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外伝Ⅰ エリーテ、死ス……①

久しぶりに書きました!

楽しんでいただければ幸いです!

 それは昼下がりの午後の事であった。


「はあ……。はあ……。はあ……」


 静かな屋敷に響いていたのは、獣のような荒い息だ。

 俺は顎に付いた汗を拭い、こう呟いた。



「やっちまった……」



 大きく息を吸い込む。

 息を整えた後、床の方に顔を向けた。


 白いエプロンに、シックな黒のワンピース。

 ダークエルフの特徴の1つといえる銀の髪には、フリルがついたカチューシャが載っている。


 彼女の名前はエリーテ・チェンバラン。

 魔族と人族の争いを高みの見物とばかりに見下ろす厄介な種族ダークエルフであり、カンタベリア王国の汚点――マリアジェラ王女のお付きのメイドだ。

 そして、魔族以外に俺が死属性四天王カプソディアであることを、唯一この人間の街ノイヴィルで知る女である。


 そのエリーテが地面に伏していた。

 ぴくりとも動かない。

 耳を澄ましても、心臓の音が聞こえてくることはなかった。


 そう。


 俺はついに殺したのだ。


 憎きエリーテ・チェンバランを。


 前々からいけ好かないヤツだと思っていた。

 殺したいと思うほどに。

 それでも、殺さなかったのは、こいつがマリアジェラのお付きのメイドであり、人間社会に深く関わっていたからだ。


 幸いこいつは、俺をカプソディアだと知ってからかうことはあったが、それを周りに喧伝(けんでん)することはなかった。

 故に、その程度には俺も信頼を置いていたのである。


 だが、もう我慢ならなかった。

 今度ばかりは、こいつを許すことができなかった。


 何故、俺は凶行に及んだのか。


 それは、つい数分前に遡る……。



 ◆◇◆◇◆



「こおおぉらぁぁああああああああ!! エリーテ!!」


 屋敷に響いたのは、俺の叫声だ。

 その日、勇者パフィミアと聖女シャロンのコンビは、ギルドの依頼で森で魔物をしばきに、マリアジェラは『ひいきにしているさっかのしんかんがでるので』と、相変わらず訳のわからないことを言って、朝早くからお供も連れずに出て行った。


 結局、屋敷に残ったのは。俺とあの悪逆非道のダークメイドだけだ。


 エリーテと2人っきりになるなんて珍しい事である。

 あまり記憶がない。

 正直に言うと、嫌な予感がしないわけでもなかった。

 幸いにもこのダークエルフは多趣味らしく、仕事している時以外は、私室にこもって何かをしている。


 だが、ダークエルフというのは大変気まぐれな種族だ。

 趣味に飽きてきた時、ちょうど良い暇つぶし(カプソディア)のことを思い出すかもしれない。


 そう思って、一応警戒はしていたのだが、ついにやらかしやがった。


「どうしました!?」


 俺の叫び声を聞いて、エリーテは台所にやってくる。

 普段通りお澄まし顔を見た瞬間、俺の感情はさらに沸騰した。


「どうしましたも、こうしましたもねぇよ!! 見ろ!!」


 俺が指差したのは氷室である。

 魔法で調整された氷室の中は、常に摂氏5度に抑えられ、今も冷ややかな冷気を送り続けている。

 そこには冷蔵保存が必要な食糧が所狭しと詰められていたが、俺が指差した部分には、不自然な空間が空いていた。


「ここにあったモ・ミュークのモンブランプリンを食べたのお前だろ!!」


「はて? 何のことでしょうか(ペロリ)」


「さりげなくペロッてんじゃねぇよ!」


「あなたが何を言っているのか、さっぱりわかりませんが(ペロリ)。私が食べたという証拠はあるんですか?」


「絶賛、証拠隠滅中の犯人が何を言っているんだよ! そもそもなあ!! お前、プリンがあった場所に『プリンいただきました』って、手紙を置いて煽ってくるヤツは、古今東西てめぇしかいねぇんだよ」


 便せんを見せる。

 なんだよ、この猫のマーク。

 ふざけるのも大概にしやがれ!!


「お前、そのプリン……。俺がどんだけ楽しみにしていたかわかるか? モ・ミュークってな。王都では有名なプリン専門店でな! 魔族の間でも噂が出るぐらい有名な店なんだ。それをな。俺が食べたがっていた、という噂を聞きつけてな。わざわざ屋敷まで届けてくれたんだぞ。お前は、俺に届けたいと思う店員さんや職人さんの思いまで踏みにじったんだ」


「その情報って……。私の受け売りそのままですよね。カプソディア様はただのにわか――――」


「うるせぇよ! わ、悪いのかよ!!」


「顔真っ赤にして怒らないで下さい。馬鹿にされますよ」


「今、現在思いっきり馬鹿にされてるよ。性悪ダークエルフにな!!」


「しくしく……(棒)。性悪ダークエルフって言われた(棒)」


 くそ!

 相変わらず口が減らないダークエルフだ。

 ああ言えば、こう言うし。

 暖簾に腕押しって言うのか?

 よくわからんが……。


 もう怒った!!


 我慢の限界だ。

 口で勝てないなら、こうなったら実力行使してやる。


「エリーテ……。今まで見逃してきたけど、もう今回ばかりは俺も堪忍袋の緒が切れたぜ」


「な、何をするんですか? まさか2人っきりをいいことに、私のセクシーボディーを狙って」


「あ゛? 何をてめぇ、誤解してるんだよ」


「まさかプリンを食べたという罪悪感を私に植え付け、脅迫してくるなんて。……さすがカプソディア様、マニア――――」



 お前、死ね……。



「ぬわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 パタリ……。

 恒例の断末魔とともに、ついにエリーテは俺に倒されるのであった。


外伝は短いと言ったな、あれは嘘だ……。

というわけで、3週連続更新する予定です。続きをお楽しみに!


本日、拙作『叛逆のヴァロウ』の更新日になります!

ニコニコ漫画、pixivコミック、コミックポルカ他で更新しております。

これぞダークファンタジーというシーン満載の今話となっておりますので、

是非チェックしてくださいね。

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