ジョブやスキルが絶対過ぎる世界のお話
語尾が変わったキャラを書きたかったので、主人公の語尾がござるでござるよ。
「なんで急にそんな事を言うの?」
「急にじゃねえよ。ずっと我慢してやってたんだ。むしろ感謝して欲しいくらいだぜ」
ここはレエカの街の側にあるレエカのダンジヨンでござる。
奥の方から数人が言い争う声が聞こえてきたでござるよ。
ダンジヨンと言うのは魔物が巣食う洞穴のこと。
どうしてそんな物が出来たかについては諸説あるのでござるが、地下には古代の遺跡が埋没していて、そこに溜まった魔力に引かれているのだと言う説が一般的でござる。
実際ダンジヨンではアーテイフアクトなどと呼ばれる宝や道具、武具などが見つかるそうな。
「お前みたいな無職とパーティー組んでたらこっちの命がいくつあっても足りねえんだ。ここで死んでもらうぜ」
「流石に言っている事がおかしいでござるよ」
「え?貴方は?」
おっといけない、思わず首を突っ込んでしまったでござるよ。
「なんだてめえはよ」
パーチーのリーダーらしき強面の剣士が威嚇してきたが、拙者には通用しないでござるよ。
家の親父殿の迫力に比べたらまるで子供でござる。
「通りすがりの素浪人でござるが…」
「こいつ、無職な上にスキルも持ってないわ」
鑑定魔法とか言うやつでござろうか。魔法使いと思われる女の声にボウガンを構える男と槍を構えた戦士が取り囲もうと動き出す。
拙者の名は エレーナ = ジルキン 近衛騎士を多く輩出したジルキン家の生まれではござるが泰平の世に剣で身を立てるのはなかなか難しく、この辺境の地で冒険者を志したのでござった。ところがこの業界、生まれ持ったジョブと呼ばれる職業適性やスキルと言う特殊能力でその者の力を測る傾向が強く、弱いジョブや無職に厳しい世界でござった。
「じゃあ、一緒に殺しちまうか」
「なんでそうなるでござるか…」
冒険者の感覚は良く分からんでござるな。
「ダンジョンの中で死んでるやつを見つけたら、持ち物は見つけた人間の物ってルールがあるんだよ」
「それは予め亡くなっていた場合の話で、お主のやってる事はただの強盗でござるよ…」
「うるせえ、死ねえええええ」
やれやれ仕方ない。身の危険が迫っている時に手加減する趣味はないでござるよ?
抜き打ちでリーダーっぽい剣士の親指を切断、左手に持ち替える時に刀を返し、飛んできたボウガンの矢を右手で受け止めて投げ返す、と同時に峰打ちで槍を構えた男の鎖骨を折る。投げ返した矢はボウガンを構えた男の効き目に刺さったようでござるが自業自得でござるな。
おっと魔法使いが呪文を唱えようとしているので鳩尾に突きを入れる。
この世界には魔法があるから女性だからと手加減する必要はないでござろう。
おっと、その魔法使いに呪文を唱えられないようにしてしまったでござるが、細かい事は気にしない。気にしない。呪文は唱えられないまでも息は出来るようでござるし。
うるさく喚いている親指を無くした男を峰打ちで眠らせ、とりあえず一件落着でござろうかな。
「あ、あの…」
「おっと、これは失礼つかまつった。思わず成敗してしまったが貴方の仲間でござったな…」
「いえ、向こうは私のことを仲間とは思ってなかったみたいですし、それは良いです。と言うか助けていただいて、ありがとうございます」
「そうでござるか。拙者はこのままダンジヨン探索を進めるつもりでござるが、どうしますか?」
「良ければ私も連れて行ってください」
こうして、パーチーから追放されそうになっていたと言うか、強盗目的でダンジヨンに連れ込まれた リディア = ユドゥシキン嬢と共にダンジヨンを攻略することになったでござる。
「あ、そこ、罠がありますよ」
「え?本当でござるか?」
「今解除しますね」
「かたじけない」
「いきどまりでござるか」
「待って、ここに仕掛けが」
「おお、大岩が動いたでござる」
