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勇者を継ぐ者  作者: 本城達也
決戦―魔王エビルサタン
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グレンvsサタナキア

 グレンは抱き上げたイリアをそっと地面に下ろした。



「遅くなったな、お前たち。俺が来るまでよく耐えた。

 あの修行は無駄じゃなかったようだな」



 グレンは傷だらけでボロボロのタズの頭を撫でながら優しい声を掛けた。



「グ・・・レン様?

 ボク・・・無駄じゃなかったの?」



「ああ。よく頑張ったな、タズ。お前が頑張ったから間に合った。

 あとはイリアに回復してもらいながらそこでゆっくり見てな。

 本物の最強って奴をな」



「う、うん・・・」



 タズは精神的にも肉体的にもギリギリの状態だった。

 ここでグレンが来なければ心が折れて二度と立ち上がることすらできなかったかもしれなかった。



 地面に下ろされたイリアは慌ててタズに駆け寄り、タズを抱き上げて治癒魔法をかけ始めた。

 最愛の姉に抱き上げられて、頭を撫でられながら治癒魔法をかけられたタズは、なんとか精神的にも肉体的にも一命を取り止めて回復を始めた。



 グレンは周囲を見渡し、タズらの2人だけではなく、この王都全体がかなりギリギリの戦いをしていたことがわかった。



 グレンが倒したのが四天王3体であり、四天王のうち1体がいなかったことが気にはなっていたが、派手に壊された城壁や壊れた民家を見て、壊れた城壁の奥から何がやってきたのかを把握し、この小さな弟子たちが何を成し遂げたのかを察した。



 タズがブリゾネーターを使わずサタナキアに瞬殺されていたとすればグレンは間に合わなかった。

 また、ブリゾネーターを使ったタズがサタナキア相手に善戦しなければグレンは間に合わなかったであろう。

 一線を踏み越えずにギリギリの状況で留めたのは間違いなく弟子たちの力であった。



(弟子たちがここまでがんばったなら、あとは師匠の仕事だわな)




「な、なんなんだ・・・お前は。

 いきなりなんてことするんだ

 めちゃくちゃ痛かったぞ・・・」



 後方へと吹き飛ばされていたサタナキアが起き上って、治癒魔法で切断された腕と大きくへこんだ顔を少しずつ元に戻しながらグレンたちの方へとやってきた。



 サタナキアはほんの一瞬の間に大ダメージを受けていた。タズとの戦いでも受けなかった大ダメージを受けていた。治癒魔法が効きにくい厄介なダメージを受けていた。



「サ、サタナキアやめなさい!

 その男は危険です!

 逃げるのです!」



「お父様?

 ボク、この生意気そうな奴、殺しちゃだめかな?なんだが心がざわつく・・・。

 ボク、人間なんかに絶対負けないよ?」



「ハハハ。

 なかなかクソ生意気なガキだと思ったらお前の息子だったか、エビルサタン。


 悪いが、俺の可愛い弟子たちをここまで痛めつけてくれたんだ・・・。

 そこのクソガキがどんなに泣いて詫びても許さんぞ」



「誰が泣いて詫びるもんか!

 殺すっ!」




「やめなさいサタナキア!

 その男は別格なのです・・・。

 しかもその剣まで・・・非常にまずいです」



 グレンはこの場所へ転移してくるとともにいつの間にか聖剣を装備していた。

 グレンが転移した瞬間、聖剣は本来の持ち主であるグレンの呼びかけに応えてその手に自ら収まったのである。



 イリアを助ける際に音もなくサタナキアの腕を切断したのもこの聖剣であった。



 聖剣は剣王グレンの手の中にあってこそ地上最強の星の剣となる。



 さきほどまでは綺麗なライトブルーをしていたが、グレンが装備した途端に空気を吸い込み、この惑星アルスと同じように美しく青く輝いていた。

  


「エビルサタン、お前が今更何を言おうが無駄だ。


 おい、そこのクソガキ。

 逃げずにこの最強()とやる気だっていうなら全力で来い。奇跡でも魔法でもなんでも使って来な。


 人間には負けないとかいうそのくだらない魔族の思い上がり、何もかもを叩き潰して懺悔させてやる。

 お前に奇跡を超える最強ってやつを教えてやるよ」



「バカにするなっ!!

