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勇者を継ぐ者  作者: 本城達也
第一次オストルン大戦【前半】
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稽古の帰り道①

 グレンの修行が始まって数日経った頃、日が暮れて本日の稽古を終えて夕飯のために王都へと帰ってきた2人は、体力的には魔法で回復していたものの、精神的にはヘトヘトになっていた。


 そんな帰り道のことであった。

 見るからにヘトヘトといった様子のご近所さんの2人を見かけて、出店を片付けていたジョージは声を掛けた。


「おいおい、お2人さん。今日も仲良くずいぶんお疲れのようだな。

 どうだ、せっかくなら今日もうちに寄っていかないか?夜食になるお菓子持っていきな」


「えっ?ホント!?ありがとう!串焼き屋のおじさん!」


 タズは、横から声を掛けてきた男が王都に来た翌日に出会った串焼き屋の店主ジョージだとわかると、まるで中年サラリーマンのようなお疲れ気味だった顔から、一気に天真爛漫な明るい笑顔に変わっていった。


 イリアもそんなタズの様子を見て、

(もう、タズったらかわいいんだからっ!仕方ないわね)

 などと思いながら、道草の許可を与えつつ、笑顔になっていく。



 タズを見て悶えながら笑顔を浮かべているイリアの方も、抜群にかわいく、おじさんキラーであることにイリアは気づいていない。



「タズ、ちょっとだけ寄っていきましょ。

 ジョージさん、いつもありがとね!」


 ジョージは、(2人のこの笑顔のためならお安いもんだ・・・)と思いながら、出店の片付けをそのままにして、すぐ後ろにあるジョージの本来のお店の方に連れて行った。

 

 大祭の1か月ほど前から大祭にかけて、ジョージの店では昼は店の前に出店を出して串焼きを売り、夜は出店を畳んで、店の中で串焼き居酒屋を経営している。


 ここ、オストルン大陸は、牛肉が特に有名であり、ジョージの店の牛串焼きは肉厚ジューシーでとても美味しい上、安いと評判であり、一定の常連客が付いており、彼らは仕事帰りに寄ってここで夕食と晩酌をしていた。


 その上、ここ最近の数日は、常連客がこぞって来るようになっており、普段なら週に1度しかこなかった常連客も毎日通うなどして大繁盛である。


 その理由はなぜかといえば・・・


「こんばんわー!えへへ、今日も遊びに来ちゃったっ!」

「こんばんわー!いつもお世話になってます!」


 2人が店の中に入って明るく元気に挨拶すると、常連客たちは


「「「タズ坊、イリアちゃん!待ってたよー!」」」


 などと大声をあげて大興奮の様子だった。


 それを見たジョージは、


(おそらくご近所の教会の可愛い天使のような仲良し姉弟に癒されようと、どいつもこいつも集まってきてんだろうな・・・。まったく、前にサービスした元はとっくにとれちまったよ)


 などと感じており、せめてと考えて、2人に夜食になるお菓子を持たせることにしているのであった。夜食の内容は、ジョージ特性の甘い蜜を練り込んだ菓子パンである。この店のデザートメニューにもなっている。それを小さく子供に食べやすいサイズにして作ってあり、それをお土産用の袋に入れてタズたちに渡した。


 お土産に喜んだ2人は、「せっかくだから少しお手伝いするね」といって、お店の手伝いに入った。



 これが常連客に大人気なのである。



 だが、ジョージは知らなかった。


「おじさん!ボクがお酒注いであげるね!

 はい!美味しくなると良いなぁ!」


 タズが常連客にお酒を注ぎながら、得意の水魔法をこっそりと使って、そのお酒を安物から極上のシロモノへと仕上げていることを。


 そして、常連客がそんなタズの注いだお酒に病みつきになり、単にお酒がうまいのか、タズが可愛いからうまく感じるのか、よくわからないが、とにかく毎日足を運んでしまい、浴びるように飲んでしまっていたことを。


 その上、飲みすぎて酔っぱらってつぶれた客には、タズが


「元気になってね!」


 などと言って手を握ってきて、やはり密かに得意の水魔法を使って酔いを和らげている。

 


 そして、それを見たイリアの方も、


「もう、タズったら飲ませすぎちゃだめよ!

 お兄さん、明日もがんばってね!」


 などと言いながらこちらも密かに得意の治癒魔法をかけてまわって、明日の仕事の活力をチャージさせてくれていたりするのであるから、この店はどこぞの高級クラブよりもよっぽど天国な空間となっていたのである。


 愛想の良い2人には、おじさんたちもメロメロだったが、お姉さま方にも大人気で、普段はこういった串焼き屋には一人で来ないであろう若い女性客も足繁く通い、


「タズくーん!かわいいー!だっこさせてぇ!」


 などと言ってだっこさせるよう所望し、タズもそれに応えて、「えへへ、お姉ちゃんお願い」などと言ってだっこされ、仕上げには「お姉ちゃん、大好き!」と言いながら満面の笑みを浮かべるタズに大興奮の様子だった。タズをだっこしているお姉さんからはなにやら(まったく、○学生は最高だぜ、ぐへへ)という心の声が聞こえてきそうな様子であった。


 常連客が毎日足を運び、つぶれるまで浴びるようにお酒を飲んでしまうのも当然のからくりがあったのである。


 王都の人々が、こんな可愛い少年たちが実は勇者を継ぐ者と知ったらこれまで勇者様へ向けていた敬愛の感情が、親愛の感情へとガラッと変わってしまうこと間違いない。



 その上、タズたちが実はこの手伝いを魔法の練習の場としていたことを知れば、ジョージをはじめとする店の者はひっくり返ってしまうだろう。

 

 この王都の小さな串焼き屋も勇者を継ぐ者の稽古場だったのである。

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