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外伝Ⅸ カプアと幽霊船⑦

☆★☆★ 本日発売 ☆★☆★


祝! 発売! 祝! 10巻!

おかげさまで、初めて2桁巻に到達しました。

小説・漫画では初めてです。ここまでお付き合いいただいた読者の皆様、

ありがとうございます。

書店にて見かけましたら、お手に取っていただきますようお願いします。



挿絵(By みてみん)

 アモーレを連れて、昔の上司を捜し出すことになったのはいいのだが、果たしてそう簡単に行くものだろうか。知る限り、俺に似た魔族なんて思い当たらない。そもそも亜屍族(デミリッチ)は魔族の中でも珍しい種族で、うちの家族以外に数軒の親戚がいる程度だ。


 だいたい亜屍族(デミリッチ)は生まれた時から人間や魔族の身体を乗り継ぎながら、成長していく。他人の身体だから親族でも似ることはない。だから、俺と親父も妹もまったく似てないのである。


 さてどうしたものか、と宴会場に進みながら首を捻っていると、アモーレが突然止まった。


「どうした、アモーレ? トイレか?」


「女の子にそういうデリカシーのないことを言わないでください。セクハラですよ」


「ぐっ! す、すまん」


 睨まれて、思わずタジッちまった。

 元がマリアジェラの身体だから余計だ。

 なんか新鮮なんだよな。いつも半熟の目玉焼きみたいにトロンとした顔で迫ってくるからよ。まあ、それもある意味怖いっちゃ怖いんだが。


 シャロンが改まってアモーレに質問する。

 どうやらこの中でも、1番シャロンに心を開いているらしい。

 シャロンがまだお子様ってのが幸いしてるのだろう。


「はあはあはあ……。います……。宴会場に」


「落ち着いて、アモーレ。あの宴席にアモーレにパワハラした上司がいるんですね」


 シャロンの質問に、アモーレは「うん」と頷く。

 どうやら決定的らしいな。俺たちは何が起こってもいいように臨戦態勢を取る。


 俺は恐る恐る扉を開けた。

 すぐ目に飛び込んでいたのは、宴会場のど真ん中で鎮座し、若いゾンビ族の口に一升瓶を突き刺した大きな死鬼族だった。


「ぐははははははは! おい。お前、オレ様の酒が飲めねぇってのか? ……おい。そこの新人。余興をやれ? 歌でも隠し芸でも、裸踊りでもいい? 何? できない。――ったく最近の若者は社会ってのをわかってねぇなあ。おっと……。すまねぇ。手が勝手に尻をさわっちまった。なんか最近大きくなってきたなあ。なんだ、彼氏に揉んでもらったのか、ぐへへへへへへ」


 ……こ。


 …………こ。



 こいつだぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!



 間違いねぇ。

 つーかなんだよ、あのハラスメント三段活用みたいな存在は!

 見つかるかな? って心配した俺、馬鹿みたいじゃないか。


「自腹の宴席……。当たり前のように強要される余興……。適齢期を過ぎた結婚のプレッシャー……。うっ! 頭が!!」


 とうとうアモーレが倒れてしまう。

 そりゃあの様子を見たら、ショックを受けるのは間違いない。

 俺もアモーレの立場ならぶっ倒れていただろう。


「アモーレさん! しっかり」


「シャロン、アモーレさんをお願い」


 早速戦闘モードに入ったのは、パフィミアだ。


「おい。パフィミア。お前、状況わかってんのか?」


「わからない」


「はあ?」


「でも、アモーレさんが苦しんでいるんだ。それに他の霊の人だって」


 なるほど。パフィミアから見れば、ここは宴会場じゃなくて死鬼族が暴れているようにしか見えないわけか。社会経験を経てないことが、逆にいい方向に転んだみたいだな。


 何よりあいつの勇者としての立場が、見過ごせないらしい。

 勇者の血がたぎるって奴だ。


「お前! いい加減にしろ!!」


「あん? なんだ、お前」


 パフィミアが進み出ると、死鬼族は片手でヘッドロックをかましていた新人を離す。

 もう片方の手に持っていた一升瓶を喇叭呑みすると、濃い酒気を吐いた。

 くせぇ……。死鬼族じゃなくて、これじゃあ酒呑童子だぜ。


「ん? その姿、お前……もしかして獣人のコスプレでもしてるのか? わはははは! なかなか面白い余興じゃねぇか。よーし。見てろ、新人ども。オレ様が(いくさ)ってもんがなんたるか教えてやるよ。かかってこい!」


「ちょっ! 大丈夫なんですか、カプソディアさん」

「あの死鬼族なんか強いですよ」

「死属性の魔族の中でも、トップクラスの力を持つっていう」


 リト、ラト、エスの言う通りだ。

 死鬼族は死属性の魔族の中でも力が強く、それは俺たち亜屍族(デミリッチ)を軽く凌ぐ。ただ逆に言えば、力しかないってことだ。


 仕掛けたのは、死鬼族の方だった。

 筋骨隆々とした腕を伸ばし、パフィミアの頭を掴む。


「勇者様!!」


「へっ!」


 死鬼族は得意げに笑う。

 だが、そいつの余裕はそれまでだった。

 突如、パフィミアは死鬼族の伸びた手を片手で掴む。

 あっさりとフェイスロックをとくと、冷ややかな瞳で死鬼族を睨んだ。


「これで終わり?」


「クソが! 調子に乗るなよ、新人(ヽヽ)


 次はフルスイングの拳打を食らわせようとしたが、すでにパフィミアの姿はいない。

 死鬼族が視認できた時には、パフィミアは後ろにいた。

 ガチッと鉤爪でかかったように、死鬼族の巨体を掴む。

 そしてゆっくりと持ち上げた。


「調子に乗ってるのは…………」



 お前だぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!!!



