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勇者を継ぐ者  作者: 本城達也
第一次オストルン大戦【前半】
35/106

戦いの舞台へ

「タ、タズ・・・ど、どういうこと?

 なんで魔王がこの森にいるの?」


「うん、この静まり返った森とか禍々しい気配とか、全部あのときと同じなんだ。

 エビルサタンがボクの村の近くの森に来たときと・・・」


「そ、それってエビルサタンがこの王都に攻め込んで来たってこと?

 エビルサタンはイリスと天空の塔へと向かったんじゃなかったの?

 それにグレン様だって追いかけて行ったし・・・。

 き・・・気のせいじゃないの?」


 イリアはそう言いながらも、タズに指摘されて周囲の気配を感じ取ると、その違和感に気が付くと共に、禍々しい威圧感にも気が付いてしまっていた。

 突然の状況に頭が付いていかず、動揺のあまり自分自身を説得しようとしてそんなことを口走っていたのである。


「エビルサタンかどうかはわからないけど、遠くの方に凄い魔力を感じる。

 街にいたときは人が多すぎてわからなかったけど、誰もいないここだとはっきりわかる。

 やっぱり、間違いなく魔王だよ・・・。

 お姉ちゃん、ボク、行かなきゃっ!」


「ちょ、ちょっと待ってよ、タズ!

 何もわからないのに飛び出すのは危険よっ!」


 イリアはどこかに行こうとするタズを制止しようとしたが、タズの手を捕まえることはできなかった。

 イリアは慌てて駈け出したタズの後を付いていった。


 タズはもう二度とあのような惨劇は見たくない、その一心でイリアの制止を振り切って駈け出していた。

 この王都にはタズにとって大切な第二の家族であるアスター、友達のクロエや串焼き屋のジョージ、串焼き屋の常連客、たまにひょっこり顔を出して頭を撫でに来てくれる奴隷商人のダル?(どうやら仕事が変わって王都に住み着いたらしい)、これらをはじめとするタズたちに優しくしてくれる大好きな人たちがたくさんいた。

 今、この場にこの街の勇者がいない以上、その弟子である自分が絶対にこの街を守らなければならない、魔王と戦わなければならない、そんな決意の下、魔王の気配がする北、王都の方角を目指して駈け出した。



 ・・・・・・・・・・・・



 もっとも、実際には、タズたちが感じ取っていたその禍々しい気配はエビルサタンではなく、エビルサタンの側近、四天王筆頭であるバトラーのものである。



 地上における人族の中の人間と同様に、魔界における悪魔族は魔界の中で最も数も種類の多い魔族である(悪魔族の中にはさらに堕天使族、悪魔獣族、冥界族等といった細かい分類も存在する)。


 悪魔族をそれほどまでに繁栄させた悪魔族の王たるエビルサタンの力はもちろんのこと、その側近である四天王は、魔界全体を見ても強大な力を有し、先の大戦時では、一部の魔王よりもその力は上であったとも言われていた。


 そもそもエビルサタンもその側近の四天王も先の大戦では地上に来ることはなかった。


 四天王はそれぞれ魔界に広大な領地を持って支配しており、その名のとおり、王なのである。たとえば、バトラーは悪魔獣族を束ねているし、ラビエルは堕天使族を束ねている。


 四天王が一堂に会することも滅多にない。


 地上にはその下の将軍級、ベリアルやアザゼルといった名高い悪魔大将軍が攻め込んできていた。人族たちには大将軍クラスですらその強大すぎる力故に魔王に見えていたかもしれない。



 それに対して今、この地上には魔王自らに加えて四天王もいるという過剰すぎる戦力が集まっている。


 地上というよりはそのうちのオストルン地方に魔王と四天王が集まるというのは、魔界でも冗談かと思われるほどの大戦力がここオストルン地方に集中していた。  



 そして、バトラーは今、イリスによってマナが復活した上、その器の中にフルにマナが満たされている。

 今のバトラーは魔界からみても魔王と呼ぶにふさわしい力を有しており、その真の実力は、タズが出会った頃の、マナを復活させる前のエビルサタンよりも遥かに強い。



 タズがバトラーの気配を魔王のそれと勘違いするのは、何もおかしなことではなかった。



・・・・・・・・・・・・・・・



 タズたちが王都の南側城門付近へと戻ってきたそのとき、

 ズドーーーーーン!!という轟音が聞こえ、地面が激しく揺れたのを感じた。


 数秒して揺れが収まった後、

 タズはもう一刻の猶予もない、のんびりと城門前の大行列に並んで入城を待っている場合ではないと感じた。


 タズは、城壁を回り込んで人がいなさそうなところへと向かうことにした。



・・・・・・・・・・・・・・・



 2人はしばらくの間、城壁を回り込み、周囲に誰もいないところまでやってきた。


「お姉ちゃん、行こう!

 もう飛び越えるしかないよ」

 

 タズはイリアに魔法で城壁を飛び越えることを提案した。


 イリアも先ほどの轟音の意味を察しており、やむを得ないといった様子でうなずいた。


「そうね。人がいないかもう一度確認しましょ」



 タズたちに魔法を使わずに城壁を飛び越える手段はなく、魔法の存在は秘密にしなければならない。加えて、城門での検問を受けずに王都を出入りすることは、とある1人を除いて許されていない。重罪である。



 その例外の1人はそもそも王都に知らない者がいないため、身分確認の必要がない上、人前に現れるとそれだけで人だかりができたり祈りを捧げる者が現れたりと大騒ぎであるため、基本的に持ち前の身体能力で高い城壁をひとっ飛びしてこっそりと出入りしている。飛び越えるその姿を見ても魔法だと思う者もいない。あの方なら普通と思われるだけである(実際魔法は使っていない)。



 タズたちがグレンと稽古に行くときも城門の外までは別行動であり、グレンはどこかで城壁を飛び越えたのかタズらが城門を出ると先に森に着いている。


 一方、タズらが城壁を飛び越えたら大問題である。

 もし誰かに見られでもしたら犯罪の現行犯になることに加えて、どうやってやったのかと大騒ぎになり、魔法の存在が知られてしまう。




 タズたちは念入りに人が周りにいないことを確認してから、風魔法で高い城壁を飛び越えた。





 タズたちが城壁の上へと飛び乗った際に、城壁の上から王都の様子を見降ろすと、北側の丘の上の城壁が崩れ落ち、戦いが始まったのか、北側エリアのあちこちから火の手が上がっているのが見えた。


 また、王都の人々が北から波のように南に西にと大移動を開始しており、街が大混乱の状態にあることが確認できた。


 タズとイリアは顔を見合わせて、こくりとうなずくと、背中に担いでいた木剣に木魔法を唱え、剣先が丸いただの茶色い木剣から、茶色に明るく光輝く長剣へとその姿を変化させた。さらにイリアは、タズと自分に目いっぱいの身体強化魔法をかけた。


 そして、2人はそのまま風魔法を駆使して城壁の上から人からは見えない天高く上空へと一気に駆け上がり、風に乗って北側まで飛んでいくことにした。



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