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ワニごっこ

作者: 目262

 休日の昼下がり、天気が良いので近所の公園まで散歩をした。その場所は滑り台とブランコが二組、ベンチが二つという小さなもので、四、五人の小学生達が滑り台の上で遊んでいた。

 ベンチに腰掛けて少年達の様子をぼんやりと眺めていた。どうやら彼らは滑り台を陸地に見立てて、落とし合いをしているらしい。

 ワニごっこだ。滑り台の下の砂利敷きの地面は、実は沼で、そこにはワニがおり、落ちたものは食べられてしまう。私も子供の頃にはよくやった。今時のデジタル世代も、こんな単純な遊びをやるんだなと、懐かしく思った。

 そんな私を気にもかけず、子供達は夢中で互いの体を押し合っている。何しろ滑り台の天辺には、二人くらいしか立つ場所がない。

 他の子達は滑走部に腹ばいの形で追いやられ、足蹴にされている。滑走部の一番下にいる子供は懸命に縁にしがみつき、上からの一押しがあれば地面に落ちてしまう。その時、彼はすぐ上の友達の背中に飛び移り、一気に頂上まで駈け登った。上にいる子達が感嘆の声を上げ、踏み台にされた者達が文句を言う。そして再び落とし合いが始まる。

 子供達は皆、真剣だ。私もそうだった。無邪気にも、地面にはワニが潜んでいると本気で思っていた。

 そろそろ帰ろうと立ち上がった時、足元が激しく揺れてベンチに倒れ込んだ。地震だ。

 かなり大きい。私は目を閉じてベンチにしがみついた。子供達の悲鳴が聞こえる。滑り台から振り落とされたのだろう。だが、私は縮こまっている事しかできなかった。

 そうして一分程が過ぎ、ようやく地震は収まった。私は安堵して顔を上げた。

 滑り台にいた子供達は消えていた。公園の周囲にもそれらしい姿はいない。

 私は咄嗟に両足を地面から離してベンチの上で抱え込んだ。

 私が目を閉じている間に少年達は遥か遠くに逃げたのか、それとも……。

 そんな馬鹿なと思いつつ、私は抱え込んだ両足を元に戻す事ができなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 幽霊的な怖さじゃない。人間的な怖さじゃない。 ただただ状況の掴めない怖さがいいです。 [一言] 子供の頃のワニごっこ、横断歩道の白線の外は溶岩、走って来る車の影はカッターなのでジャンプする…
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