。
アイツ:「おい、それはダメじゃろ。 一応人間もこの世界の者じゃ。 本当に人間に興味ないなー」
シュン:「お! やっぱそうか。 俺、動かないとまじぃーのか?」
アイツ:「ああ、異物の混入じゃ。 その時は、調停者として動いてくれ」
また、あいつは、念話でも言う事いって、強制遮断だ。 はぁーっと、俺は溜息を吐く。
とりあえず、一服だと思い、俺はタバコに火をつけて一服している。
俺が、黙っているから、指示待ちのリンとコリーだ。
「はぁー。。 なんかよ、俺らも傍観しないとまずいみてぇー。 リン、しゃーねーから、何百年ぶりってか、ようわからんが、久々の人間社会にいくか」というと、リンの顔も嫌そうだ。 うん、俺も嫌っていうか、面倒だ。
「コリー、お前、準備はしてあんな?」
コリーが立ち上がって敬礼して「はい、開店準備は整ってます!」というのだった。。