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勇者を継ぐ者  作者: 本城達也
第一次オストルン大戦【前半】
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クロエ②

 タズは、クロエの言葉に驚いた。

 また、その内容もどういうことなのか理解できなかった。


「ど、どういうこと?

 キミはどうして王宮にいないの?

 えっと・・・」


「ごめんなさい。アタシ・・・ううん、私、クロエっていうの。

 昔はクロエール・エアーハートっていう名前だったんだ。

 クロエって呼んで」


 

 エアーハートはこの国の王家の血筋のみが名乗る名前であった。

 

 クロエは帽子をとり、タズに素顔を見せた。帽子をとったクロエは、ライトブラウンのウェーブがかかったボブカットの綺麗な女の子であった。


 タズは、帽子のせいでクロエの顔が見えず、先ほどまでは口調も厳しかったことから、今までクロエが男の子か女の子かわかっていなかったが、帽子をとったクロエはどこからどうみても気品のある女の子だった。



「な、何?そんなにボーっとしちゃって。なんだか私が女の子なのが意外って顔に見えるけども・・・」


 クロエは少しだけ不機嫌になり、先ほどまでではないが目つきが鋭くなってタズのことを睨み付けた。


「ご、ごめん。ボク、串焼き盗んだ子がこんなにきれいな女の子だと思わなくて・・・

 ご、ごめんなさい!」


 タズは、ボロボロの姿の女の子が予想外に上品だったという意味でそう言ったつもりだったが、クロエはタズの「きれいな女の子」というセリフに驚いて、顔を真っ赤にさせて焦りだした。



「フ、フーン。き、きれいね。ま、まあそれはいいや。

 ところで、あなたの方はなんていうの?」


「ごめん、ボク、タズっていうんだ。タズ・ゴールド、よろしくねクロエ!」


「そう、タズくんか。うん、よろしく。

 なるほど、ゴールド・・・セント・メリー教会の家系の名前か。キミは教会に拾われたっていうわけね。

 それで私が王宮にいない理由だっけ?」



 ようやく自己紹介を済ませた2人は、いよいよ本題へと入った。



「あっ、うん・・・でもごめん、もし言いたくないことだったり、言っちゃいけないことなら無理に聞かないよ」


「別に構わないわ。

 タズくんが信じられるのは良く分かったし、それにどうしてもタズくんに聞いてもらいたい・・・」


 そういってクロエは自身の出生について話し始めた。


「私が王宮にいない理由・・・

 ・・・それは私が王宮で存在してはいけない子だったからよ。

 

 私は今の国王ウィリアム(4世)様の息子であられるウィリアム(5世)王子様とお母様のセラ様の間に産まれた王女として育てられた。

 でも本当のお父様はウィリアム様じゃなかった。お母さまはウィリアム様ではない別の人を愛していた。当時の王宮騎士の将校、今は王宮騎士団の団長を務めているアルフレッド様。

 子どもの頃はただお母様に似ていただけだったから良かったわ。でも成長するに連れて、私の顔の面影はウィリアム様ではなく、どうみてもアルフレッド様に似てきていた。

 

 全部私が悪かったの。今よりもっと幼かった私は、お父様とお母様の前で言ってしまったの。

 どうして私はお父様よりアルフレッド様に似ているの、って。

 お父様はそれを聞いて、ショックを受けられて、お母様はとうとう真実を話された。

 

 そして、話合いが持たれた結果、真実が伏せられることになって、色々あって最終的に私は不慮の事故で死んだことにされて、王宮を追放されることになった。

 私には王家の血は流れていなかったんだから当然よね。


 後から生まれた私の妹が王女になったわ。

 

 タズくん、私ね、本当は生きてちゃいけないの。この国の人を悲しませることになるから。

でも、私は死ねなかった。スラム街でひっそりと生き続けて、こうして食べ物を盗んだりしながら生活してた。


 生きる希望もなかったけど、ただ死ねないから生きていたわ。


 でも、今日、タズくんに会って考え方が変わったわ。

 これからは私もきちんと生きていきたい。

 私もきちんと仕事をして、ちゃんと生きて、いつかキミのような、キミと並んでいられるような私になりたいって思ったわ。

 だから、キミには私のこと知ってもらいたかった。


 私、がんばるわ。今日はありがとうね。

 キミにもらったパンの味、たぶん一生忘れないと思う。


 さあ、戻りましょうか。一緒に謝ってくれるんでしょ?」


 タズは、クロエの話を全て整理できなかった上、クロエがどんな気持ちでこの話を自分にしたのかがわかっていなかったが、最後の言葉だけはよくわかったため、「うん!」と言って力強くうなずいた。

 

 そして、


「じゃあお友達になろう!」


 タズはクロエにそんな言葉をかけて、タズとクロエはこの日から友達になった。


・・・・・・・・・・・・・・・・


 そんな2人のやりとりを公園の木の陰からイリアはこっそり聞いていた(なお、イリアの耳はハーフエルフであることもあって、タズに気が付かれない程度に距離が離れていても、十分に聞こえていた)。



(さすが私のタズね。良い子だわ!・・・でももうちょっと私のことも自慢してくれても良かったのに・・・。それに・・・)


 やはりというかイリアの不安は的中し、心配していた事態になっていた。

 あの弟はさっそく女の子を落としていた上、その相手はどうやら元お姫様らしい。


(勇者にお姫様だなんて、そんなベタな展開許さないわ!だいたいタズにはまだ恋愛とか早すぎるのよ!あと10年、いえ5年くらいかしら・・・。

・・・タズ、あと5年経ったらどんな風になるかしら。きっとカッコよくなるわ!

うーん・・・絶対他所へなんてやらないんだから!私が大切にずっと育てていくわ!)


 イリアの思考回路がいつの間にかどこぞのブラコンイリスと全く変わらなくなっていることにイリア自身気づいていない。


 そして、そんなことを考えている内に、出ていくタイミングを完全に逸していた。

 

 早く帰らないとジョージも心配するだろう。


 会話を切り上げて公園を出ようとするタズたちを偶然見つけた体を装って声をかけ、その後、イリアもクロエと友達になった。


 店まで戻って3人で仲良くジョージに謝ると、ジョージは


「そんなの気にすんな!この子ら2人の友達なら、今日から俺とも友達だ。いつでも串焼き食べに来いよ!サービスしてやる」


 と言って、ニカっと笑った。盗んだ串焼きも温めなおした上で、クロエにお土産に持たせてくれた。


 クロエの幸せな生活の1日目が始まったのであった。

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