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勇者を継ぐ者  作者: 本城達也
第一次オストルン大戦【後半】
48/106

悪魔獣王の全力

 ヘルバトラーの咆哮が収まり、ビリビリとした空気が次第に静かに収まってくると、イリアは慌ててタズに駆け寄った。


「タ、タズ!

 その剣、どうしたの!?

 いつの間に!?」


「うん、実はここに着いたとき、クロエが襲われてて

 助けたときについでにとってきてほしいってお願いしてたんだ」


「そうだったの・・・

 でもタズ、グレン様の剣、それに魔法剣まで使えたなんてビックリしたわ」


「うん、実はボクもビックリしてる。

 でも、この剣、今は久しぶりに外に出れたからってことで力貸してくれてるみたいだけど、あまり長くは使えなさそうだよ。


 早くケリをつけないと・・・。

 でもアレが相手じゃそう簡単には・・・」



 ヘルバトラーは久しぶりに元の身体に戻った余韻なのか、あちこち身体の具合を確かめながらこちらをジッと睨んでいる。


 今にも飛び出してきそうであるが、翼も生えたヘルバトラーがどこまで速いのかは想像できない。



 だが、イリアもまた、最上級魔法を撃った後、タズに聖剣が渡ったのを見ると、自分の役割を理解し、瞑想に入って少しでもマナを回復させていたのであった。



「タズ、防御に回ったら負けよ!

 アイツの一撃、たぶん受けられない。

 攻めるしかないわ。

 私も少しはマナを回復させてる。

 私がタズの分も身体強化を掛けるから、タズは風魔法と攻撃をかわすのに集中して!」


「う、うん!わかった!」


 ヘルバトラーは見るからに一回りは攻撃力がアップしている様子である。

 

 変身前ですらその攻撃でタズの腕は粉々だったことを併せると、変身後のそれはおそらく、ガードをしたとしても死は免れないだろう。



 防御に回れば(そもそも防御に回ることすら許されないが)、敗北は確定である。

 


 危険であってもひたすら攻めて、攻撃は接近戦で躱すしかない。



「行くよ!」

 


 タズは怯えて動けなくなりそうな身体(あし)をパンと叩いて、震えを止めると、ヘルバトラーに向かって走り出した。



 タズはヘルバトラーの背後まで回り込んだ上、全力の袈裟斬りを放った。




「くっ・・・」



 しかし、タズの一撃はヘルバトラーの分厚い背中を浅く切っただけであった。



 その上、シューと音を立てて傷口が塞がっていっている。

 ほとんどダメージを与えるに至っていない。




 武器(聖剣)のおかげで、木剣のときとは異なり、全く斬れないというわけではなかった。




 たが、やはりタズはまだこの武器を使いこなせていたわけではなかった。



 その上、タズには元々の攻撃力がなさ過ぎて、武器の力だけで攻撃しているにすぎなかった。



 そして、何よりも、一撃を貰えば死ぬというその恐ろしいプレッシャーがタズの踏み込みをも甘くさせていたのであった。



「ダ、ダメだ・・・。

 やっぱり魔法剣しか」




 今のタズは全身に風を纏っているため、魔法なしで攻撃しているわけではない。



 風魔法で自分の素早さを上げて、剣の振りも速くしている。



 だが、それでも魔法剣とただの剣では大きな差があった。

 その差は修行のときにグレンが説明していたとおりである。



 

 しかし、今のタズは、魔法剣が撃てるのは、マナの残量から考えておそらくあと1回か2回程度が限界だった。




 先ほどまでのバトラーであれば魔法剣で大ダメージを与えることができたが、今のヘルバトラー相手ではそれが無理であろうことが一目でわかる上、下手に中途半端な一撃を入れても今と同じようにすぐに回復されるだけである。



 本来であれば、魔法剣を使わずにある程度ダメージを与えて、魔法剣は必殺となったそのときまでとっておくべきであった。




 しかし、通常攻撃が効かず、上級魔法ももう使えない。



 他に打つ手がない以上、魔法剣に賭けるしかなかった。




 戦法はただ一つ。



 1発目の魔法剣である程度ダメージを与えた上で、すかさず再び魔法剣を同じところに向かって繰り出してとどめを刺す、それしかなかった。



 そして2発でダメでもマナを回復させたイリアに風魔法をかけてもらって3発目を撃つ、イリアがいるおかげでこの戦法にも希望があったのである。




 小さなタズたちであったが、2人揃っていて、聖剣さえあれば悪魔族四天王とも戦えるのである。




 タズは再び風魔法を剣に付与していった――。



 


・・・・・・・・・・・・・・・・






 だが、そのとき、ヘルバトラーの様子がどこかおかしかった。

 


 タズが魔法剣を撃つべく剣に風魔法を付与し始めたというのに、ヘルバトラーはタズに背中を向けてタズの方を見ていないのである。




 ヘルバトラーが見ている方をタズも見てみると、そこには後方でタズの援護に徹底し、マナの回復に努めているイリアがいた――。



 ヘルバトラーには知性はなくなっていたが、本能で分かっていたのである。



 今この状況で本当に脅威なのは目の前の少年ではなく、それを援護する少女であることが。


 少年の原動力は後ろの少女にこそあることが。



 少女さえ潰してしまえば、残りはたやすく倒せる。



 ヘルバトラーの魔の手がイリアに迫ろうとしていた――。

次話からしばらくグレン編です。

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