「これで進めますね」
「この先、リザードマンが5体居ます」
「さすがに5体は多いでござるな。3体ぐらいまでなら…」
「じゃあ、手前の2体を釣りますね」
言うが早いか手前の2体に見つかるように煙玉を投げたでござる。
手前の2体が襲いかかってきたけど、奥の3体が煙に巻かれているでござるな。
2体なら敵ではないでござる。
鱗の薄いところや目や口を攻撃して倒すと煙が晴れて残りの3体がこちらに気づいたでござるな。
「こっちよ」
リディア殿が注意を引いた瞬間に横から頂きでござる。
残り2体。
さっきと同じようにチクチクと攻撃すればしまいでござる。
「本当にお強いですね…」
「良く分からない理由で強くなった者たちとは鍛え方が違うでござるよ。リディア殿こそ、経験豊富なようで、ベテラン冒険者と言う感じで心強いでござる」
「そ、そうですか? えへへ」
「拙者は剣しか使えないでござるからな。リディア殿とご一緒できて良かったでござるよ」
「えっと、あ、そろそろ食事にしましょうか」
「そう言えばだいぶ時間が経っているでござるな」
「支度しますね」
「お相伴に与ってもよろしいので?」
「もともと5人分持ってきてるので、全然大丈夫ですよ」
「ははは…」
休憩を終えて先に進むと人工物っぽい直方体が地面から生えている空洞に出たでござる。
「あ、脱出装置ですよ。これを使えばすぐにダンジョンの外に出られます」
「おお、これがアーテイフアクトとか言う物でござるか」
「これも、ですね。これも相当凄い物ですが持ち帰ってはダメです」
そう言ってリディア殿がコロコロと笑ってるでござる。もともと明るく柔らかい感じの女性でもありましたが、やはり直ぐにでも出られると思うと余裕が出るのでしょうな。わざわざ言わないけど、帰るまでがクエストでござるぞ。
「どうしますか? この先にもあるとは思いますが…」
「うむ。今日はもともと様子見のつもりでござるでな。リディア殿のおかげで捗ったぐらいでござるから、リディア殿が良ければ帰りましょうか」
「今日のところは帰りましょうか。…あの、出来れば今後もご一緒させて頂きたいのですが…」
「こちらは願ってもない事でござる」
リディア殿の笑顔が一段と眩しくなったでござる。冒険者としては大先輩でござるし、おかげで冒険者としてやっていけそうな気がしてきたでござるな。
良く見ると直方体の下の床に円が描かれており、円の中に入って直方体に手をかざすと一瞬視界が真っ白になったと思った次の瞬間森の中にいたでござる。驚き桃の木山椒の木でござる。
「弱い奴は死ねええええええ」
突如襲いかかってきた男を一刀の元に切り捨ててしまったでござる。
「な、なんだったんでしょうか?」
リディア殿が怯えているでござるが、のんびり話をしている余裕は無さそうでござるな。
襲いくる冒険者と思われる者たちを切り捨てながら街まで行くと、あちこちで火の手が上がっていたでござる。
「何があったでござるか?」
見た感じまともそうな人に問いかけると、主に冒険者と思われる者たちが暴れ出したと。
やむを得ず鎮圧に強力したでござるよ。
「ジョブやスキルと言うのは神殿で洗礼を受ける際に決まるのですが、どうも神官が邪教に宗旨替えして何か手を加えたようですね…」
「おっかないでござるな」
暴走した冒険者の鎮圧でまとまったお金が入ったし、上位の冒険者の多くが鎮圧されてしまったために新入りの拙者も大忙しでとりあえずは暮らしていけそうでござるな。あまり喜ばしい話でも無い気がするでござるが、気にしても仕方ないでござるか…。
さあ、今日もリディア殿と2人、依頼をこなしに行くでござるよ。
エレーナは性別不明にしようかと思ったのを忘れてネーミングジェネレーターしてしまったでござるよ(
エレーナがジョブやスキルを持っていないのは宗教的な理由で洗礼を受けていないから。
リディアはたまたまです。