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ちょっと不思議な鉄道旅

ちょっと不思議な鉄道旅 星空の路線

作者: 白波

 きらめく星空の中、列車はゆっくりゆっくりと進んでいく。


 星がきらめく夜空にある路線というのは何とも不思議なものだが、星空の中にある駅があるぐらいだから、不思議なことではないのかもしれない。


 前の駅を出たときは確かに街の中だったはずなのにこれまたトンネルを越えた途端に星空の中である。


 この世界の路線は基本的に街とそれ以外のところがトンネルをはさんで隣り合っていて、それを交互に通過することで町での利便性と海の中や星空といった観光地を通るという両面を併せ持つことができている。


 そんなことはさておいて、星空の中を通っていても一向に次の駅到着する旨を伝えるアナウンスが流れる気配がない。もしかしたら、このあたりには駅がないのだろうか?


 このあたりに駅があればぜひ途中下車したいところだが、駅がないのなら仕方がない。


 私は窓の外へと視線を向ける。


 窓の外には冬の大三角形と呼ばれる星々やオリオン座の姿が確認できる。


 星空の中にはもちろん満月もあって、あたりを明るく照らしている。そんな風景を見て、私は小さな声でつぶやく。


「……月まで手が届きそうね」


 窓の外に見える月は地上で見るそれよりも大きく、少し手を伸ばせばすぐに触れそうなぐらいに大きい。


 しかし、この路線の不思議な点を挙げるとすれば、街の中を通っているときは昼間だったのに、トンネルを越えたとたんに夜になった点だ。


 トンネルを通っていた時間自体はたったの五分程度だったのになぜ、急に夜になったのだろうか? その点が不思議でならない。


 いや、そんなことを考えだしたらきりがないだろう。私はそのあたりについて考えるのをやめて外の世界に意識を向ける。


 いつの間にか冬の星座の前を通り過ぎたのか、車窓に広がるのは春の星座だ。


「きれい! ねぇあの星ってなんて星なの?」


 近くに座る女の子がひときわ輝いている星を指さして母親に問いかける。


「さぁなんて星かしらねぇ」


 それに対して、母親は星の名前を知らないらしくちょっとはぐらかして答えている。


 そんな風景が展開されている間にも列車は春の星座を通り抜けて、夏の星座の前にやってくる。


 夏の星座のあたりには立派な天の川もちゃんと存在していて、雲一つない空では織姫と彦星もきっちりと光を放っている。


 そんな風景を眺めているうちに、あっと今に列車はそのあたりを通り過ぎて、続いて現れるのは飽きの星座だ。ここまでくると、列車は速度を徐々に落とし始める。


『まもなく〇〇駅。〇〇駅……』


 すると、ここにきてようやくアナウンスが流れ始める。


 この星空の中に駅があるのだろうか? そんな期待を胸にして私は降りる支度を始める。


 しかし、無情にも列車はトンネルに入ってしまいすぐに列車は街の中へと戻ってしまう。どうやら、次の駅は街の中にあるごくごく普通の駅のようだ。


「……はぁまぁいっか」


 どうせ、ふつうの駅に止まるのなら支度をやめて席に座りなおしてもよかったのだが、どうせなら変わった駅以外でも降りてみよう。


 そう考えて、私は列車から降りる準備を続行して席を離れる。


 そのころには列車はさらに速度を落としていて、私が扉の前に立つ頃にはトンネルを抜けて駅のホームに滑り込み始めていた。


『〇〇駅。〇〇駅です。ご乗車ありがとうございました。どなた様もお忘れ物なさいませんようにご注意ください……』


 駅へ到着した旨を伝えるアナウンスを背に駅に降り立つと、列車はすぐに扉を閉めて発車する。

 幸いにも次の列車は30分もすれば来るので、少し周囲を散策していれば、すぐに次の列車が来るだろう。


 私は、走り去っていく黄色の電車を見送った後、改札口の方へ向けて歩いていった。

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