1/3
Prologue
彼は走った。走り続けた。息ができないほどの横なぶりに彼を叩きつける雨風と共に、銃弾と怒声が彼の背後から迫る。
「追え!絶対に奴を逃がすな!貴重なサンプルなのだからな!!」
その怒声は今まで聞いたことのない異国の言葉だったが、なぜか彼は理解をすることができた。その理由は彼自身にも全くわからないことだったが、叫ばれている内容と両親から告げられた言葉が彼の両足を前に進ませた。
『"星の欠片"を捕まえなさい!我が一族のために!!』
いつしか怒声は暴風雨にかき消され、彼の疲れてはいるが決意を宿した目にはまっ白な雨の筋と清らかな日の光が映っていた。