 ボクはもう怒ったぞ!!!」


 怒り狂ったサタナキアはグレンがいうとおり、秘めた全力を出すことにした。


(ボクの全力中の全力の一撃を喰らわしてやる)


 サタナキアの目が赤く輝き出し、邪眼が全開になった。

 サタナキアは召喚されてからここまで感情を揺さぶられたことがなかったが、グレンを見ていると魂が激しく怒りで揺さぶられた。

 サタナキアが吸収した4つの魂が、あの男を絶対に許すな、父を守れ、奴を殺せと強く叫んでいるのを感じた。



「絶対に殺す・・・」



 サタナキアは暗黒魔闘気を纏い、身体強化魔法をかけて限界まで身体を強化し、究極魔法を唱えながら暗黒魔闘気で作り出した剣を構えて空高く上空へと飛び上がった。

 

 サタナキアはその一撃に魔・闘の全てを込めていく。


 究極魔法と暗黒魔闘気、そのすべてをオーラで作った剣に乗せて放つ、魔・闘を極めたサタナキアの魔法剣



 その一撃は大魔王クラスの一撃。全てを滅ぼす究極の暗黒魔法剣であった。



「死ねーーーーーーーーーーーー!

 邪王(エビル)終極(・ラスト・)(ストライク)!!!」



 サタナキアは突きの姿勢をとると、その剣先から暗黒の巨大な悪魔の形をした光を放出した。そして、その邪悪な光ごと、グレンの頭上、遥か上空から超高速で落下しながら突進し、究極の一撃を放った。



 これに対してグレンは・・・



「ハハハ

 ホントに少しだが久々にマナが使えるっていうのはいいな。

 色々試したいことはあったが、今日の俺の気分にピッタリな技があったな」


 グレンは聖剣を構えて、聖剣がこの地上(アルス)から集めてきたアルスの力、天素(テナ)と、自らの体内から作り出された魔界の力、魔素(マナ)を合成していく・・・。


 そうしてグレンは見たこともない力、テナでもマナでもない力を作り出した。


 星と月の力を合成したその力はグレン以外は誰も知らない天地開闢の力、聖素(ホルナ)である。

 

 グレンは聖素を用いて魔法ではない別の何か、失われた技、聖法撃を唱えた。

 

 それは古の勇者が使ったされる技であった。


 かつてその技は聖属性魔法と呼ばれ、誤って魔法の一種とされていた幻の技である。



 ――聖神雷(アルテナライトニング)―― 



 魔族に蹂躙された地上の人々の怒りの化身、勇者の(いかづち)と称される技


 その聖なる神の雷がグレンの聖剣へと落ちると、聖剣がバチバチと音を立て始めた。


 とてつもないエネルギーが聖剣に集まった。


 魔を討ち滅ぼせという強い意思の光が聖剣に集約された。


 タズを殺されかけたこと、イリアを殺されかけたこと、いずれもグレンにとって許せることではなかった。


 この怒りを表すなら、この怒りをあの魔族にぶつけるなら、古の伝説の勇者の技である聖神雷でも足りない。



 勇者を超えるグレンだけの究極の必殺剣、これしかないと考えていた。



「お前が大魔王の暗黒魔法剣(ダークネスソード)で来るっていうなら、俺もその相手に相応しい、勇者の究極聖法剣(アルテナソード)を見せてやる。

 いくぞッ!!!


 アルテナ・ライトニング・スラッシュ!!!!!」



 それは物凄いとしか他にたとえようのがない一撃であった。


 斬撃から飛び出した聖神雷は光の速さで暴れ狂いながら敵を貫く。

 光速であることから飛び出したその瞬間には敵を貫いているという絶対回避不能の一撃。


 そしてその威力は、究極中の究極・・・

 限界まで身体強化したサタナキアの身体も、サタナキアが放った邪王終極撃も、これらを纏った暗黒魔闘気も、そのすべてを木っ端微塵に吹き飛ばした。


 聖神雷が暴れ狂い、狙った相手の全てを焼き尽くし、後には何も残らないほどに粉々に粉砕したため、グレンの頭上には何も落ちても来なかった。



 最強による究極の必殺剣、その威力は究極魔法を使った魔法剣すらも超えていた。



 サタナキアの一撃は、四天王たちの一撃を遥かに超え、大魔王が放つものと同等の究極の一撃であったが、グレンの一撃はそれすらも遥かに超えており、サタナキアはチリとなって消滅した。



 エビルサタンはその一撃見て、消滅したサタナキアの下から戻ってきた4つのスピリット・ライトを受け取って固まった。




 エビルサタンの秘策中の秘策であったサタナキアがあっさりと負けてしまったことも計算外であったが、最も計算外だったのは、その計算外を起こしたグレンのマナがごく微量ではあるが戻っていることである。




 しかもグレンはその微量なマナしか持っていないはずであるのに、元々持っている地上の力と合成することで水増し、より高次元の力を作り出してきていた。




 エビルサタンがもっとも恐れていたグレンのマナ覚醒が起こっていたのである。



 エビルサタンはわなわなと身体を震わせながら、おそらくはこの状況を作り出した張本人であろう隣にいる少女に話しかけた。



「い、一体何をしたのですか・・・

 私は何を読み間違えたというのですか・・・

 巫女様、一体どうやってあの男にマナを渡したのです・・・」


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