ブルーグラスってわかりますか?
たぶん、皆さま、初めまして。花房康作と申します。
日本では、あまり一般的ではない音楽、ブルーグラスを高校の部活動でやろうとする女の子、斎藤絆ちゃんのお話しです。
連作して行きますので、斎藤絆ちゃんの楽しい日々、これから増えてくる仲間たち、理解者たち、無理解者たちとの、あれやらこれやらをお楽しみいただけたら幸いです。
はぁ・・・と私は落胆した。やっぱり予想通りだったか。そりゃまぁ、そうよね。
私の胸には名札。斎藤絆とある。そう、私の名前は絆。誰かと縁があっても良いのに。
私が入ったこの御光高校にも、合唱部とブラスバンド部はあるのに・・・
予想通り、私のやりたい音楽をする部活動はなかった。ないのが当たり前なんだけど。
参ったなぁ。全員が部活動か生徒会関連の役員を必ず、最低一つ。
私の祖父は、西部劇映画のファンで、映画音楽が好きだった。優しいおじいちゃん。
そして、祖父の影響で、父親はアメリカン・ロックや、フォークを好きになった挙句、ブルーグラス音楽にドップリ浸り込んで、自宅は楽器の山。
「おーい、絆ぁ。小学校三年生だなぁ。誕生日だなぁ。プレゼントじゃ」
私がもらったのは、父親が所持していた五弦バンジョー、つまりブルーグラス用のバンジョーだった。
最初の感想は
「なに、それ。パパのお下がり?」
だったけれど、中学校にった後に、そのバンジョーの価値を、楽器店で教わって驚いた。
私の手元に来た時、相当な中古品に手入れをしたんだな、と思っていたのが大間違い。
いわゆる、ヴィンテージ、という恐ろしい品物だった。
父親に内緒で、お小遣いにしようと思い、楽器店で品定めを頼んだ。
お父さん、ごめんなさい。私は、斎藤絆は・・・親不孝な娘です。
楽器店の人は
「ああ、このバンジョーですか?ウチで引き取るなら、う~ん、20万円ですね」
えーっ!そんなぁ。
「あっ、あのぉ。買ってもらうとしたら、という話なので・・・」
「ええ、わかりますよ。大切に可愛がられた楽器ですよね」
「はっ、はいっ・・・あ、参考までに教えてもらえますか?」
「ええ、何でも質問して下さい」
「20万円で買い取って、手入れして売るとしたら、いくらで売るんですか」
「あー、普通、そういう事は教えないんですが、特別ですよ」
「はい」
「きちんと手入れして売るなら、最低75万円ですね。100万円でも欲しがる人がいます」
「は?20万円が75万円以上、100万円でも?」
「つまりね、楽器っていうのは買う人と恋愛するんですよ」
「は・・・恋愛ですか?」
「つまり、綺麗に手入れしたこのバンジョーの存在を知ったら、見に来る人はきっといます」
「そんなに・・・」
「ええ、魅力のある楽器なんです、ヴィンテージっていう分類だし、状態も良いし」
帰り道、5㎏位の重さ(楽器のみで)の「私が売れば20万、楽器店が売れば最低75万」を異常なまでに大切にハードケースに入れて、自宅に持って帰ったのです。
そして、高校に入ったら、ブルーグラス部に入って、ちゃんとバンド演奏でバンジョーを弾く気で練習していたのだけれど・・・ブルーグラス部など、そうそう高校にあるハズがない。
共学の高校だから、西部劇のガンマンに憧れて、カントリー音楽が好きな男子がいないかなぁ、と思って当たってみたら、サバイバルゲームの方に御執心でした。
私のバンジョー、ニックネームは「百太郎」、単純に楽器店で100万円と言われたからつけた名前だけど、この子が、せめて高校の文化祭で、部活動の発表でいいから、音をみんなに聴いてもらえると嬉しいなぁ。
私にとっては、書きだしたら止まらない内容ですので、連作がどこまで行くやら?という感じです。
元々、私がブルーグラス音楽をとても好きなので、書きたいと思って書き始めてしまいました。
絵の練習をしながら、チマチマとTwitterあたりに、漫画版も出せればなぁ、と思います。
私の相当に趣味に偏った文章のコミカライズなど、私自身しかしないと思いますから。
という訳で、最初の公開がこちらになりました。いかがでしょう?
では、とても大切な事を。
読んで下さる全ての皆様、このサイトを運営していらっしゃる皆様に、感謝します。
書き手、花房康作より