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外伝 Ⅳ 入れ替わってるぅう!②

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おかげさまで各ランキングで上位をいただきました。

お買い上げくださった読者の方ありがとうございます。


週末に書店お立ち寄りの際には、是非よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

 ルヴィアナはご機嫌の様子だった。


 実家へと戻る足は弾んでいることと、微かに鼻唄が聞こえるからわかる。


 よく見ると、いつもと髪型が違った。おろしているロングの髪を結び、ポニーテールにしている。なので、ルヴィアナが歩く度にくるんくるんと回っていた。


 人の誕生日を祝うのに、どうしてこう喜んでいるのかさっぱりわからないカプソディアにとって、ルヴィアナの行動は理解できないものだった。


「何を喜んでるのかねぇ、あいつ。なあ、ブレイゼル」


「ふん。庶民め。お前のように愚鈍で虫けらどもにはわからぬが、生きているということはそれだけで奇跡に近いことなのだ。戦争の時代であれば尚更だな。だから自分の誕生日ぐらい盛大に祝い、そして己が生きている価値を確かめるのは悪いことではない」


「おお……」


 幼馴染みでライバル関係でもあるブレイゼルの言葉に拍手をするのだが、当の本人の鼻からはずっと鼻血が垂らして、まったく締まりのない顔をしていた。


 ビシッとタキシードを着ているのだが、その鼻の下はゆるゆるだ。


(生きていることを祝うか)


 死属性を操るカプソディアにとっては、ちょっと耳の痛い話だ。

 亜屍族(デミリッチ)は総じて死のエキスパートである。その死生観も独特だ。

 人間は死を悲しみと捉えることが多いが、カプソディアにとって、死はまさに隣合わせであり、手段でもある。


 死ねば生き返らせればいいし、邪魔なら殺せばいい。


 後に、勇者と聖女を侍らせて、人類圏と魔族圏を股にかけて大暴れする死属性四天王の思考は、割とこの時もっとも人間が嫌う魔族像に近いものだった。


「なあなあ。カプソディアよ」


 珍しく話しかけてきたのは、ヴォガニスだった。

 口を開けば「腹減った」「殺す」しか言わない幼馴染みはこう囁く。


「今さらだけどよ。……ルヴィアナの家の料理ってうめぇのかな?」


「――――!!」


 瞬間、カプソディアはセルフで石化した。

 むろん亜屍族にそんな機能はないし、一生レベル1のカプアがそんなスキルを持っているわけがない。


 突然起きた石化は間違いなく奇跡であって、今ヴォガニスが言ったことの非常事態さをよく表していた。


 ガシャッ!


 地上に起きた奇跡をヴォガニスはあっさりと砕いてみせる。


「何やってんだよ、カプソディア」


「す、すまん。ショックすぎて危なく死にかけた」


「お前は元々死んでんだろうが」


 というツッコミを無視し、カプソディは考えた。


(どうしてその可能性を考えなかった?)


 ルヴィアナの料理が不味いことは周知の事実である。

 それは技術云々かんぬんの問題ではない。味、見た目、匂い、衛生面も含めて、遺伝としか思えないほど、凶悪に仕上がっている。もはや料理を何かの兵器と勘違いしているのではないかと思う程のレベルだ。


 先ほど遺伝といったが、仮にルヴィアナが料理を作ることに手を貸していないとしても、親やあるいは姉弟がまともなものを作るとは到底思えない。


(いや、待てよ)


 カプソディアはそこで考え直す。


 ルヴィアナは名家のお嬢様だ。

 メイドの1人2人いてもおかしくない。料理を作る家臣だっているだろう。

 そんなに気にしなくても大丈夫ではないか。


 しかし、ここで新たな疑問が浮かび上がる。


 仮に家臣が主のためにしっかり栄養を考えて、まともな料理を作っていたとしたら、あのルヴィアナの破天荒とも言える料理は一体どこから来たのだろうか。


 まともな料理を知るなら、少しマシな舌を持っていて、いいはずである。

 そもそも食堂でも、周りがあまり手をつけないであろう料理を1人注文することもあるぐらい、ルヴィアナの料理は狂っているのだ。


(こ、これは……)


 カプソディアの中で結論が出た。

 ルヴィアナの家の料理は、家族の手料理も含めて、総じてマズい。あるいは家臣たちがルヴィアナたちの舌に合わせて作ってる可能性が高い。

 半強制的にやらされているのだとしたら、もはや苦行である。


(ここは1つ。当人に質問するしかないな)


 ついにカプソディアは肚を決めた。

 その眼光は今から誕生日を祝われる魔族の目ではない。

 死地に向かう勇者の瞳であった。


「な、なあ、ルヴィアナ……」


「なによ、カプソディア? 怖い顔をして」


「あ、あのさ~。誕生日会なんだけどさ。どういう――」


 感じ――と訊こうとした瞬間、ほぼまだ何も言っていないというのに、ルヴィアナは勢いよく振り返る。

 よくぞ訊いてくれましたとばかりに、爛々と目を輝かせた。


「ふふん。あなたたちのために、家臣たちが色々飾り付けしてくれたのよ」


「ほ、ほ~~~~~~お。か、家臣かぁ。それは楽しみだなぁ」


「もちろん、私も手伝ったんだからね」


「わ、わかってるよ。と、ところその家臣さんって……」


「でね! でね! 友達を来るっていったら、お母様が張り切っちゃって! いっっっっっっぱい料理を作ってくれたのよ!!」


「――――ッ!!」


【カプソディア、2回目の石化】


 しかし、ヴォガニスはそれを聞いて安心したらしい。


 ケラケラと笑って。


「ルヴィアナの母ちゃんが作ってくれたのか。なら、安心だな」


「ば、ば、馬鹿野郎!!」


【カプソディア、セルフで石化解除】


 もはや伝統芸能の域に達した石化から脱出すると、カプソディアはヴォガニスの胸ぐらを掴んだ。


「よく考えろ、ヴォガニス。相手はルヴィアナを生んだかーちゃんだぞ。安全な食品なわけ――――」


「カプソディア……」


「は? なんだよ、親友が大事な話をしてるときに……」


「オレ様は馬鹿だけど、こういう時あまりそういうことは言わない方がいいんじゃねぇか?」


「へっ!?」


 ヴォガニスは後ろを指差す。

 その指先は震えていた。


 恐る恐る振り返ると、ルヴィアナは満面の笑みを浮かべていた。

 それはもう空恐ろしいほどに……。


「ひぃ! す、すみません、ルヴィアナさん(ヽヽ)!!」


「何よ。いきなり。人の顔を見て、怖がるなんて。失礼しちゃうわ」


「ゆ、許してください」


 カプソディアは知っている。

 むろんヴォガニスもである。


 満面の笑みを浮かべている時ほど、ルヴィアナが怒っている時なのだ。


 以前、ブレイゼルとカプソディアがマジ喧嘩になった時、1番暴れていたのが仲裁に入ったルヴィアナだった。


 後に2人の間に強烈なトラウマを残すことになるこのルヴィアナの笑顔は、「神の微笑み」と言われている。


「許して? まさか……。みんなが一生懸命頑張って、用意してくれたのに。今さら帰るなんて言わないわよね。カプソディア、ヴォガニス」


「め、滅相もございません!」

「ぜ、全部平らげさせていただきます!!」


 後に四天王になる2人は、貴族を前にした農民のように平伏するのであった。


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