 そのまま後ろに反り投げる。

 死鬼族は「ぎゃあああああああ!!」と汚い悲鳴を上げた。

 顔が地面に向かう中、その目からは涙が溢れ出る。



 ぐちゃっ!!



 ついに死鬼族の頭が床に埋まる。

 瞬間、歓声が上がり、拍手まで送られる。

 本来、勇者が同族を倒すのは歓迎すべきではないんだろうが、正直俺も見ていて胸が空く思いだった。


「くくく……。お前の力はそんなものか?」


 くぐっもった声が宴会場に響き渡る。

 直後、微震が起きた。地震でも起きたのかと思ったが、ここは洋上だ。

 地震なんておきるはずがねぇ。


 すると、頭が床に埋まっていた死鬼族が動く。

 頭をスポンと抜くと、自らの力で脱出した。


 パフィミアの裏投げはバッチリ決まっていた。

 他の魔族なら絶命必至であるのに、死鬼族は笑みすら浮かべって余裕のポーズを取った。


「改めて名乗ろう。オレ様の名前はガスドラネ。好きなプレイは泥酔睡姦プレイだ!」


 アウトォォォォオオオオオオオオオオ!!

 泥酔で睡姦って……。めちゃくちゃ巨悪じゃねぇか。

 今まで名乗った中で、一番の犯罪だぞ。

 大丈夫か。伏せ字なしで。

 運営さん、お願いだ。BANしないで!


 俺はハラハラする一方、パフィミアたちは別の意味でハラハラしていた。


「そんな……」


「勇者様の技が効かない?」


 弟子’Sたちは唖然とする。


「余興にしてはなかなかだな。オレ様を投げ飛ばすとは、勇気のある新人だ。でもな。お前、ちょっと上司に対する態度がなってないんじゃないのか? ああん!!」


 ガスドラネはパフィミアに向かって拳を振り下ろす。

 その衝撃は凄まじく、下の船底にまで穴が空くほどだった。

 おい。やめろ! せめて手加減しろ。

 船が沈んじまうだろうが……。


 しかし、酔ったガスドラネは攻撃を緩めない。

 船底どころか、幽霊船そのものがぺしゃんこにならん勢いだ。

 対して、パフィミアは防戦一方だった。


「なんで死んでないんだ?」


「馬鹿が! 死鬼族が物理攻撃で死ぬかよ」


 死鬼族の特徴その2。

 亜屍族(デミリッチ)と同じで、すでに死んでいること。

 不死というわけではないが、物理攻撃の類いがほとんど効かない。

 やるなら魔法だが……。


「パフィミア様、わたくしが援護……」


「ちょ~~っと待った!!」


「聖者様?」


「シャロン、ここはパフィミアに任せよう」


「で、でも……。相手は死なないんですよ」


「そうか? 俺は信じるぜ、勇者パフィミアをな」


「なるほど。獅子は子を千尋の谷に突き落とすと言いますが……。さすが聖者様。ここ勇者様の成長点と見ているのですね」


 さすがはこっちの台詞だぜ、シャロン。

 俺の言ったことをいい感じで理解してくる。

 はっきり言うが、成長点なんてどうでもいい。あと俺は獅子でも、なんならパフィミアは子でもないがな。


 単純に浄化魔法を使ってほしくないんだよ。


「ふははははははは! オレ様こそが最強! 世界最強なのだよ!!」


 調子に乗ったガスドラネは鼻息荒く、あっちこっちを壊しまくる。

 もう酒乱ってレベルじゃねぇぞ。

 このままじゃマジで幽霊船ごとおだぶつだ。

 別にまだ死に体とは思わねぇが、こんなボロボロの棺桶はノーサンキューだ。

 死ぬなら陸だ。できれば、畳の上で美女の涙とか憧れのシチュエーションだよな。


「さあ……。上司とたまたま一緒の部屋になって、孕〇されたい新人はどこだ? ちなみにオレ様は肝要だ。逆のプレイでもいける口だぞ」


 いける口って何を話してるんだよ、変態。

 ギャアアアアアアアアア! やめろ! 

 漫画じゃないからって、粗末なものをプラプラさせるな!

 本編ではお馴染みだけど、久しぶりに出てきたな、ド変態魔族(このてのやつ)

 やばい。このままでは魔族としての矜恃が……。

 いや、シャロンの情操教育に悪い(手遅れかもしれないけど)。


「カプソディア様、大変です」


 リト(えっと? あるいはラトかな?)がマジな声を上げる。

 おいおい。幽霊船が沈没しそうで、さらに魔族としてのモラルの危機に瀕している時以上に、大変なことなんてあるかよ。


 俺は振り返る。


「こうなったら、勇者の光――――」


「うぎゃああああああああああああああああああああああ!!」


 やめろ! それも俺に効く。

 あと、まだお前、勇者の光を使いこなせてないだろうが……。

 ああ。もおおおおおおおおおおおお!!



 お前、死ね……!!



「ぬあああああああああああああああああああああああああああ!!」


 ガスドラネの咆哮が幽霊船に響き渡るのだった。


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